■今年の決算在庫は・・・
おはようございます。本多泰輔です。
ライブドアに司直の手が入ったと思ったら、あれよあれよという間に社長以下幹部が逮捕されてしまいました。
しっかし、世間も手のひらを返しますね。いまや過去に遡って悪事を指摘する報道バラエティ。そんなテレビを見ながら悪いこと知ってたんなら、もっと前から追及しろよ!と叫ぶ私。はっきりいってヒマな光景です。
だいたい逮捕されたからってクロとは限らない。私の友人には何回逮捕されても実刑になったことは一度もない剛の者がいます。
ライブドアの株価に貢献したのは、出版界より圧倒的にテレビのバラエティ番組です。視聴率と株価、お互いの利益が一致したんでしょうが、逮捕のときまで特番組んじゃって・・・。各局は小菅に差し入れくらいするべきでしょう。
ま、そんなことはどうでもよい。次にヒルズから小菅に行く人はだれなのか関心はありますけど、ここはそういうメルマガじゃありません。
でも、一連のホリエ本はさすがにもう売れないでしょうから、3月決算のときに断裁される本は例年に増して多くなるな。ダンボールの値段、少しは下がるでしょうか。
■ヒモ付きってなあに
「ヒモ付き」出版という用語は出版界にありません。
協力出版とか協同広告というようなことばも、各社が勝手に言っているだけです。「ヒモ付き」というほうが、協力出版というより少し怪しげな感じが出るし、ヒモの先に誰かがいてなにかを企んでいる雰囲気もするので、本多は好んで使っております。
ヒモ付き出版の概要は、以前ブックセールス、バイブル商法について書いたときに触れておりますので重複いたしますが、もう一度さらっとお話します。
まず、出版社が著者に印税ないし原稿料を支払い、出版社のリスクで出版するのが普通の出版です。これに異存のあるかたはいないでしょう。
いや、いままで何冊も本を出したが、一度として印税などもらったことがない、それどころかいつも制作費を出していた、というかたがいましたらこの先は読まなくてもよいので大至急本多に電話ください。次の出版のご相談をしましょう。
次に、なんらかの事情で出版社の負うべきリスクを著者なり第三者なりが負担(多くは分担)する形態を私はヒモ付きと称しておるのですが、ヒモの先を握っているかたも何のメリットもなく資金負担するはずがありません。
自社の株価を吊り上げたり、住宅・マンションの販促をねらったり、健康食品を売ろうと思ったり、アタマがよくなる(らしい)メソッドの会員にしようしたり、という企図があります。
ブラックな香り豊かな喩えばかり出してしまいましたが、これらは本の形をとっているものの、実際は単なる広告宣伝に過ぎません。
コンサルタント会社が自社のPRをねらった出版をしても、効果のほどはまちまちにせよマーケティングのメディアとして、ひとつの選択肢であることは確かです。本もPR媒体として十分機能します。
ゆえにヒモ付き出版が成立します。
そしてヒモ付きも常に著者に負担を強いるものでもありません。
企画には制限がありませんので、無償のヒモ付きもあります。正規の出版契約で企業の宣伝をしているようなものも珍しくありません。
トヨタ本、キヤノン本などがそうですね。出版社が一方的に貢いでいるようなものです。
それでもごく一部の大手が版元だとトヨタ、キヤノンといえども相応の見返りを用意します。
できれば印税ももらってPRしてくれるほうがいいのですが、そのためには実力だけでなくかなりの運が必要です。とりあえず近所の神社には明日からお参りしましょう。
■出版社の事情
世の中にはヒモ付きを中心に出版をしている会社があります。大体そういうところは著者を相手に「本を出しませんか」という営業を熱心にやっておりますからすぐわかります。
ついでに申しますと、世の中にヒモ付きをやっていない出版社はひとつもありません。これは大根を置いてない八百屋はひとつもないというのと同じくらい確かです。
ですから500万円も積めば、いかなる大手からでも出版することは可能です。本にならないテーマであれば修正されるかもしれませんが、前科でもない限り大丈夫です。
ただし、500万円の宣伝広告費をこの出版一本にかけて十分採算が取れそうかどうか、そこは呻吟熟慮しますよね。特にコンサルタントの場合、小資本ですし売上もそう巨額ではない。
ですから普通やりません。
50万円ならやる、という人はいるかもしれません。
でもやめたほうがいいです。
「50万円でもやります」という版元から出したのでは、出版効果はありません(講談社がそう言うなら別ですが)。
はっきり言って50万円程度でリターンはありません。
500万円損するより50万円捨てるほうがいい、という発想は根本が間違い。損するくらいならやらないほうがいいです。
