■文章が苦手なら図解でいこう
おはようございます。
このメルマガ30号くらいになったら一冊にまとめて販売しようかと密かに考えている本多泰輔です。図解入りで。
さて、図解だとなにがよいのでしょう。
1.図のスペース分、文章量が少ない、その分読みやすい
2.既出のテーマでも図解にすれば新しい本になる
3.図解の作図は編集(イラストレータ、デザイナー)が手伝ってくれる
(1)は著者と読者にとってOK。(2)は発行点数が稼げるので編集者にとってOK。(3)は著者にとってOK、と読者に歓迎され、編集者に喜ばれ、著者に有利なのが図解本です。
企画段階で、図解は文中のカット扱いではなく、図解ページとして1ページを使うよう提案しましょう。理想的には、見開き単位で片側が文章、片側が図解。
そうすれば200ページの本でも文章は100ページ分書けば済みます。さりとて安い印税がさらに安くなることはありません。
図解本の理想は、図解が中心で文章は図の解説。だから図解本ですね。絵本みたいなもんです。
文章の理解を助けるために図解がある、のではありません。図解の説明のために文章がある。絵を読ませるのです。図解本の究極の形は絵本です。
とはいうものの、2ページに1ページの図解を挿し込むのも、解説を1ページにまとめるのも容易なことではありません。
エンジンの構造を解説するような形あるものについて述べるならともかく、経営だの経済だの法律だの元が文章で構成されているものを絵柄に置き換えるには工夫を要します。
フロー図、チャート図など文字の図版化も必要ですし、イラストも飾り以上の働きが求められます。
ま、でもその辺は編集者がやりますけどね。
図解のセンスがある編集者といっしょにやれば負担は半減です。
しかし、編集者の助けを借りるためには、まず出版社に企画が採用されなければなりません。
■企画書も図解でつくれ
図解本の企画なのに、企画書に絵のひとつも入っていないようでは、説得力を欠きます。
実際、図解の絵柄をつくるのは編集者およびデザイナー、イラストレーターの仕事なので、著者が上手な絵を描く必要はありません。
絵の才能は別の機会で生かしていただくとして、どういう図を入れていくのか意図がわかるように本文中の図解見本を何点か添付しておきましょう。
この際自分で見ても「わかりやすい図解だなあ」と感心するようなまとまりのよいのを添付してください。
ピカソの絵らしきものは描かれているが、なんのことかわからないとか、文字と文字の間に矢印→があるだけ、というようなのは見本に出していけません。
企画が通って原稿が進行してしまえば、どんなにいい加減な図解原稿を出しても編集は恨みがましい目をしながらも、人によっては多少文句を言いながらもなんとかサマになるように仕上げてくれます
が、企画が通る前では一蹴されて終わりです。
極力図解のセンスの悪さは秘匿し、あたかも図解の達人の如きアピールをしなければいけません。著者たるもの編集者ひとりだませなくてどうして読者をたらしこめますか。
図解の命は「わかりやすそう」。
本当にわかりやすければさらに良いのですが、企画書はとにかく「わかりやすそう」につくらなければいけません。
文字は大きく少なく、タイトルはタイトルらしく(書体、大きさも含めて)、目次は目次らしく(仮であっても)、図解は見やすく(できればわかりやすく)を基本にしましょう。
本の判形はA5判以上。
図解は1ページを使うこと。できるだけ見開き単位で図解と文章を対向させるように提案しましょう(実際つくるのは大変ですが)。
具体的なつくりかたは、インデックス・コミュニケ−ションズから『図解主義』という本が出てますし、「図解○×△」という本はたくさんありますから、よさそうなのを参考にしてください。
本メルマガで「参考にする」というのは「パクる」と同義です。
「パクる」が下品なら「おパクる」。
ただ、『図解主義』はそのタイトルのわりに本文中の図解の扱いが小さい。主義の違いでしょうか。
■複雑な図解はNG
編集は下手な絵を上手につくり直してくれますが、図解原稿は著者がつくらなければなりません。図解100枚、けっこう骨です。
さあどうしましょ。テーマのうちからどれを図解して見せるかです。
図解できるものを図解する。それもひとつですね。
しかし、歌でいえばサビの部分が図解のしどころで、イントロを図解してもいささかシュールですし趣旨になじみません。
また、図解できるものを図解するだけでは50枚もつくれません。
そうすると次に重点事項を図解しようと考えます。
ところが、各章ごとの重点事項というのはそんなにたくさんありませんよね。一つの章が20ページだとすると図解は10ページ、少なくとも7〜8ページが必要です。
普通、重点事項というのは章単位2〜3点で多くても5点ある程度。足りません。
ですから下手な図解本に見られる「図解というわりに図が少ない本」「図解すべきほどの図ではないページ」という事態が生じるのです。
ここで図解するねらいについて考えてみましょう。
そもそも、図解で著そうという本は「最高裁の判例分析」をテーマにしたりしません。もっと基本的なこと、例えば「図解 これだけは知っておきたい陪審員制度」というようなものです。
「基本的なテーマの原理原則をわかりやすく図解する」というのが、図解本のねらいであり目的ですから、テーマも「基本的」なことが中心になります。
カンタンなことをわかりやすく表現することが図解なのです。
では重点項目のどれかを図解してみてください。
しましたか?
