■話し方で始まった05年
おはようございます。
本多泰輔です。
私ごとですが、昭和33年龍星閣発行の石光眞清の3部作(ハードカバー、函入り)を手に入れました。これが47年前の本とは思えないくらい実にきれい。
倉庫の奥にずっと置かれていたのか、かなりよい家の書棚にあったのでしょう。しかも、一冊315円と当時の値段より安い。かなり得をした気分です。
さらにその後、地元の青空古書市で昭和35年東京都観光局発行の写真集を取得しました。これはけっこう高かったですが、首都高ができる前の日本橋や淀橋浄水場しかない新宿西口の写真など貴重です。
そうやって過去を振り返るのが好きな年齢になってしまいました。
そこで、今年を振り返ってみると、ビジネス書のベストセラーは「話し方」と「頭のよい」をキーワードにスタート。「個人情報保護法」も1月に出たときはパッとしませんでしたが、春先にブレイクしましたし、初夏の「新会社法」もまあまあでした。
郵政民有化選挙に沸いた夏場は、小泉首相の愛読書というのが一気にベストセラーへ駆け上がりました。
中盤から目立ったのが会計の本。そして株がヒートアップ。
そして、景気回復がいわれる中、いまはマーケティングがすこし伸び始めています。こうして見ると、自分で言うのもなんですが、一応ここで以前に言っていたテーマは大体当たりなんじゃないでしょうか。
市場の動きを見てから言ってるのだから、当たるのは当然なのですけど。
そんな05年もあと3週間。そこで、来年の売れ筋、ではなくて(編集部に対しての)ウケ筋を考察してみたいと思います。ま、何度もやっているテーマですけど。
■いまならマンション・住宅
マンション選び、マンション管理など、マンション業界ご出身のかたは、目下原稿執筆中でしょうね。
姉歯が悪いだの、住民がかわいそう、ヒューザーがどうの、総研がなんだ、と言っているのは今の内。やがて自分の住まいのことが心配になります。
これだけ世間の注目を集めている耐震強度問題ですから、我が家のことが気になるのはごく当然。どうすればいいのか、どこに頼めばいいのか、どういう助成補助がつくのか、改めて住宅新法についても注目が集まるでしょう。
マンションだけでなく、一般家屋でも耐震補強が意識されるかもしれません。出版すれば、ある程度売れるのは間違いありません。
まだ、出版社からオファーが来ていないかた、仮タイトルと略歴だけ書いて、どこの出版社編集部でもいいから早急にFAXしましょう。20社送れば10社からは連絡が来ます。
■マーケティング
今年は、というか、今年も、光文社新書はベストセラーを連打しました。企業会計の基本知識をさらりと説いた「さおだけ屋」も、いくらか翳りが見え始めたと思ったら「下流社会」というのを出しました。
心が傷つくタイトルなので読まなかったのですが、みんなが読んでいるので仕方なくこの前買いました。社会学の本かと思ってたら、マーケティングなんですね。
読者が、社会学的に読んでいるのか、マーケティングとして読んでいるのか、わかりませんが、匂いは堺屋太一の『知価革命』です。ということは、マーケティングなのでしょう。
ちなみに『知価革命』はバブルの始まりのころに出た本です。
営業の本は、不景気でも出ますが、マーケティングは景気の好調なとき以外売れたことはありません。ランチェスターみたいな不景気対応型のものもありますが、概ね経済の調子いいとき、あるいはITバブルのような特定業界の好業績を背景にします。
景気回復が本物なら、マーケティングは来年のテーマでしょう。
『下流社会』は、その前兆と見ています。
また、パブリックリレーションの白眉『生協の白石さん』も、今日的マーケティングを求める読者に受け入れられているものと思います。読者の求めているのは、100年前の理論ではなく、いまのマーケティングですね。
■本格的な高齢者市場
2007年、定年退職者の数は500万とかいわれています。
その前後数年間を合算すると、約1000万人。
退職金総額は60兆円〜70兆円、さらに高齢者の親は“超”高齢者ですから、平均寿命からいってほぼリーチ状態。
その遺産が270兆、加えてこの世代、本人の金融資産が170兆、〆てざっと500兆円。日本の年間GDP並みです。
