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◆◇　　　　　　　　　　　　　　第４０号【03/08/08】　　　　　　　　　　◇◆
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《今週のテーマ》


『医療・介護ビジネスに参入もいいけれど・・・』


長引く不景気のせいだろうか、筆者の小さな事務所にさえ、色々
な業種の方から“医療・介護の分野に進出したいのだがどうした
らよいか？”という相談が舞い込むことが多い。

その理由を訊くとたいがいは、「景気の波に左右されない業種だ
から」という。・・・冗談じゃない！

小児科の待合室をよく観察して欲しい。親の給料日の前と後では、
待合室にいる患者（患児）の数が一ケタ違うことが判るはずだ。

介護保険だって、給付限度額一杯にサービスを受ける人はよっぽ
ど事情が切迫している人の他は、１割の自己負担を払うことので
きる余裕のある人、言い換えれば年金以外に安定した収入のある
ごく一部の人だけである。

つまり、“サービスに対するニーズ”と“実際のサービスの需要”
とは必ずしもパラレルではない、という意味においては他のサー
ビス業となんら変わりはないのである。

強いてこの分野が他のサービス業より恵まれているとしたら、ま
ず自己負担部分をご本人から回収する。（これもたまに貰い損な
うこともあるが・・・）

その後、保険給付部分については前月分のレセプトを出しさえす
れば、翌々月末にだいたい全額が振り込まれる。

まあ債権回収の心配があまりない、という点くらいであろうか。

ただここで、“だいたい”とか“あまり”という修飾語を必要と
する理由は、レセプト、特に診療報酬のレセプトには何段階もの
審査があるということだ。

そしてどこかの段階で「この症状でこのクスリは不要だ」とか、
「この病名でこの検査は不要だ」という判断がされると、そのレ
セプトは突き返される（返戻という）。

そうすると、それに対して手書きでコメントを付記して再請求し
たり、それでもダメで泣き寝入りしたりすることになる。

また、都道府県の審査委員会で認められたレセプトであっても、
企業の健保組合などは専門のレセプト点検業者（通称：削り屋）
を雇う。

最悪の場合では請求してから半年くらいして、こちらが忘れたこ
ろに「この支払は認められません」という通告を送りつけて来る。

しかも半年後の他の診療報酬から勝手に相殺してくることさえあ
る。（ちなみに彼等は削った額の何割という成功報酬方式での契
約らしい）

診療報酬は（旧）厚生省告示で“１点１０円”と定められている
が、この体制がいつまで続くかは保障の限りではない。

１単位１０．７２円から１０円の間で地域格差の設けられている
介護報酬もまた、介護保険自体が第２の国保といわれるほど、将
来の財政難が予想されている。

当然、介護報酬もまた然り、本当に財政が苦しくなったときに、
１点や１単位が９円にならないという保障は、どこにもないので
ある。

こんな状況であることを知ってか知らずか、新規参入組は増える
一方である。

また、その新規参入組をあてこんで、診療所向けのテナントビル
を作りたい、といった相談なども少なくない。

勿論、キチンと調査した上で採算が取れると判断できるケースな
らよいが、相談者の多くは“この分野ならば大丈夫だろう”とい
う程度の認識で来られる。

今時、街道沿いの中規模テナントビルの中層階で、月額賃料が坪
単価１３，０００円で借り手がつくと思っているのだろうか？

“一般のテナントじゃあ無理そうだから、医者にでも貸そうかと
思って・・・”なんて、とんでもない話である。

医療機関だって、綿密な市場調査をして立地や標榜科やターゲッ
ト患者等の戦略についてプロのコンサルを動員して検討し、事業
として成り立つかどうか検討し、それでも失敗することさえある。

カンバンを上げさえすれば患者のほうから頭を下げながら集まり、
ドンブリ勘定で経営が成り立っていた時代は、遠い過去のものな
のである。

勿論、医療・介護の分野は人間が生きていく以上は必ず必要なサ
ービス業である。

しかし、そのことと財源の問題は別であり、必要だからといって、
一部の僻地医療や特殊な先端医療等を別にしたら、特別な保護が
受けられるわけではない。

限られたパイの取り合いは激化する一方であり、少数の勝ち組と
多数の負け組みの構図に向かっている！

この事実だけはしっかり認識し、その上で、この将来有望な分野
への進出を検討されることをお勧めしたい。

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《今週のコンサルタント》
岸部　宏一(きしべ　こういち)
行政書士岸部宏一事務所代表／神奈川県行政書士会鎌倉支部幹事

１９６５年生まれ。中央大学商学部卒業。外資系製薬会社でＭＲ
（医薬情報担当者）を経験後、医療法人・個人立診療所で事務長
を兼務。９９年から医療経営コンサルタントとして大手会計／医
療福祉経営コンサル事務所に所属し、医療・介護施設の開設支援
から内部組織構築・管理職研修・法人化等の経営支援を担当。０
３年春に独立。医療福祉分野を専門とする若手士業者を中心に、
“医療福祉経営支援協会”の組織理事就任。医療・介護施設の開
設準備から経営支援また契約・遺言・成年後見等の民事法務分野
までネットワークを駆使してのワンストップサービスを提供する。


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《編集後記》
今週のコラムで思い出したのですが、私の年令では健康診断を無
料で受けられるのです。（おっと、年がバレタ？）毎日、不摂生
な生活をしているのでドキドキもんですよ〜。今年は何て言われ
るんだろう。きっとまた先生にお説教されるんだろうな〜(^o^;
皆さんは、怖がらずにちゃんと行きましょうね。お大事に♪でも、
毎日暑い日が続いていますネ〜。皆さん、体調はいかがですか？
ウチの犬も飼い主同様バテバテで、ひんやりマットでは飽き足ら
ず家中の冷たい所を探し回っています。今朝起きたら、私の胸に
アゴを置いていました。それって“心”が冷たいって…(◎-◎;)
（にしだ）

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