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第053号 『雑誌執筆と単行本出版、どっちが得か』

■あれから一年


おはようございます。
本多泰輔です。

先般50号を越えたと喜んでおりましたら、今号で創刊1周年となりました。

まあ、ある意味勝手に連載しているメルマがですから、続けていれば5年でも10年でも越えられるでしょうが、それなりに感慨があるものです。

第1号をカタカタ打ち込んでいたのは、東京都新宿区内の某所(歌舞伎町ではありません)でした。その後しばらくやさぐれて、豊島区内某所でまたカタカタ、そういえば夏場は群馬県内山中でした。

一年待ってもついに出てこなかった原稿、一年過ぎてもなお立ち上がらないビジネス、一年もたなかった会社(すべて私のことではありません)、たった一年間にいろいろありました。

私事はともかく社会的には注目の出来事が多かった一年でした。去年の今頃はライブドアのニッポン放送買収ですか。このメルマガが社会ネタだったら書くことに苦労しなかったと思います。

それでもあえて路地裏の古書店のような本メルマガを覗きに来てくださる読者がおられる限り、ネタは枯れ脱水症状となっても続けてまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。


■著者にとっての雑誌


雑誌といってもクオリティ・マガジンや発行部数50万部を越えるようなメジャーな雑誌で執筆することは、テレビに出るようなものですから社会的影響力も断然大きい。

こうした雑誌に連載、または執筆することは単行本を出版するよりもハードルが高く難しいのは明らかです。むしろ単行本が大ベストセラーになってから検討すべきです。

ここでは、専門誌・業界誌といわれる小部数・マイナーな雑誌執筆を考えてみます。

考えてみるといっても、以前に何度か触れたテーマですので重複を避けるため話を飛躍させます。

単行本と較べ専門誌・業界誌のほうが、著者にとって有利な点を挙げてみます。


(1)自分の専門、あるいは詳しい業界のことがテーマなので執筆しやすい
 
…説明は要りませんね。どんな業界にも業界誌(または紙)はあるし、いかなる分野でも専門誌(または紙)があります。


(2)基本的に原稿量(原稿料も)が少ないので短時間で仕上げられる
 
…業界誌・専門誌は雑誌の値段が高い割りにページに厚みがありません。執筆する原稿も400字詰め20枚、多くても50枚程度がほとんどです。


(3)掲載のチャンスが多い

…多くは月刊誌ですから年間12回発行のうちにスキ間ができる可能性はかなり大きい。単行本の場合、一冊分の原稿を送られてもとても読む余裕がありませんが、雑誌の場合、原稿20枚ばかり送りつけておいても、大した量ではありませんので編集者もさっさと目を通すことができます。


(4)他誌への広がりのきっかけとなるし顧客とのパイプにもなる
 
…業界誌・専門誌は割合メジャーな媒体の編集者や記者がネタ探しによく見ております。マイナー誌同士もけっこう他誌が気になりますから、出版関係者の目に触れるチャンスは意外と多いといえます。

顧客とのパイプはいわずもがなですが、業界誌はマイナーといえどもその業界の人々が読んでいますから、コンサルティングにつながるチャンスとなります。


不利な点。


(1)書店売りが少ない
   
…業界誌・専門誌で書店売りされているものもありますが、やはりその影響力は小さく多くは直販です。


(2)箔をつけるに至らない

…狭い領域の雑誌ゆえ、だれに見せても尊敬されるというわけにはいきません。その点単行本のほうが「本」という共通概念がある分有利です。

では、マイナーな雑誌連載と超マイナーな出版社の単行本とを較べたらどうか。・・・どうでしょうね。自費出版よりはいいでしょうけど。


(3)単行本編集者は見てない

…前段で他者の編集者がよく見ていると書きましたが、雑誌編集者と新聞記者は確かによく見ていますが、単行本編集者は他社の単行本とメジャー系の雑誌ばかりで、業界誌・専門誌はほとんど見ていません。

雑誌執筆を重ねるうちに単行本編集部からスカウトという夢は、多く夢のまま終ります。


■雑誌から単行本出版への途


雑誌は雑誌、出版は出版というのが偽らざる現実です。同じ出版社で雑誌と単行本を発行してるところはとても多いですが、実際のところ雑誌から単行本になるケースは意外に少ない。

それに業界誌・専門誌の発行元はたいてい雑誌だけをやっており、単行本の発行点数は年間で数えるほどしかありません。

では、出版を目指す著者にとっては雑誌をどう活用すればよいのか。
も少し考えてみましょう。

雑誌の効用としては以下の点でしょうか。


(1)執筆トレーニング
 
…短い原稿を数多く書くというのは、文章をまとめるうえでとてもよいトレーニングです。しかも些少とはいえ原稿料も入ります。

一挙両得のチャンスですのでこれは大いに有効活用しなければなりません。


(2)編集者との人間関係

…単行本編集者とはよほど運良く本が売れない限り、そう連続してお付き合いするものでもありません。一度きりのご縁ということは珍しくありません。

その点、雑誌は年に何回もお付き合いするチャンスがあるわけですので、自然関係が濃くなってきます。担当編集者が他社へ転職することもあるかもしれません(というよりかなりの確率で転職します)。

