ほとんどの企業が税理士を活用しています。全法人の8割程度の企業の税務申告に、税理士が関与しているというのを何かで読んだことがあります。
大企業や大企業の関連会社では、社内に税理士クラスの社員がいるため、税理士に依頼せずに申告しているケースも多いようですが、中小企業では、ほとんどの企業が税理士を使っているのが現状です。
では、皆さんの企業ではどのような基準で税理士を選んだのでしょうか?
この質問に合理的な回答ができる経営者は少ないと思います。誰それの紹介、知り合い、友人など、そんな答えがほとんどではないでしょうか?
会社の財務内容をすべてオープンにするわけですから、知り合いや友人であれば人柄も分かっていますし、紹介であれば人的保証があり、安心できるというのが最も大きな理由だと思います。
紹介や知り合いなどが、悪いとは思いません。人柄や人づてに聞く評判や安心感で判断しているのですから、それはそれで合理的な判断をしているのだと思います。
しかし、「今の税理士のサービスに満足していますか?」。
税理士の業界誌が行なったこのようなアンケートには、およそ70%以上の経営者が、今の税理士に不満をもっていると答えているようです。
不満をもっている経営者にしても、不満をもたれながらサービスを提供している税理士にしても、これはお互いに不幸としか言いようがありません。
ではなぜ、このようなミスマッチが起きているのでしょうか?
まずは、経営者側の誤認です。税理士は誰に頼んでも結果が同じだから、また、値段も同じようなものだから、知り合いに頼んだ方が無難といったものです。
これをお読みになっている賢明な皆さんは、このようなことを考えている方はいらっしゃらないと思いますが、言うまでもありませんが、結果もプロセスもサービス内容も値段も税理士によってまったく違います。
税理士会の報酬規定も撤廃されていますが、その報酬規定も報酬の上限を定めたもので、現実の相場とはかけ離れたものでした。
次は、税理士側の情報開示がないためです。
得意分野や経歴、報酬など、税理士側の情報開示がなければ、企業側も選びようがありません。これもすでに撤廃されており、ホームページなどでの情報開示も少しずつ進んできていますが、少し前までは広告規制があり、情報開示が法律違反になるような状態でした。
ふたつ理由を挙げましたが、実は私が考えるミスマッチの最大の原因は、上記ふたつではありません。税理士を替えないこと自体が、最大のミスマッチの原因であると考えています。税理士を替えないことには、当たり前ですがいつまでたってもミスマッチは解消されません。
経営者側からすれば、長く関与してもらい会社の事情や経理内容などをよくわかってもらっていることや、個人的な財産や家庭環境なども知ってもらっていることや、また、税務的に少し後ろ暗いことを知られていたりすることなどが、税理士を替えない大きな原因のようです。
しかし、税理士にとって会社の帳簿は、業種が違って多少会計処理の方法が違っても、基本的には同じ会計や税務のルールで作られているものですから、見れば理解できます。
「先生はうちの業種の経験はありますか?帳簿が複雑なので」とおっしゃる経営者の方がよくいらっしゃいますが、税理士で5年程度の実務経験がある方であれば、理解できないで困るような帳簿はまずはありません。
また、税理士には守秘義務があります。まともな税理士であれば、仕事上で知り得た会社の財務状況などを決して外部には漏らしませんし、税務署に密告するようなこともありません。
税理士は税務署と内通していて、税理士を替えれば税務調査が入る。と考える経営者の方がいらっしゃるようですが、昨今ではそんなことをする税理士はまずはいません。
私は、企業はもっと税理士を替えるべきだと考えています。
不満をもちながら、誤解に基づく呪縛により、サービスの提供を受け続けるのは、厳しい競争環境にある企業にとって大きな損害ですし、また不幸だと思います。サービスを提供する側の税理士にとっても、喜ばれていないサービスを提供し続けるのは不幸にほかなりません。
税理士を替えることによる障害は、実はほとんどありません。私は税理士というサービス提供者側の立場ですが、企業側が税理士をどんどん替えることによって、税理士側にサービスや価格などの競争がおこり、税理士業界がよりよくなると考えています。現状では十分な競争が行なわれていません。
ミスマッチが解消して、多くの企業が税理士のサービスのことをよく知り、また、満足して欲しいと願います。
次号以降、税理士の具体的な選び方について記述します。
◆参考情報◆
【税理士によるタックスアンサー/無料相談対応の税理士探し】
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