■快気祝い
おはようございます。
本田泰輔です。
今回の「樋笠インタビュー」のゲスト、栗本唯さん(念のため断っておきますが男性です)は、私もよく存じているかたで、夏前に身体を壊されしばらく療養されておりました。
よく働く人で、しょっちゅう深夜にメールをもらいました。「ミナミにおる」とか、「いまジュウソウ」とか、若い女性と楽しそうに写っている写メールだったので、女子社員研修だったのだと思います。
深夜まで笑顔のロールプレイングをやっていたのでしょうか。厳しい仕事への取り組みに、何を考えてるのだろうと思いました。
そんな過酷な忙しさが原因なのか、入院されたときには「今生の別れ」か、これは一度顔を見に行かなければと思っていたのですが、今年の夏の暑さに気後れしている内に、大阪に行った帰りに寄ろうと思っていた名古屋の環境博も終ってしまったので、いよいよ大阪まで行く動機を失い、今日に至ってしまいました。
栗本さん、すいません。ご無事で退院されなによりでございます。
そのうち行きます。
では、本編です。
■入院から見事に復帰!
樋笠:栗本さん、退院おめでとうございます。すっかりお元気そうで安心しました!
栗本:まだ週に何回か通院していますが、仕事には戻っていますよ。以前のようにフル稼働している訳じゃないんですが、まぁ、ぼちぼちと今までのお客さんのフォローなどやらせてもらっています。ご心配なく。
樋笠:さて、今日は出版のエピソードをお聞きしたくて。栗本さんはデビュー以来、3冊の出版に成功されていますね。傍から見てますと、非常に順調に見えるんですが。
■はじめはわずか10分で断られて・・・
栗本:いや、全然スムーズじゃないですよ。最初はよーし、本を出すぞと決めて、20社位に電話して企画書を送ったんです。すると「東京に来る用事があったら寄ってください」と言われて。用もないのにわざわざ、そのためだけに新幹線に乗って、麹町にある出版社へ喜び勇んで訪ねていったんです。
すると・・・「これは企画書の体をなしていない」と、面談時間は、わずか10分でした。
樋笠:えっ!剣もほろろ、じゃないですか・・・。
栗本:はい、その通りです。売り込み先の出版社も、自分の本棚にある出版社をピックアップして。企画書もまったくの手作りで売り込んだんですが、さっぱりうまくいかず、正直、落ち込みましたね。
ひょっとして自分には一生、本を出すなんて無理なんじゃないか・・・ってい思いも頭をよぎりましたし。
樋笠:それは意外でしたね。栗本さんだったら、用意周到に仕掛けたんじゃないかと思っていました。
栗本:でも諦めずに、いろんな出版社と会って、アドバイスをもらいながら、企画書も3回、4回と、書き直しました。それでようやくゴーサインをもらったという感じです。かなり苦労しました。
正直なところ、企画書の書き方は、出版社の編集者さんに教えてもらったという感じでしょうか。他の人の企画書を見せてもらって、夢中で書き写したりして。いまから考えると恥ずかしいんですが、最初は自分のメルマガをプリントしたのをホッチキスで留めて、これが企画書だって言ってましたから。
■時流に乗ってデビュー決定!
樋笠:なるほど。試行錯誤しながら、かなり時間をかけてこられたんですね。それで、デビューの決定は?
栗本:ご縁があった「あさ出版」さんの社長に見て戴いて、まぁ、まだ若いしがんばりなさい、っていうノリで評価してもらって、何回か会っていくうちに決まりました。
デビュー作の『もっと儲かりまっせ。―カネなし、ヒトなし、技術なしで小さな会社が「日本一」儲ける本』(2003年3月)は、実は3作のうちで、いちばん売れている本なんです。いまでもアマゾンなんかでは、じわじわと売れ続けていますし。
自分の本は、3人の子供じゃないですけど、みんなそれぞれ思い入れがあるんです。それでもこのデビュー作は、一番、印象が深いですね・・・。書き方自体は、最新作のほうが洗練されていますけど、一作目がドロ臭い感じで一番好きって、言って下さる方もいます。
樋笠:いまから振り返ってみると、どういった点が評価されたのでしょうね?ご自身ではどうお考えですか。
栗本:たまたまのタイミングや時流もあったと思いますが。当時、ちょうど神田昌典さんの本がフォレスト出版でブレイクしていて、どの出版社も中小企業向けの、軽いタッチの、やわらかい経営の本が書ける著者を探していたんだと思います。
同時期に、金森くんや、岡崎太郎さんや、栢野さんも、立て続けにでた頃だと思いますし。インターネットやメルマガとからめて、中小企業はどんどん儲けていきましょう、っていうポジションの本ですね。それまではビジネス書っていうと、小難しい本が多かったですから、ちょうど良いタイミングだったのかも知れません。
■出版効果は、ボディブローのように効いてくる
樋笠:なるほど。出版デビューを果たして、その効果や反響はいかがでしたか?
栗本:確かに、直接読者の方がお客様になったり、そこからの仕事依頼もあったんですが。実感としては、じわじわと、ボディブローのように効いてきた感じですね。出版したからといって、一夜で印税長者になるわけないですし(笑)、仕事が殺到するでもないですが。
それでも出版してから、自然に人脈というか著者の仲間も増えました。そこから色んな情報が入ってきます。また出版をマーケティングに応用するという視点でも、ノウハウとして、とても得るものが大きかったと思っています。
樋笠:栗本さん、人脈も幅広いというか、顔が広いですしね。2作目の『儲けはもっと増える―月の粗利が300万円アップする「ネット販促大作戦」 』(2004年3月)は、同じくあさ出版さんですが。スムーズに決まったんですかね?
