■師走直前
おはようございます。
本多泰輔です。
いつの間にやら、今年ももうあと一ヶ月です。
忘年会で忙しい季節がまたやってきます。
組織に所属していたときに較べれば、行きたくない席には行かなくてすむので、昨年から宴会回数は随分減りましたが、この時期スケジュールに忘年会の印がないと、なんとなく世間から隔離されているようで、寂しい気がします。
なので、つい頼まれもしないのに、自分から宴席をセットしたりしてしまいます。悪しき習慣は、身に染みついていまだ抜けません。
ところで、もうひとつ余談ですが、先週からやっとブログを始めました。題して「本多らんど」。
鈴鹿にあるビッグネームと同じでは、申し訳ないので「らんど」はひらがなにいたしました。地味〜な画面ですので、あまり見に来なくていいです(と、乙女のように含羞う中年男)。
ウェッブ上に設定してから、一行目を書き込むまでに一週間を要しました。もう少しマシな写真をトップに持ってきたかったんですが、結局見つからず「もう、これでもいいや」と思い切るのに一週間ほどかかりました。
自分でもあんまり面白くねえなあと思うのは、やはり文章量が少ないせいでしょうか。どうすりゃ面白くなるものかと、いまも思案しながら書いています。
原稿の第一行目を埋めるのに何ヶ月もかかる著者の気持ちが、ちょっとわかった気がします。
さて、今回はちょっとした表現の工夫で、企画書や文章をブラッシュアップするってえお話ですが、実はけっこうむずかしい。
丹念に説明すると却ってややこしくなるので、誤解を招きかねない単純さにノックダウンしてご説明いたします。
■修飾語の効果
ある人の原稿の一部ですが、無断で文例として使わせてもらいます。
「革新的な事業、システム、商品を開発して社会貢献する・・・」
「共感・支持される経営理念と、社員がワクワクして参画できるビジョンを・・・」
上記2行は、プロット、あるいは、見出しとしては、ことばに気合が入っていてけっこうですね。
それぞれはどういうことを云ってるのかわかりませんが、表現の迫力で、なんとなく「いいことが書いてありそう」に見えます。
「事業、システム、商品を開発して社会貢献する」だけなら、当たり前じゃん、となりますが、“革新的な”という修飾語がつくことで、他とは違う何かがあるのか、とちょっと期待が膨らみます。
2行目も「共感・支持される」と「社員がワクワク」というのが効いてますね。なにやらオリジナリティが感じられます。
小見出しとしては長すぎますが、最近のビジネス書の目次としては十分許容範囲です。企画書につけるプロット(仮目次)には、この程度の飾り文句はどんどん活用しましょう。
出版企画書は、文字に色をつけたり、表紙のデザインや飾りの写真をつける以上にことばに磨きをかけたほうが効果的です。
なにしろ単行本の出版社は、文章が商品ですから、その感度は色よりも文言のほうを指向します。
細かなことですが、企画書のプロットは、ちょっとくどいくらい力を込めてつくったほうがよいと思います。印象は大分違います。
■本文は力まずに
実は、上記2行はどちらも、企業が成長するための力をどうやって蓄えるか、つまり経営戦略について書かれた文章の一部です。
一応、他人の原稿だから褒めることから入りましたが、こういう力んだ表現は本文中に多用すると、とてもわかりにくい文章になってしまいます。
ことばの迫力に引っ張られて、文章として何をいいたいのか、ピントが曖昧になりがちです。
こうした熱意と迫力あふれる表現は、経営コンサルタントのかたが好んで文中に多用する傾向があります。
経営コンサルタントの文章の特徴ともいえます。
いかにわかりにくいかは、全文を引用すればいいのですが、さすがにそこまではできませんので、譬えを引いて記すことにします。
すなわち、上半身に力が入りすぎて、下半身が動いていない相撲。
・・・これもわかりにくいでしょうか。
著者としては、気持ちがこもってますから迫力ある表現をどうしても多用したいのですが、結果「革新的な事業、システム、商品を開発して社会貢献する」ことが目的なのか、手段なのかが不明瞭となり、雰囲気は伝わるのですが結論が明確ではありません。
本文は、見出しと反対にできる限り修飾語を削り落として組み立てると、思いのほかスムーズな文章となります。
上記の例でいうと「革新的な事業、システム、商品を開発して社会貢献する・・・」だと、一見それ自体が目的のように錯覚して、ここで終わってしまいかねないですが、
「事業、システム、商品を開発して社会に貢献する」
と書けば、すこし力が抜けて、これも経営戦略上の手段にすぎないことで、手段であればどうすれば上手くできるのか、説明を続けようという気になります。・・・なりませんか?
文言に入れ込み過ぎて文章が続かない。
長い原稿が書けないとお悩みのかたの中には、往々にして読者を置き去りにしたまま、自分の中だけで説明が終わっちゃっている場合が少なくないのではないかとお見受けいたします。
力みを抜いて書いてみると、文章の展開がスムーズになり、自然と解説を加えるべき項目が見えてきます。
どうしても、迫力ある表現を使いたいというかたは、1ページに1行くらいのペースに落として、書き込んでみることをお奨めします。
そのほうが気合を込めたその一文がいっそう輝きます。
あるいはその熱意の全てを見出しに集中してはいかがでしょうか。
■まとめ
「神は細部に宿る」と申しましたが、プロットや見出しに気合のこもった修飾語をつけることは、企画書の印象を高める、いわば細部に宿るのは「福の神」ですが、本文中に迫力を加えようとあれこれ形容句で飾り立てるのは、却って「貧乏神」を招きかねません。
そんなことで一度肩の力をすっきり抜いて原稿づくりに取りかかってみていただければと思います。