■ベンチャーからアジア株まで
皆さん、こんにちは。発行者の樋笠です。今週は予定日より、2日遅れての配信となってしまいました。ごめんなさい!
さて、インタビュー・シリーズの第3回目です。今回は、エンジェル(ベンチャー企業投資)、フランチャイズ、アジア株と、自力で次々と新しい領域を開拓してこられた、荒井裕之さんにお話を伺いました。
最新作の『キヤノンの高収益システム(ぱる出版)』で、すでに8冊目の著書を世に送り出しています。処女作の『エンジェル(宝島社)』が1999年、第2作目が2004年ですから、ほぼこの1年間で7冊の出版を実現されています(かなりすごいです)。
『キヤノンの高収益システム―御手洗富士夫の〈新・日本流経営〉』
〜インタビューは、夕刻、秋葉原のホテルの喫茶にて〜
樋笠:お久しぶりです、荒井さん。前回はバリバリのスーツでしたけど、ずいぶん印象が変わりましたね。本日はよろしくお願いします。まず、出版を実現されたきっかけを聞かせて戴けますか?
荒井:99年に最初の『エンジェル』を出版しました。ちょうどその頃はベンチャーブームで、ダイナミックなアメリカの起業家社会を支えるテーマを、ぜひ書いてみたかったので。出版社は自分からアプローチしました。
実は、『メガベンチャー』という著書で有名な米国ゼロングループの代表、増田さんにも直接会いたいと自分からコンタクトを取ったんです。
米国は社会そのものにオポチュニティ(機会)があり、敗者復活のルールがあります。ですから日本の企業社会にも米国の起業家社会を支えるシステムにも、参考にするところが多くあると思っていました。
樋笠:なるほど。ちょうど荒井さんがベンチャー企業投資の仕事をされていた頃ですね。それから数年、間隔があって、昨年からはアジア株を中心に、ハイペースで出版をされていますが。
荒井:はい。僕の場合は、100%飛び込みといいますか、すべて企画の持ち込みです。
樋笠:えっ!? 持ち込みって、そんなに簡単に通るものじゃないという話はよく聞きますが。持ち込み企画を通すコツってあるんでしょうか?
荒井:いまの仕事もほとんどそうですが、一度面白いと思ってもらえれば、ほとんどの仕事は口コミの紹介などで来ています。
最初のきっかけは・・・そうですね、編集者は『自分なら読みたいかどうか』を判断基準にされていると思いますが、僕も常にそういった視点で企画を考えています。
樋笠:なるほど。まさに編集者の視点、ですね。しかし具体的にはどうやって『読みたい企画』を考えていらっしゃるんでしょうか?
荒井:章立てが勝負、と思います。読みたい!と思わせる章立てができるかどうか、でしょう。自分が書きたい内容を、中身がよくわかるように、細かく、細かく、読み手の興味をそそるトピックスを盛り込んでいきます。とくにWhy(なぜ?)という視点とHow(どのように?)という視点がカギになります。
そうやって出来た章立ては、そのまま目次になりますし、よく練り上げた章立ては、ほとんどそのまま通っていますよ。
樋笠:そうでしたか。企画書を書くというのは、読みたいと思わせる章立てをつくるという意味でもあるんですね・・・。
荒井:やはり出版社さんはプロですから、常に売れている本をチェックして売れそうなタイトルを付けたいものです。すると、僕のイメージよりも、どうしても軽くなってしまうことが多い。とくにアジア株を扱う本では、どこかで聞いた金儲け本のパクリのようなタイトルになってしまいます(笑)。
タイトルは出版社さんの意見が通って仕方ないと思いますが、中身は譲れないといいますか、やはり自分の主張がしっかりと伝わる章立てにしたいですね。
■原点はドラッカー「現代の経営」
樋笠:ところで荒井さんの著書のテーマは、エンジェル、フランチャイズ、アジア株、キヤノンと、すごく多岐にわたるといいますか、ちょっとバラバラな感じもするんですが。
荒井:いや、一見、そうみえるかもしれませんが。僕の中では一貫したテーマがあるんです。ドラッカーの『現代の経営』が大好きで、何度も読み返しているんですが、その中には企業価値とは顧客創造力である、という一節があります。
ベンチャー企業でも、フランチャイズでも、アジアの企業でも、キヤノンのような大企業でも、究極は、存続する優れた企業とは?というメインテーマがあるのです。
私は銀行からベンチャー企業投資という世界を経験してきたのですが、当時から、お金さえ儲ければいいという、ろくでもない会社が上場するような場面をたくさん見てきました。
しかしどんな企業にせよ、顧客に確かな価値を提供し続けることができなければ、意味がありません。つまりエクセレントな経営とは?イノベーションの役割とは?というのが一番興味のあるテーマなのです。
樋笠:そうですか。じゃあアジア企業を見る眼というのも、ベースの考えは同じなんですね。荒井さんは、いまやすっかりアジア株の専門家といいますか、投資アドバイザーのような立場に見えるんですが。今後も、ここを強みにしていくのでしょうか?
