■出版でネームバリューを上げる人、下げる人
新山:まず、繰り返しになりますが、自分の書く内容や、読者ターゲットを十分に考えて、ふさわしい版元を選ぶことですね。時々、同じ企画書を出版社に片っ端から送りつけるような話もありますが、あんまり感心しませんね。
ある知り合いが、非常に良い内容の本を書いたんです。本当にすごくいい。コンサル関係では有名だけれども版元としてはマイナーな出版社から頼まれて書いたようですね。結果、売れ行きはサッパリでした。本当にもったいない。売り方も間違っていますし、売るパワーもない。やはりきちんと判断して、断るべきだったと私は思います。先ほど申し上げたように、販売実績は丸見えですから。
出版というのは恐ろしい面があって、ネームバリューを上げる人もいれば、かえって下げる場合もあります。なぜ、わざわざ時間や労力もかけて、自分のブランド価値を下げるようなことをするのか?、って思います。
樋笠:手厳しいアドバイス、ありがとうございます。
新山:このあたりの出版戦略は、よく分かっている方は、うまく版元も使い分けて出版していますので、参考にされるといいでしょう。時間がない方は、本多さんのプロデュースで知恵を借りるのがいいと思いますよ。
あと、著者ですごく参考になるのが「女子大生会計士の事件簿」と「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」でベストセラーとなった山田真哉さん。彼は「女子大生」本、1冊目の時に、版元経由で全国紙の広告を買いました。企画力も秀逸ですが、販売へのこだわりも一流だと思います。
私はメガネをかけませんし、ゴルフもしません。でも、その両方のコンサル実績はあります。知らないから、そのコンサルはできません、では通用しないはずです。
だから、まがりなりにもコンサルタントという職業の方なら、出版業界をよく研究して判断し、売れる本にする責任があって当然ではないでしょうか?
樋笠:新山さん、正直、デビュー二作目とは思えない、濃い内容でした。参考になります。ありがとうございました!
■まとめ
いやあ、新山さんって業界通ですねえ。
わたくし、著者で紀伊国屋オン・ラインデータ買ってる人、初めて知りました。出版社だって金のないところは、デイリーデータは買ってないのに。
(樋笠注:新山さんは出版社の方から教えてもらったので、ご自身では買っていません。10万円位するそうです)。
なかなか出版界の事情に踏み込まれたご発言でした。
返品率というのは、なかなか見解の定まらないところがありまして、少ないに越したことはないんですが、最近のように大量刷り部数で平台に多面展開で押さえるやりかたをすれば、どうしたって返品率は上がります。
昔のように常備棚で全国津々浦々まで配本すれば、返品率は低いですね。一冊しかない本はめったに返しませんから。
では、返品率が低い後者がよいかというとそうでもない。返品されていないのは棚に残っているからで、読者が買ってくれたわけではありません。意地悪い言いかたをすれば、書店の棚が倉庫になっているというです。
書籍は再販制度ですから、廃棄しない限り何度返品されても再出荷できます。地方小出版社の本などそうですね。
だからあんまり返品率を気にするなという豪気な人もおりますよ。
返品率を気にするくらいなら売り方を考えろと。
まあ、このへんはいずれ機会を改めて、もう少し著者側に役に立つ話に組み直してからやります。
では、次回はあまりにも露骨なテーマ「出版すると儲かるのか」。
お楽しみに。
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◆◇今週のおすすめビジネス書◇◆
『ポスト顧客満足の教科書』
従業員・お客さまが満足すれば、会社はうまくいく
著者:新山 勝利 出版社:明日香出版社 価格:¥1,575(税込)
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《著者プロフィール》
新山 勝利(にいやま しょうり)
ABC(アクティブ・ビジネス・コンサルティング) 代表
マーケティング・コンサルタント/研修セミナー講師
1965年生まれ。顧客満足を高める経営指導、販売促進マーケティングのノウハウを提供し、現在に至る。大手広告代理店、マーケティング・リサーチ会社、コンサルタント会社との戦略的な連携で、各種プロモーション、セミナーも手掛けている。専門誌にも多数執筆。著書に「売り場マーケティングの教科書」。
《参考コラム》
『魅せる売場づくり』
《新山氏より》
皆さんのお陰で、新しい書籍が出版されました。
2作目の今回は「顧客満足」(CS)のことを書いています。
90年代に日本でも一度CSブームがありました。でも、定着せずに終わってしまいました。まず、その原因をずばり指摘しています。
そして、現在は第2のCSブームといえます。21世紀の勝ち組企業は顧客満足度が高いのが特長です。
しかし、この顧客満足、いままでのと現代では内容が違います。そこでタイトルに、これからの意味を込めて「ポスト」を入れました。
本書では、「CSゴールデン・トライアングル」として、3つの要因が必要と解説しています。顧客満足以外に、2つの重要なポイントがあるのです。
この3つの成功要因が、三角形のバランスを相互に整って補完しあう関係を保ちます。どれか一方が大きかったり小さかったりすると崩れてしまい、顧客満足も成り立たない考え方です。
また、働く意味も説いてみました。人は何のために働くのか。この「CSゴールデン・トライアングル」で説明しております。この書籍が皆さんのビジネスの最前線で、「教科書」になって欲しいと願って書きました。