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第010号 『出版サクセスロード PART2
      〜あなたの本に最もふさわしい出版社を選べ!』

■またひとつタブーを破る


こんにちは。

再びタブーに触れることで、多分今週から世間がぐっと狭くなるであろう本多泰輔です。

私、聞いてしまいました。聞いた以上は、開けなきゃならないパンドラの匣、秘匿するということができない切ない性格です。

先月、ビッグな書店チェーンを展開する某社本部の現場トップにお会いする機会を得ました。そこで、以前から気になっていたことをあれこれと伺っておりましたところ、これからご紹介するセンセーショナルな話をお聞きすることができました。

いままで何度か「ここまで話していいの?」とか煽り文句を入れましたが、今回のに較べたら豪華客船クィーンエリザベスと救命ボートくらい違います。

件の幹部は、このメルマガの趣旨を理解し「本は大手から出ればいいと思っているだろうけど、必ずしもそうではない。テーマによっては小さいところの方がいい場合もある」と言いつつ、書店から見た各出版社の実態を教えてくれました。


■問答無用の版元格付け


いつも長いメルマガですが、幹部の話を全て載せると雑誌「AERA」(朝日新聞社)一冊より長くなってしまうので、ビジネス書出版社に関することに限ってご紹介いたします。

まずは下記、幹部のお話から抄録しました「書店から見た各出版社のランキング」をご覧ください。


Aグループ 
社歴の古い老舗版元。


年間の新刊発行点数は220〜280点。全国の書店が一目置き、ナショナルチェーン店では、ほぼそのすべてが自動的に新刊台で平積みされる。オリジナルな企画を積極的に出すビジネス書出版界のリーディングカンパニーと見られている。

出版社:日本経済新聞社、日経BP社、東洋経済新報社、ダイヤモンド社、プレヂデント社。


Bグループ
Aグループよりも歴史が浅い大手。


ビジネス以外の書籍も多い。営業面ではAグループよりも強力な面もある。またソフトカバーの本があったり、書店で目立つ企画があれば素早く自社商品に取り込む積極性もAより上。だが、それゆえにBグループとして見られていることも。逆に言えばA、Bにはっきりとした数字の差はない。

出版社:日本実業出版、PHP。

年間の新刊発行点数を見るとPHPはむしろAグループよりも多い。
日本実業はDグループの上位と同じくらい。


Cグループ
自己啓発書グループ。


出版点数も企画の幅もBグループ同様だが、書店からはビジネス書全般の出版社というよりも、「人生をどう生きるか」といった自己啓発書の版元として見られている。海外出版物の翻訳書でもベストセラーを出すので、書店も何かヒットを飛ばすのではないかと期待を込めた視点で見ている。女性向けの企画も多いのが特徴。

出版社:サンマーク、三笠書房、大和出版


Dグループ
ビジネス書出版社の中堅どころ。


年間の新刊発行点数は150点以上。A、Bグループよりヒットを出すこともあるが、書店では売れ行きの良い本以外は、上位グループに押され早い段階で売り場から消えて行くので、常に営業努力が欠かせない。ただしナショナルチェーン以外の中規模チェーンではAグループ以上の力を発揮する。

出版社:中経出版、かんき出版、明日香出版、少し離れて同友館、同文館


Eグループ
新興勢力。

年間の新刊発行点数30点以上。まだまだ小規模であるものの勢いはある。上位と較べ、配本だけでは売り場に残れないので、間隙をついた企画やスピーディーな本造り、拠点ごとの書店営業マンの力が重要になる。

発行点数が少ないので一つ一つの本を息長くフォローしているのがこのグループ。郊外店でDグループ相手に厳しい競争を挑んでいる。

出版社:インデックス・コミュニケーションズ、すばる舎、あさ出版、ぱる出版、こう書房


Fグループ
デビューおよび再デビューグループ。


書店からはCグループと似た出版傾向で最近ブレークした存在として見られている。一発屋的印象もあるが、次なるヒットへの期待感は高く書店も注目している。

出版社:フォレスト出版、ビジネス社、第二海援隊


■各グループを著者側から見ると


幹部によれば、こうしたグルーピングで出版社が括られる背景には、書店側に「本の目利き」がいなくなったという問題もあるそうです。テーマや内容ではなく版元によって商品の選別をするのであれば特に経験は必要ありませんから。

幹部に「出版の目的別に出版社を見たらどうなるか」と次の質問をぶつけてみました。


<著者の知名度を上げるには>

やっぱり全国津々浦々まで自動的に配本されるAグループが一番。あとはランキングの順番通り。ただし、地域を限った戦略を考えるならDグループのほうがAよりも優位な場合も。