荒井:僕がやっているのは小さな会社ですが、アジア企業への投資を通じて、どんどん華僑ビジネスマンとの人脈も広がり、毎日、普通の日本人では知りえない面白い情報が入ってくるようになっています
確かに総合力では、大手の会社に勝てないと思いますが、こちらも身銭を切って真剣勝負をしているつもりです。情報の濃さや内容では、決して負けないつもりです。
樋笠:これからが楽しみですね。とくにこれから10年、20年後に成長するアジア企業に投資するって、ワクワクしますね。その流れとともに、荒井さんの専門性にもますます磨きがかかってくると思いますよ。
■これから出版デビューするコンサルタントへ
樋笠:最後に。これから出版をしたいという読者のみなさんへメッセージをお願いします。
荒井:ご自分の中に埋蔵されている『資源』を、Why? How? といったキーワードで分解して、ご自身では気づかなかった原理、 原則をひもとくように考えていけば良いのではと思います。
自分の経験や知識を、どうやったら世の中の人に使ってもらえるか、役に立てるか、という思いが強くなければ良いものは書けないと思います。
ビジネス書は、当然、たくさん売るために出版するものですが、逆説的ですが「売ろうと思えば思うほど売れない」と感じます。
樋笠:本日はありがとうございました。私はアジアの経済や企業にすごく関心がありますし、ぜひ、アジア株投資のことも色々と教えてください!
荒井:近所にベトナム料理屋がありますので、続きはそちらでいかがでしょうか。
樋笠:ぜひ!ベトナム料理大好きなんです。早く行きましょう〜!
■まとめ
今週は私の筆が遅くて、本多さんのコメントがなくてすみません。
荒井さんの話で、参考にして頂きたい部分をまとめました。
〇章立てが命!読者が思わず読みたくなる章立てを作れば、そのまま売れる企画書になります
〇自分が持っている『資源』、つまり誰にも負けない得意分野を整理することから始めてみてはいかがでしょうか
〇しかし狭い世界で凝り固まらずに、自分の興味ある新しいテーマをどんどん広げましょう(荒井氏の例では、ベンチャー⇒フランチャイズ⇒アジア株)
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◆◇今週のおすすめビジネス書◇◆
『2年で元手を50倍にするアジア株投資術 』(2005年2月)
著者:荒井 裕之 出版社:KKベストセラーズ ¥1,600円(税込)
ペイオフ解禁の2005年はアジア株がチャンスです! 安く買って大化けを狙うには、中国に続く「割安・大化け株の宝庫」アジア、インドが狙い目! 本書はアジア株、BRICs投資術の決定版として刊行致しました。
いま急成長を遂げるアジア、BRICs諸国…中国、台湾、韓国、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ブラジル、ロシア、インド…の投資情報を、最新データ、チャート付きで解説しています。さらにペイオフ時代の分散投資に最適な優良銘柄、有望ファンドを多数公開、安心して取り引きできるアジア投資術の入門書となっています(出版社/著者からの内容紹介より)。
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《著者プロフィール》
荒井裕之(あらい ひろゆき)
グラスルーツコンサルティング 代表
1964年北海道生まれ。早稲田大学法学部卒業。地方金融機関勤務後、大手コンサルティング会社入社。中小企業コンサルティングに従事した後、ベンチャー投資部門マネージャーを務める。1999年、企業コンサルタントとして、グラスルーツ設立。ベンチャー投資会社アドバイザーなどを経て、香港系投資会社にてダイレクター就任、香港・中国企業と日本企業提携などを担当。現在、日本を中心に、アジアを中心とした資産運用、中小企業コンサルティングに従事する
参考コラム
『イノベーション成功のポイント』(経営革新!2003/1/8)
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