次の職場が単行本編集部(この確率は5分です)であればいきなりチャンスです。また、編集者が編集者を紹介してくれることもあります。


(3)企画の発掘

…今なにが求められているか。雑誌にとっても単行本にとっても最も重要なことですが、以前にも書いたようにビジネストレンドの動きは、まず業界誌・専門誌のほうに現れます。

結果、業界誌・専門誌の編集者のほうが、確かなトレンド情報を持っています。惜しむらくは網の幅が狭いので専門以外のことはまったくひっかかりません。それでもこうした先行指標をつかむことができれば、単行本の企画書のグレードもぐんと高くなろうというもの。

いかなる企画を立てようとも自由ですが、雑誌の担当編集には話しておいたほうがよいと思います。適切な追加情報が入るかもしれませんし、出版した後からわかったのでは人間関係がうまくありません。


■ヒモ付き雑誌記事


前回「ヒモ付き出版」のことをやりましたが、雑誌にもヒモ付きはあります。ヒモ付きしかやっていない単行本出版社があるように、年がら年中ヒモ付きをやっている雑誌だってあります。

前回も申し上げましたがヒモ付きが悪徳商法だといっているわけではありません。肝心なことは費用対効果およびコスト(著者にとってのリードタイム)の問題です。

とはいえ、雑誌の全号ヒモ付誌面で構成することは至難の業なので、年に何回か、あるいは誌面の所々で散発的にやっているようです。

雑誌の場合、はっきりとした広告スペースがありますからヒモ付きという場合は、タイアップ企画(記事)ということになります。

タイアップ企画(記事)は雑誌広告のバリエーションみたいなもので、どの媒体でもやっています。

有名タレントがなんの脈絡もなくあまり有名でない経営者と対談するなんて、ミエミエのタイアップもたま〜に見ることはありますが、普通はもう少し念が入って、さりげなく商品写真が入っていたり情報記事風につくられています。

タイアップの費用は、記事自体が有償の場合とそれ自体は有償ではないけれど、会社案内とか商品パンフレットなどの制作がセットされており、少し高めの制作費をとられるということもあります。

一種の偽装ですね。

テレビ局、なかでもローカル色の強い局は広報PR用のビデオの制作と取材をいっしょにやっていらっしゃるみたいですね。聞けば協力取材というんだそうで。

そういえばヒモ付きを協力出版と称している版元もありました。
どちらさんもいっしょです。

雑誌の担当者との人間関係のために、こうしたタイアップ企画にも年に一回くらいお付き合いしてあげることも大事だと思います。盆暮れのお中元よりは効きます。

担当者も内心あまりやりたくないのですが、やらなきゃならないサラリーマンのつらい事情があり、そんなときに救いの手を差し伸べてくれる著者は誠にありがたい存在です。

ただし、これまた前回も申し上げましたが、年中協力しているとそれが常態化してしまい感謝の念が薄れますので、年に一度、あるいは二年に一度くらいにしておきましょう。あらかじめ予算を決めておいてもいいかもしれません。


■まとめ


今年の冬は寒かったですね。といってもまだ厳冬のど真ん中、しばらく寒さに耐える日々が続きます。この2年間、夏暑く、冬寒いというメリハリの利いた気候だったと記憶しています。

夏が暑けりゃ冬寒いというのは、結果バランスはとれているんでしょうが、なかなか負担が大きい。

収入も安定していれば計画が立てやすいですから、やはり変化の差は小さいほうが生物には適しているようです。

変化といえば、本メルマガは創刊以来ほとんど読者数が変わっていない、とても変化の小さい媒体です。読者が増えていないとも言えますが、そういうと情けないので敢えてことばを替えております。

山高ければ谷深し、谷深ければ山高し、いま谷底を這っているのか斜面を登っているのかわかりませんが、とりあえず高い山目指してこれからも頑張ります。

ではまた来週。

 

    《編集後記》
 

専門誌など、マイナー雑誌の執筆は、おすすめしたいです。最近は自分でホームページやブログを開設されているコンサルタントが多くいらっしゃいますので、そこに再掲(引用)するだけで、記事としての主張を読んでいただくチャンスになりますし、自らの信用力の補完になると思います。このへんが自前のメルマガやホームページで書くこととの違いでしょう。

1周年の区切り、これからもご購読よろしくお願い致します。それから、発行部数が変化ナシ、というのは本当です。よろしかったらぜひお知り合いにもお勧めください〜!(発行者:樋笠)


※出版を目指している方に「出版業界の裏事情を知りたければ、
これを読んでみれば?」と一言添えて以下をコピペするだけです!
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出版プロデューサー/本多 泰輔(ほんだ たいすけ)

プロデューサー・本多泰輔氏は、ビジネス出版社(版元)で20数年の経験をもつベテラン編集者から、出版支援プロデューサーに転身した人物です。その考え方について詳しく知りたい方は、本多氏編集のメールマガジン『コンサル出版フォーラム!本はあなたをメジャーにする』のバックナンバーをご一読下さい。








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