■選挙戦たけなわ
いよいよ今週末は投票日ですね。勝敗の行方はわかりませんが、近年になく投票率は上がりそうでけっこうなことと思います。
かつて、知り合いが時々立候補者の本をつくってましたが、ついにどなたも当選しませんでした。
気がとがめたのか、何年か前からはそういうお話が来てもお断りしているそうです。
断られて怒った人もまた一人もいなかったそうです。
おはようございます。
本多泰輔です。
今回は、公示前にマスコミ受けする人が突然何人も出てきて、大層面白うございました。こりゃあギミックってやつじゃないかと思いました。
現与党総裁は、相当マスコミを動かすことに長けておられますな。元PR会社にいたんでしょうか。
それともブッシュ大統領から本場米国のPR会社の手練れをつけてもらっているのでしょうか。
あるいは、日本のマスコミが著しくボンクラなのか(悲しいかな多分これが当たりだな、捏造はするし)。
それにしても、毎日テレビで取り上げられ、何度も雑誌や新聞にも出てくるとなると一二週間でも知名度だけは一気に上がりますね。
小選挙区ではもったいないほどの知名度です。
まさか、このうえ本まで書かなければ良いのですが・・・って、絶対出しますわな。
■雑誌からテーマを探す手堅いやり方
ここで強引に今回のテーマに引っ張ります。
何度も出てくるといえば、雑誌に二度も三度も同じテーマが出てくるときは要注意です。それも一つの雑誌に同じテーマが出てくるときはメモしておきましょう。
一般誌の例ですが、ちょっと前ですと「週刊現代」の年金。
最近は株ですね。
なぜ、同じテーマが続くのでしょうか。
同じテーマが続くとき、それは読者の反応が良かったときです。
まずは、雑誌記事からヒットした本の例を見てみましょう。
個人情報保護法も新会社法も雑誌で一度は取り上げられたテーマでした。新会社法は、この後も何回か紙面を賑わすでしょう。
某経済雑誌(ま、要するに日経ビジネスか東洋経済かダイヤモンドかプレジデント)で新会社法が二度にわたって記事として登場しました。
同様なテーマが二度も出てくるときには、それなりのわけがあります。
一つめはその記事を載せたため販売部数が伸びた。
二つめはヒモ(スポンサー)が付いている。
三つめはネタ切れ。
今回某誌掲載号の場合、売行きが好調だったので二匹目のドジョウをねらって再度記事を組みました。
つまり読者の関心が高いことを証明したわけです。
もちろん、雑誌で良ければ単行本も、というわけで某社も単行本をつくったんですが、惜しいことにタイミングをはずし『一問一答 新会社法』(商事法務)に飛び出され、大きく水をあけられてしまいました。
それでも版を重ねていますから十分ヒットといえます。
ちなみに『一問一答 新会社法』(商事法務)は決して最初に出たわけではないのですが、発行のタイミングの良さと著者の信頼性、加えてビジネス書じゃやらない販路の広さ、官報並みの薄く広い配本が功を奏したんですね。
ねらったわけじゃないでしょうが。
■雑誌と単行本編集部の事情
つまり、雑誌が二度も同じような企画を出してきたときは、かなりの読者がいると見ていいわけです。
さっと単行本の企画として立ち上げることができればかなりの確率でヒットを期待できます。
それなら雑誌を出しているところで単行本も出すだろうと思われるでしょうが、雑誌の記事を書いた人がそのまま単行本も書けるかというと、多くの場合そういうわけにはいかないものです。
雑誌の場合、短いですから取材で書くこともできますが、本にするとなると信頼性のある著者が必要ですし、スケジュールが折り合わないこともあります。
雑誌と単行本の編集部は違いますから、意見が異なることもあります。
企画は常にいち早く発見した人に優位性があります。第3者、すなわち著者の提案が決め手になることもあるのです。
ところで、何度も出てくる記事が、いわゆる企画もの「記事広告」である場合もあります。
スポンサーらしき社名が必ず出ている、または、明らかに話題になりそうもないテーマ、世間の関心とは方向違いの内容であれば、疑ってみるべきでしょう。
こうした記事で企画を持っていくと広告ものと間違われます。
雑誌から企画のネタを拾うという方法は、実はプロがやっていることです。プロ編集者もやっておりますし、プロの作家もやっております。
どちらかというとヒットねらいの手法ですので、世間よりも一歩先
んじたテーマとなります。
そうしたテーマですと、編集者をうならすつもりで持って行っても当の編集者があまり感度良好でない場合、情報不足で「はあ??」ってなことになりかねません。
新人編集者が相手だったりすると、この種の企画はあまり希望が持てません。
そういう相手に備えて、わかりやすい資料も用意しておきましょう。
逆に、手練れであればすぐにGOサインが出ます。
才気煥発な編集者かベテラン以外には通用しないということになると、あまり良い方法ではないかもしれません。
しかし、急がば回れ、この方法には編集者の弱点を突いた大きな効果が期待できるのです。その話は後段で改めていたします。
■業界紙、専門誌では
新法や法改正、あるいは新しいシステム・手法に関しては、影響を大きく受ける業界向けの専門雑誌、業界紙のほうが、必ず先行しますしかなり掘り下げて来ます。