絵が複雑になってはいませんか。
図解の説明にたくさんの文章を費やしていませんか。
図解がちっともわかりやすくない気がしませんか。
理解にはステップがあります。何も知らない人がいきなり10段階へ飛び上がることはありません。あったら天才です。天才は図解本を必要としないのでこの際置いときます。
各章の重点項目に至るにも何段階か「理解のステップ」があるはずです。「いや、その辺のくだりは文章で説明してあるから」とおっしゃるかたはいませんよね。
その「説明文」を図解するのが本の趣旨です。
以下ここまでのまとめです。
1.図解は実際には作画の専門家がつくる、著者はアイデアと骨格だけを提供
2.あまり複雑な絵はつくらない、複雑化するテーマは選ばない
3.図解は「理解のステップ」に応じて分解してつくる
■アイデア捜しはメモランダム
図解といっても企画の一種類です。日常、周囲に気を配り看板、広告、本や雑誌、新聞にヒントを求める以外にありません。
売れてる本があれば、とりあえずアタマに「図解」とつけて企画を考えてみましょう。その際、メモの活用をおすすめします。
メモの活用については前にも触れましたが、手帳であれポストイットであれ、とにかく思いついたときに書き留めることが重要です。
電車の中だから、降りてから書こうと思っても、降りたときはたいてい忘れています。
あとで忘れたことを思い出しても、なにを忘れたかは思い出せず「忘れるくらいだからどうせ大したことではあるまい」と諦めるしかありません。
実際ほとんどの閃きは「忘れるくらいだから」大したことはないのですが、アイデアのクオリティは量に比例します。
ひとつひとつの思いつきをおろそかにせず、思いついた端から書き留められるよう常にペンとメモ用紙は携帯しましょう。
先日読んだ『赤塚不二夫のことを書いたのだ!!』(武居俊樹著:文藝春秋)に赤塚不二雄のことばとして
「悪いアイデアを山ほど考えると、よいアイデアが見えてくるんだよ」
というのがあります。結局アイデアは数をこなさないとよいものは出てきません。文章も同じですね。多分歌もそうでしょう。
百回の鍛、千回の錬を繰り返すしかありません。
ちなみにわたくし本多は、100円のメモ用紙を二つと三色ボールペン1本をポケットに入れ、アイデアノート一冊と赤と黒のボールペンをひとつずつと手帳一冊をカバンに入れ常時持ち歩いています。
メモにルールはありませんが、あちこちにメモしているので、後で前後関係が分かるよう日付だけは記しています。
例え電車の中で突然メモ書きを始めても、本人が気にするほどに周囲は関心を寄せません。
ただし、アイデアに没頭するあまり独りでなにごとかを呟くのは控えましょう。いつの間にか周囲から人がいなくなります。
日ごろあまり漫画は見ない人は、すすんでコミックにも目を通すようにするとよいでしょう。漫画には図解のヒントがたくさん散りばめられています。
できれば買って読むようにしていただければなおけっこうです。
みんなで出版界のGDPに貢献いたしましょう。
■まとめ
いま『世界一わかりやすい株の本』(細野真宏著:文藝春秋)が売れているようですね。ミリオンセラーの著者ですから固定読者がいるのかもしれません。
株の本全体が好調な中、この本がミリオンセラーになるかどうかはもう少し様子を見ないとわかりませんが、中味はこの著者流のわかりやすい本になっています。
形式上は図解とは違うのですが、図解と同じかあるいはそれ以上に図解されています。
著者本人がかつてTVのインタビューで「理解の歩幅」と言っていたように、素人の理解の歩幅に合わせ(それはおそらく本人の歩幅でもあったでしょう)図解が施されています。
多くの人はある程度熟練すると素人だったころのことを忘れてしまいますが、この著者は自分がどのように理解してきたかということを忘れていない人なんでしょうな。そのへんが白眉です。
さて、次回のテーマですが「本を出したら儲かるのか」。ベタですね。
いまさらながらのテーマですが、もう一度原点に帰って本出すことの損益計算書をつくってみましょう。ことによるとあまりの悲惨さにこのメルマガの読者を辞める人が出るかもしれませんけど。
お楽しみに。
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