※『コンサルタント紹介業』という少し変わったビジネスの話を毎月1回 お届けしていきます |
《今回のテーマ》 『サービスを比較することの大切さ』
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今日のテーマは「サービス比較の重要性」です。
インターネットの普及に伴い、パソコン、自動車、保険、不動産から葬儀まで、あらゆるサービスが「比較」されています。
同一製品なら、1円でも安く買いたい、というのが世の常でしょう。また、単に安いだけでなく、価値を十分に見極めて、その価値に見合った正当な価格で購入したいという動機もあります。
例えば人材派遣のサービスでも、単純に価格だけでなく、サービスの中身、つまり派遣スタッフの質、登録者数、コーディネーターの力量、スピード、対応力、など、さまざまな要素で「比較」されています。
コンサルティングというサービスも、さまざまな要素を十分に比較検討して、導入すべきだと思いますが・・・現実には?
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■コンサルタントを比較する意味 |
かつて経営コンサルタントが、権威ある「先生業」と信じられていた頃は、先生を比較すること自体が失礼にあたるような空気があったと思います。サービスを買う、のでなく、教えていただく、という時代です。
こういった意識は、今でも完全には消えていません。コンサルタントも考えたことがあるが、せっかく先生にお会いしてもダメなときに断りづらいし、結局依頼するのを断念した、という話を、複数の経営者から聞いたことがあります。
それだけ、コンサルティングを依頼するのは、まだまだ勇気がいるのかなぁ・・・と感じました(実際はそうでもないですよ)。
一方コンサルタント側から見ると、他社と「比較」されたり、天秤にかけられるようなことは、おそらく気分の良いものではないでしょう。ぜひ、先生にお願いしたい!と言って依頼される方が気持ちがいいに決まっています。
しかし「コンサルティング=法人向けサービス業」であるという考え方からは、むしろ「比較しないこと」が、企業側にとってもコンサルタント側にとっても、リスクが大きいと、ますます実感するようになりました。
相手に敬意と礼儀をもって接するということと、無批判に信用して受け入れることは違います。他社と比較することは、自社にとって何が必要なのかを、冷静に判断するために不可欠と思います。
一回で意気投合して・・・、というケースには、意外と落とし穴もあるのです。
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■一目ぼれの怖さ |
たまたま出会ったコンサルタントに一目ぼれして、他社比較も行わずトップダウンで導入が決まった。
こういったケースは、ぜひ一度、冷静になってみるべきでしょう。
恋は盲目、ではないですが、落とし穴がたくさんあります。
(例1) 経営セミナーを聴きにいって、講演の内容にすごく共感した。その場で、ぜひ依頼したいと申し出た。
(例2) 友人の紹介で会ったコンサルタントと初めての面談で意気投合した。さっそくうちでもお願いできませんか、と申し出た。
(例3) 有名な会社に、コンサルティングの依頼をしてみた。まだ当社の事情を十分に理解してもらっていないが、大手企業だし、提案書も立派だし、間違いはないと思って、依頼することにした。
この、いずれの例も「失敗する要素」を十分に含んでいます。成功する場合ももちろんありますが。
みなさんは、どんなリスクが潜んでいると思いますか?
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■会社に貢献してくれるコンサルタントを選ぶために |
コンサルティングは「サービス」です。サービス財の特徴とは、無形であり、貯蔵や保存ができず、品質や付加価値や価格の差・ばらつきが大きく、主に人間の手によって提供されます。
またサービスを受ける側の状態に大きく左右されます。
すると、さきほどの例も、冷静に判断すべきポイントが見過ごされているように思います。
「無形(形がない)からこそ・・・」 ⇒成果の目標を明確に決めましょう。
コンサルタントを依頼する目的は何でしょうか? どんな成果を期待しているでしょうか?そのコンサルタントに依頼すると成果が達成される可能性が高いでしょうか?その成果はイメージとして定性的に描くことができ、また定量的に数値化できるでしょうか?
「品質が見えにくいからこそ・・・」 ⇒品質の担保となる根拠を
そのコンサルタントの実績を知りましょう。自社が求める専門性があるのか判断しましょう。会話だけでなく、文書の品質も確認しましょう。サービスとしてどこまでの範囲を含むのか、何を含まないのか、明確にしましょう。
「価格の差が大きいからこそ・・・」 ⇒見積価格の算定根拠をしっかりと把握しましょう。
自社の成果に照らして許容範囲でしょうか? 市場価格と較べて妥当な水準でしょうか?費用対効果が十分期待できるか検討してみましょう。
「人間が提供するサービスだからこそ・・・」 ⇒本当は誰がサービスを行うのか見極めましょう。
そのコンサルタントの考え方、方針を理解しましょう。自社の社風やメンバーとの相性を判断しましょう。
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■よくある失敗を繰り返さない |
さきほどの事例で、典型的にある失敗は、以下のようなものです。
×必要以上の過剰なサービスを提案されてしまう
×買い手に不利な契約をしてしまう
×セミナー講師(話し手)と、実際のサービス提供者が違う
×縁故・紹介の場合、期待したほどでない場合でも、断りづらい
×有名な企業=必ずしも優秀なコンサルタントではない
×そもそも自社にとって何が必要なのか判断できていない
×トップの意向だけで選び、現場の実務責任者に支持されていない
繰り返しになりますが、もちろん、一目ぼれでうまくいくケースもあります。
それは運良く、良心的で、本当に自社の課題に合ったコンサルタントに出会った場合です。
1社だけでなく複数のコンサルタントから、同じ課題に対する提案を受けると、驚くほどその違いが明確になり、自社にとって何が必要なのか、再認識できるようになります。
それは1社の話だけを聞いていては、決して見えないものなのです。
また、コンサルタントにとっても、自分にマッチしない企業との出会いは、不満足な結果やクレームを生むだけで、何も良いことはありません。ミスマッチは、お互いにとって時間の浪費になります。
ですので、コンサルタント側も、比較されて、きっちりと検討されたうえで選んでいただくことを歓迎すべきだと、私は常々思っています。
《今日のつぶやき》
今日の午前中、商談で赤坂へ行った帰りの地下鉄で地震が発生!一時停車しました。帰ってニュースを見ると、東北地方が震源だったようです。大きな被害がなければ良いですが・・・。
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著者:荒井 裕之 出版社:ぱる出版(2005/12発行)
過去にコンサルタントに関するコラムを寄稿しています。よろしかったらこちらもご覧下さい。
「失敗しないコンサルタント利用の秘訣」@IT
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