国内企業も外資も、振り込め詐欺も、このお金を虎視眈々とねらっているわけです。いまのところ堅気の企業は全員様子見で抜きん出たところはありません。
退職後どういう途を選ぶのか。
再就職か、ボランティアか、完全リタイアか、退職後の生き方もテーマですし、また“ちょい働き”のような中間の選択もありますが、これといってマジョリティは形成しておりません。
しかし、結局は再就職か“ちょい働き”か、いずれにせよ社会参加ということになろうと思います。なにしろ税収がありませんから。
2007年問題は、テーマとはいわれておりますが、年金問題と絡み、来年辺りから本格的な動きが出てくるのだろうと思います。どこが一番先に手をつけるでしょうか。日経でしょうか。東経でしょうか。それともFグループからでしょうか。
高齢者のライフスタイル・職業観とともに、ちかごろ渡哲也主演のテレビドラマで話題の熟年離婚もちょっと深刻なテーマです。法改正により離婚後も妻に年金の半分が入るようになりますから、定年と共に棄てられるかもしれません。退職金の半分と年金の半分を持っていかれて。
■平成の大合併その後
是非はともかく多くの市町村が合併をいたしました。
ちいさな市町村は、人数も少ないのでこれまで大したマネジメントも職員教育もしてきませんでした。大型化した行政のマネジメントは、いま民間を模倣しようとしています。
ま、それはそうでしょう。役所には人事院型の教育システムしかありませんから、効率的マネジメントは民間をモデルとするほかありません。
結果、いままでマネジメント教育にノータッチだった小規模自治体でも、いまや大型自治体として職員全体にマネジメント思想を浸透させなければなりませんので、産能大や日能、NOMAは大忙しです。いま、自治体の教育をやっている人でヒマな人はいません。ギャラは安いですが。
一方、企業の採用の急増により、これまであまり重視してこなかった人材育成にも光が当たるようになる・・・、かもしれません。
どこまで重視されるかは、自信を持っていえませんが、長引く不況によりいままで空白だったテーマ「リーダーシップ」やマネジメントの基本など、幹部教育、社員教育もの、賃金、就業規則など、本来のビジネス書も官民双方の需要で、復活するのではないかと考えております。
若手社員自己啓発ものも引き続き堅調でしょう。
■その他
日本では、総融資額の一割を政府系金融が占めます。欧米先進国では2〜3%ですから、その水準に持っていこうというのが統合のひとつのゴールでしょう。
つまり、総融資額の7〜8%が民間に移るということですので、影響が小さいはずはありません。でも、やるっていうんだからやるんでしょう。
銀行取引のない会社は、ほぼないわけですから、どういうことになるのか、このあたりも関心はあろうと思います。といっても実際に取引先まで影響が出るのはだいぶ先ですから、来年ブレイクする確率は低いかと思います。
出版社としては話題性があるから受け入れるかもしれません。
株。株の本は、やはりまだまだしばらくは続くでしょう。新刊ラッシュですね。ただ、ダイヤモンドが新たに出した「四季報」が、どこまで売れるか、そのへんが株の本の「踊り場」かもしれません。
昨年末から今年の半ばまで怒涛の売れ行きを示した「話し方」は、それを求める状況に変化ありませんから、より広い範囲をカバーするからコミュニケーションへとテーマが変化すると見ております。前述の一般的ビジネス書のテーマに加わりますね。
その他、新会社法関係は3月あたりにもう一度出てくるでしょうが、今からではもう遅い。新消費税は、単に税率が上がるだけなら大したテーマにはなりませんが、その他改正事項があれば話題性はありますから、企画にはなると思います。
なんだかノストラダムスか細木数子みたいになってしまいました。あと、なんか忘れているような気もしますが、スペースがなくなってきたのでこのへんで。
思い出したら、またその折々に発表いたします。
ではまた来週(来週はトップインタビューです)。
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