栗本:他の方もそうだと思うんですが、人間関係ができてからは、茶飲み話の延長で、「それ、面白いね〜」っていうノリで、すんなり企画が決まりました。
第3作目の『成約率を3倍に伸ばす新規開拓の極意―これだけやれば、もう門前払いされない!』(2005年1月)は、いろいろな出版社の方との繋がりができた中で、同文館出版の編集者の方が大阪に訪ねてこられて、とんとん拍子で出版が決まりましたし。
いちどデビューすると、けっこうスムーズに進むようになるんですが、正直な話、2作目、3作目となると、どこか日常生活の一部みたいになって、最初の感動は薄れてきますね。ちょっと寂しいですが。
■そして、次々と韓国デビュー!?
樋笠:なるほど。3冊も出すと、そんな感じなんですね。ところであの本棚にずらっと並んでいる、ハングル語の本は・・・?
栗本:あぁ、これは『もっと儲かりまっせ』の韓国翻訳版なんです。
樋笠:えっ!?見せてください・・・何て書いてあるのか、全然わかりませんね(苦笑)。この栗本唯っていう漢字だけ、読めますけど・・・。
栗本:このタイトル、何て書いてあると思います?じつは、『トヨタと戦って勝つ戦略』っていう意味なんです。そんなの絶対ムリですって!そんなこと、一言も書いてないですし(笑)。向こうの版元が勝手につけたんですけどね。
樋笠:栗本さんは、元々、三星(サムスン)グループにいましたし、韓国の社員とハングル語で、電話でケンカしてたそうですね。。グローバルデビュー、すごいじゃないですか!韓流ブームもすっかり定着した感がありますし。ある意味、第二の故郷に錦を飾った、みたいな心境でしょうかね。
栗本:韓国にいる友人たちには「買って読め!」ってメールしておきました。実はつい最近、『成約率を3倍に伸ばす新規開拓の極意』も、韓国での出版契約が決まったんです。まあ、印税はお小遣い程度ですが・・・。
■田舎のコンサルタントで一生を終わらないために
樋笠:では、そろそろ、これから出版デビューを目指す読者のみなさんにアドバイスをお願いしたいんですが。
栗本:コンサルタントとして大成していくためには、書くことと、話すことができないとダメって、よく言われますよね。この商売は、はっきり言って、誰でもなれますし、参入障壁もムチャクチャ低いですから、いかに自分を売っていくかを考えると、出版してメジャーになる以外に道はないんですね。
田舎のコンサルタントで、日当5万円の仕事を細々とやっていたくなければ、絶対に本を出すべきだと、個人的には思います。
樋笠:メジャーを目指すには、やはり出版は避けて通れない道なんですね。
栗本:ただし、簡単じゃないと思いますよ。いまは著書の売り込みもすごく増えてきていますし、正直、ビジネス書自体も、なかなか売れなくなってきていると実感しています。飽きられてきたんですね。
ですから、既存のモノにない切り口や、新しいテーマが求められていると思います。思いつきで企画書を送っても、そう簡単に出版できるほど、版元も甘くないですから。
ただ、時々、勘違いをしている人がいて、メルマガやブログなんかをシコシコと書いてりゃ、出版社の目にとまって向こうから声をかけてくるだろうと・・・。はっきり言って、めちゃくちゃ甘い考えですね。幻想といいますか。
待ってても、来ないですって!そんな幸運な人はほんの一握りの特別な人です。やはり、出版社に受け入れられる企画をしっかり考えて、きちんとした企画書を作って、戦略的に売り込みを仕掛けていかないと、ダメでしょうね。
ただ完璧主義で慎重すぎてもダメで、とにかく待っていては何も始まりません。どんどん行動に移していってください。みなさん、がんばってくださいね!
樋笠:栗本さん、色々と丁寧に教えてくださって、ありがとうございました。来年には、また新しい切り口で出版される構想も進んでいらっしゃるとのこと。楽しみにしています!
■まとめ
再び本多です。
栗本さんは、以前から割合文章には長けているほうでしたね。自信もあったんだと思います。
第一作のときも、各社に企画を売り込んでいることを私が知ったのは、あさ出版にわたりをつけた後でした。私では当てにならないと思われたのかもしれませんが、思いついたら即実行という人ですから、まずやってみたのでしょう。
結果は、インタビューのとおりだったわけですが、最終的に一年たたないうちに出版に至ったのですから、それがよかったわけです。
案ずるより産むが易し、あるいは叩けよさらば開かれんです。まあ、とにかく栗本さんが社会復帰されたのはよかった、ということで今回は終りましょう。
次回は、YES、NOクイズver2.「あなたを待っている出版社」で楽しんでください。
お楽しみに。
…………………………………………………………………………
◆◇今週のおすすめビジネス書◇◆
【成約率を3倍に伸ばす新規開拓の極意―これだけやれば、もう門前払いされない!】
著者:栗本 唯 出版社:同文館出版 価格:¥1575 円 (税込)