■もういくつ寝るとお正月
今年最後の出版メルマガ「コンサル出版!」です。
今年は、中盤までは政治の季節で真夏の郵政民営化選挙で自民党が歴史的大勝利を治め、終盤になってからは、耐震偽装問題やみずほ証券のご発注など、業界注目の事件が連続しました。
コンプランアイスもへったくれもない、前者のニュースの間に、松下のファンヒータートラブルに対するCMが流れると「やっぱり松下はきちんとした会社なんだなあ」とことの本末を忘れ、そう思ってしまいます。
おはようございます。
本多泰輔です。
新年は1月10日からになりますので、来年も引き続きよろしくお願いいたします。
掉尾を飾るテーマは何にしようかと、いろいろ考えましたが、やはり定番「ビジネス書出版界の今年を振り返って」10大ニュース…ではページが膨らんでしまいますので、最後くらいは短めに5大ニュースでまとめようと思います。
どちらさまもよろしいでしょうか。
・・・反対の声が聞こえないようなので、「ビジネス書出版界5大ニュース」早速参りたいと思います。まずは、第5位からです。
■第5位・・・【有力出版社の新規参入】
昨年から続いている傾向で、恐らく来年はもっと多くの大手版元が参入してくると思います。
今年目立ったのは、やはり光文社。3年ほど前にペーパーバックを出してビジネス系に参入してきましたが、今年は新書でした。
会計の入門書『さお竹屋はなぜ潰れないのか』、マーケティングがテーマの『下流社会』、どちらも一見ビジネス書とはわかりにくいですが、光文社のビジネス新書を押し上げています。
来年は、光文社の親筋も参入を企てているとのうわさもあり、業界はますます競争激化です。
そのほか、資本の関係で既存ビジネス書版元を傘下に入れた徳間書店、バリバリの文芸書出版社だった河出書房新社、実用書の老舗、成美堂出版など、えっ?と思うような版元が続々とビジネス書業界に参入してきました。
こうした状況は、著者から見ればチャンスが増えるわけですので、歓迎していいのではないかと思います
■第4位・・・【新商流の拡大】
本は書店で、という鉄壁の流通ルートに変化が起きています。ひとつは、ネット書店の広がり。もうひとつは、コンビニルートです。
なかでも、規模という点で圧倒的な数を持つコンビニは、特定の種類の本では大きな影響を持つようになってきました。
コンビニに行けば、必ず雑誌の横にコミック単行本、その脇、またはコミックの下のほうにペーパーバックの単行本、ないし文庫が置いてありますね。コンビニによっては、大判のMOOKまで置いてあります。
ペーパーバックの単行本は、明らかにコンビニ販売を意識したもので、コンビニルートのためにつくっています。ビジネス系では青春出版の500円均一のペーパーバックがよく目につきますね。PHPや三笠の文庫もよく見ます。
文庫はもともと発行部数が大きいのですが、書店とコンビニで販売するとなると、初版で軽く5万部を越えてしまいます。
1点あたり2〜3万部の配本をするルートを軽い扱いはできません。コンビニルートは、文庫とペーパーバックを中心に確実に扱い量を拡大させています。
いまのところ、ビジネス書といえどもコンビニで売れるものと書店で売れるものは違うというところまでしかわかっていませんが、ある程度傾向がつかめれば、ここが大きな流通ルートになるとともに、対コンビニ企画という切り口も発生することは間違いありません。
ま、このナレッジは現在コンビニとコンビニにルートを持っている一部出版社の中だけに蓄えられているのですが。
■第3位・・・【勝ち組と負け組】
さすがにあんまり書けませんので、例の各グループごとに目立ったところを挙げることにします。
<Aグループ>
株式市場の好況で、『会社四季報』が絶好調の東洋経済新報社は、とりあえず「勝ち組」でしょう。日本経済新聞社も『日経会社情報』が同様です。
さらに単行本では年初のベストセラー『個人情報保護法』が大当たり、その他実務中心の地味目なビジネス書らしいテーマをそろえ始めました。
<Bグループ>
文庫・新書でベストセラーを出したPHPも、一応「勝ち組」というところかと。
販売戦略を棚回転・持久型から、平積み・瞬発力型に改めた日本実業は、まだその成果を見極めるところまでは行っていないようです。
<Cグループ>
自己啓発書は、昨年までのようなテーマとしての勢いはあまりなかったですね。でも、昨年末から春先まで文庫でベストを走っていた三笠書房は、やはり「勝ち」でしょうか。
また、自己啓発とは違い株の本で当てた大和出版も「優勢勝ち」。このグループには「大負け」はいません。
<Dグループ>
かんき出版が、わりあい手堅い企画で着実に得点を挙げていたように思います。ビッグヒットこそないですが、中堅ビジネス書版元らしい外れの少ない本づくりをしています。
他は、書店で動きのよい本、ベストセラーに既刊の類書をぶつけて、何とかしのいでいるというところでしょうか。
<Eグループ>
このへんの各社は、みなさん去年より今年という具合に少しずつ伸びてますから、総じて「優勢勝ち」かと思いますが、中でも株のラインナップが豊富なすばる舎はよかったんじゃないかと。
すばる舎には、一応このメルマガの読者がおられるらしいのでおもねってみました。
Fグループはわかりません。
■第2位・・・【ベストセラーの小型化】
ベストセラーのボリュームが小さくなったわけではありません。
判形が小さくなったのです。
『個人情報保護法』(日本経済新聞社)
『話す力が面白いほどつく本』(三笠知的生き方文庫)
『さお竹屋はなぜ潰れないのか』(光文社新書)
『頭のよい人悪い人の話しかた』(PHP新書)
『下流社会』(光文社新書)
・・・など、みんな新書か文庫です。
『個人情報保護法』は新書ではないのですが、新書サイズの単行本でした。ビジネス書ではありませんが、『靖国問題』(ちくま新書)も新書でした。
小説のベストセラーは単行本で出ていますが、ビジネス書や社会科学系のベストセラーはみんな判形が小さくなってしまいました。
■第1位・・・???
栄えある今年の5大ニュース第1位はこの「出版メルマガの創刊」です。
なにをド厚かましいことを言うかとお怒りの諸兄へ、確かに自分で言わなきゃ誰も言わないという悲しい現実を見越しているのは情けない根性でありますが、このメルマガが創刊されなければ、こうしてお目にかかることができなかったのもまた事実。
ひとつ今年の笑い納めということでお見逃しください。
思えば今年の1月に、何の準備もしていなかったところへ「月末からやりますから」という発行者の連絡。
苦肉の策の創刊号の出版適性クイズ、とりあえずその辺にいる出版者の連中に話を聞いて回り、なんとかあつらえた第2号、意外に好意的な反響があったりして、やってる本人も結構面白くなってきたので、毎週の発行もさして苦ではありませんでした。
爾来、読者は増えもせず減りもせずで、当初の目標の半分程度の少数安定で漂っております。
変に急増すると思わぬ陥穽に遭遇したりしますから、安定した読者がいることは、小心者の本多にとってはもっとも快適な状態です。
おかげさまで、大過なく年末までやって来れました。これもひとえに毎週欠かさず見ていただいている読者(がいると信じ)のみなさまと、多分ほとんど内容をチェックしていない発行者のおかげです。