その予算なら別のPR手段を考えるべきでしょう。
■それでも出版するなら
普通の出版を目指すなら、企画書持って版元に営業をかける、断られても断られても次から次へと提案し続ける、という当たり前の手法しかありません。
このメルマガもほんのすこ〜〜〜〜しは役に立つでしょうが、読んでるだけではゴールは近づきません。やっぱりアクションです。
じゃあ、ヒモ付きはまったくナンセンスかというと、それがそうでもないケースもあります。
いまを去ること20年前、研修・セミナー・講演で大層実績のあるコンサルタントがおりました。年間稼働日200日以上、年収数千万円のバリバリ売れっ子講師ですが著書がない。
袖すりあうも他生の縁で以前から知己を得ておりました本多は、ある日相談を受けました。
「やっぱり本のひとつもないとかっこがよくないので、本を出したい。でも、書く時間もないし原稿ごとひっくるめてやってくれないか。相応の予算は出す」
と当時でも重みのある金額を提示してくれました。
ほぼどこの版元でも出版OKになる数字です。
そういうことなら異存はない、善は急げと社内で早速構成案を組み、みなじみのライターを付けて約2ヵ月後に件の先生の著書が出来上がりとなりました。今思ってもこれは早かった。
この本自体は、まあ不発・・・というところだったのですが、付けたライターが優秀で(本多ではありません)著書は他の出版社の目にとまるところとなり、結局その後他の数社で合計30冊くらい出したんじゃないでしょうか。
もちろん本人は書いていません。
全部かのライターが代筆しています。
それでも30冊すべていわゆる普通の出版でしたし、大半が大手で、しかもベストセラーが2本ありましたから、ライターに原稿料を払っても印税だけで十分初期投資の元はとれた、銀行に預けておくよ利回りはよかったそうです。
当初の目的であった著書は30冊以上になりましたし、マーケティングとしては成功でした。
■版元はひとつじゃない
このケースで言いたいことは二つです。
1、ひとつの出版実績は2冊目以降の出版に貢献する、実績は力
2、ヒモ付き本を出した版元から2冊目以降の出版はしない
1はなんとなくわかりますね。他のことでも当てはまりますから。
2はどうして?と思われるかもしれません。
人間やっぱり都合のいいことは、いつまでも都合のよいままでいて欲しいというのが業なんでしょうかねえ。集団となるとそうしたちいさな心の動きが、組織の意思となって顕在化します。
一度ヒモ付きでやっていただいた著者の場合、どんなに本が売れたとしても、その版元では次もヒモ付きを期待します。
そうした期待を乗り越えるというか、打ち破るのはなかなか難しい。編集長以下全員の顔に「期待してます」書いてありますから。
ここで四の五の言うよりも、さっさと条件のよい次の版元へ移るほうが物的心的エネルギー効率の上で遥かによろしい。
本多とその先生の付き合いがまだ続いているのは、あのときお互いが第2作目にこだわらなかったからだと思います。
あちらも忙しいし、こちらもヒモ付きばかりやってるわけじゃない、こんなのは神様がくれた贈り物くらいに思ってますから、そもそも2作目は考えていませんでした。
本が出てから3ヶ月くらいたって「今度○×社から出すよ」という電話をもらって「大手じゃないですか。うちから出した甲斐がありましたね」とかなんとか言ったような記憶があります。
■まとめ
ヒモ付きに協力した著者にしてみれば、2回目以降に前回よりは条件を良くしてくれという気持ちがありますよね。一方、版元にはいつもおいしい話を持ってきて欲しいという厚かましい欲があります。
冷静に見れば著者に軍配を上げたいところですが、そもそも揉め事に発展しやすい話ですから、だいたい2回目以降の企画はまとまることがありません。
本多の体験では、ヒモ付きを3回続けた人は一人だけです。よほど出版の効果があったんでしょう。他社でも出版していたのですが「本多のところから出したい」と来てくれました。
ヒモ付きとは違いますが、知り合いの著者には毎年何回か版元の広告に協力をしている人がいます。これは企画会議の段階ではなんの影響力も発揮しませんが、出版社との人間関係は良好になります。
重版しようかどうしようかというオンザエッジの際、効果を発揮するでしょう。
いずれにしましてもヒモ付き出版は、ひとつのブレークスルーにはなりますが、費用に見合う効果があるかを見極めることが鍵です。
安い高いは効果次第、安いだけなら今は30万円くらいで自費出版が可能です。
自らのマーケティングに投資するなら、期待効果と投資のバランスを考えたほうがよろしいかと思います。
ではまた来週。
|