暴対法や破防法が成立する過程では、その筋の方々の記事を中心に組んでいる実話系の雑誌に硬い法律関係の文章が何度も登場しました。
道交法改正があると普段はグラフページばかりのクルマやバイクの雑誌でも法令に関する記事が出ます。
業界紙、専門誌はそれぞれの業界に影響することには、一般紙以上に感度よく反応しますし、大手新聞やメジャーのビジネス誌では一過性のものでも、進捗状況や対応策についてかなり綿密に追い続けます。
これはかなり深い情報源となります。
理由あって某大手経済新聞を辞めた方が書いた本によると、某大手の記者も業界紙を情報源に記事をこしらえているとのこと。
ビジネス書の編集はその某大手の記事を基に企画を考えているのですから、源流まで遡ったほうが質量とも勝ることは明らかです。
業界紙、専門誌をすべてチェックしている人はいないと思いますが、ご専門の分野や業界に関わる情報に関しては、書店に並んでいる雑誌だけではなく、少し情報源を掘り下げていくと意外な鉱脈にぶつかるかもしれません。
■編集部は情報不足で赤ランプ
出版界は、このところ翻訳ものが幅を利かせています。
てっぺんはなんといっても『ハリーポッター』。
まだ続編が出るんですね。
ビジネス・自己啓発ものでも『Good Luck』など年に一二冊はベストセラーがあります。
さらに、これまで翻訳ものといえば、ほぼ米国の本だったのですが、なんとまあ最近では中国、韓国からの翻訳ものまで出てきました。
中国・韓国といえばかつては日本からの輸入オンリーで、その安い著作権使用料に随分がっかりしたものです。
最近では、翻訳ものの経験のない出版社まで海外のベストセラーだからと、せっせと発行しているようすです。
実はこうした翻訳出版が溢れている裏には、海外書籍専門のエージェントの存在があります。
各版元が、エージェントにいいように食い物にされて・・・いや、海外企画に頼る背景も自前の企画の頭打ちにあるのでしょう。
もはやどうにも煮詰まってしまって、仕方ない、この際海外に活路を見出そうとエージェントの甘言につい乗ってしまう。
翻訳ものの出版エージェントが、次々と版元をだまくらかして・・じゃなくて、情報提供から出版へとスムーズにことが運ぶのも、は
っきりいえば彼我の情報量の差、要するに出版社側の情報不足です。
前にこのメルマガでも書きましたが(第23号)、ビジネス書編集部では、海外まで企画探しに出かける余裕はありませんし、上のほうに行けば行くほど語学に堪能なのはいませんので、結果エージェントに有利な展開となるのです。
情報の質と量などという以前に、ことばがわからないのだから話になりません。もう言いなりです。
編集部に企画力がないというのは、結局のところ情報不足が原因です。
出版社を訪問すれば、なんか情報に溢れているように見えますが、実際溢れているのは在庫ばかりで、個々の編集者の情報力は案外貧弱なことが多い。
ま、古巣の悪口を言ってもここでは何の意味もありませんので、視点を変えましょう。
■編集者は著者の情報に頼る
ことは、国内にあっても似たようなものです。
インターネットで情報が採れると思っているうちは、編集者など素人同然。
情報力のない編集者は、結局のところ翻訳でエージェントに頼るのと同様、著者から情報を得るしかありません。
となれば、著者がもたらす情報はより淵源に近い、河上に遡ったものであることが望ましい。
著者の情報源も編集者と同じ日経新聞では、信頼を得ることは難しいと思います。
編集者があなたを強力な情報源と認めれば、もう相手は自家薬籠中のもの。海外翻訳もののエージェント同様、編集者は意のままです。
よっぽど返品の山を築かない限り、信頼関係はめったなことでは壊れません。
雑誌や業界紙、専門誌からの拾ったディープな企画ネタを提案することは、駆け出しの編集者にとってあまりピンと来ないわかりにくいものかもしれませんが、提案の際、あるいは面談の折、企画の背景と今後のビジネス界への影響に関して、掘り下げて話してあげれば、企画自体の運命はともかく、ひとりのシンパ編集者をつくることができます。
そうしてお付き合いを重ねていけば、きっと遠からず良い結果がもたらされます。
■まとめ
売れている本から企画を探すのと違い、雑誌からネタを拾うのは進取の気風が薄い出版社を相手にするときは不向きかもしれません。
対して先行本をパクるのはリスクが少なく、どんな不器用な編集者にも理解できます。
しかし、あまりにもみんなでパクり合っているものですから、行き詰ってしまっているのでしょうね。
その挙句に今度は翻訳ものでババ引かされて・・・。
なんかお気の毒な版元さんもお見かけいたします。
企画は歳時記的リターナブルなものから、隙間を突くもの、まったく新しいものと範囲に制限はありません。
明らかなのはわかりやすいものが求められているということで、テーマも切り口も無限です。
とはいえ折々の版元の事情により、歳時記的なものが受け入れられやすかったり、新しいものを求めたりと編集部の好みは変化します。
たいていは前期の業績によりますが、そのへんの傾向は出版傾向のみならず、書店での営業POPやウェッブサイト、求人広告などさまざまなところに表れてきます。
各出版社の企画の好み、その傾向と対策についてはまた次回。
お楽しみに。
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