<手っ取り早く本を出したいなら>

出版エージェントに頼んだ方がいいんじゃないでしょうか。


<ベストセラーをねらうなら>

ベストセラーは版元を選びませんから、どこから出してもいっしょです。


<斬新なテーマを発表するなら>

これはトップとボトムの二極分化です。Aグループは、業界のリーディングカンパニーという自負があるので、斬新なものに積極的な傾向があります。ボトムグループは冒険が出来ます。中堅グループは、直前にベストセラーが出て調子の良いときであれ
ば、珍しいものにも飛びつきますが、概して手堅い。


<長く書店に残る本にしたいなら>

年間の新刊を100も200も出すところは、売り場面積が変わらない以上、自動的に商品の寿命は短い。大手から出版しても一月以内に重版がかからければ、早々に売り場から消えてゆく運命にある。発行点数の少ない小さな版元は、その点で一つの本を長く売り続けられる状況にある。ベストセラーならすべてOKですが・・・。


<本でPRしようと思うなら>

テーマに応じて版元を選んだほうがよい。基本的にPRをねらった本に関しては書店の扱いは冷たい。例えばビジネス書の版元から、あからさまに健康なり、住宅なり、「えっ?なんでこのテーマがここから・・・」という本が出てくれば背景の察しはつきます。


<コンサルタントとしての格を上げたいなら>

コンサルタントの格が出版で上下するのかどうかわからない。しかし、地方のチェーン店では、著書出版イコール地元の名士という印象もあるらしい。全国どこにでも著書があるということを主張するなら、Aグループがいいのかもしれないが、要は書店で目につく出版社から本が出ていればいいんじゃないのですか。


<学問的ステイタスを上げるには>

ビジネス書でいかにベストセラーを続けていても学問的には評価されません。「経営書」というジャンルに入っている出版社、例えば東洋経済新報社はそのジャンルに入っていますが、PHPは入ってないはずです。したがってPHPに何冊も著書があっても学会での評価には直結しません。


<何冊も著書を出すには>

一冊目が売れたら、次々と出版社を変えるよりも同じ版元から続けて出したほうがいいと思います。シリーズとして並べることもできますし、一冊目を読んだ読者にとってもわかりやすい。また、マナーとか女性向けの本ならCグループ、サービス業向けの 本なら、ぱる出版やこう書房が多いし、出版社によって傾向がありますから、自分の専門テーマとの相性で選んだらいいと思います。


■まとめ


出版社のランキングを出すのは度胸がいりました。評価の基準が意外に保守的であることも知りました。日本的な業界なんですね。

ランキングに名前がないところもありますが、幹部の見解としての「ビジネス書版元」ですので、社名の落ちているところは経営書や経済書、一般書に括られているということなのでしょう。日本能率協会とか産能大とかシンクタンク系は入っておりませんでした。

やはり一つの意見として見るべきなのでしょう(といって逃げる)。
それでも概ね納まるべきところは納まっていると思います。

出版というのは多くの読者と出会うための手段ですが、人の目に触れるということを時間軸で考えた場合には、一つの本を息長く売り続ける小規模出版社のほうが比較優位性があるということですね。その他、出版を考える際の参考にしていただければ幸甚です。

決して企画を断られたからといって、腹いせにこのランキングを持ち出すことはやめてくださいね。ましてだれが書いたかなどと告げ口してはいけません。

前号は「長い」というクレームがあったので今回はこの辺で閉めようと思います。

次回は「本の影響力」をテーマにいたします。
ご期待ください。

先月のアンケートでいろいろ面白い回答をいただけましたので、次回あたりにもう1回やりたいと思います。今度は出版社編集部より企画を提示させますので、みなさんのご意見をお聞かせください。よろしくお願いいたします。

 

《編集後記》

今週号は、ビジネス出版社が実名で登場して、どんどんディープな内容に突入してきたと感じています。。。本多さんには、無理を言ってインサイダーなお話をして戴いていますが、皆さんのご声援があってのメルマガです。

お読みになって、面白いと感じたら、ぜひお知り合いにお勧めをお願いします。読者数は400名くらいで、まだまだ当面の目標である1000部には、みなさんの暖かい口コミが必要です。どうか、ご支援下さい(発行者:樋笠)


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出版プロデューサー/本多 泰輔(ほんだ たいすけ)

プロデューサー・本多泰輔氏は、ビジネス出版社(版元)で20数年の経験をもつベテラン編集者から、出版支援プロデューサーに転身した人物です。その考え方について詳しく知りたい方は、本多氏編集のメールマガジン『コンサル出版フォーラム!本はあなたをメジャーにする』のバックナンバーをご一読下さい。








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