おはようございます。
本多泰輔です。
ここのところ続く不祥事事件の当事者は、なぜかみなさん出版経験をお持ちですねえ。正直な会見とベタな反省演技で非難を浴びている某ホテルチェーンの社長もやはりしっかり出してました。
目利きの版元は日本評論社とたま出版。
某ホテルチェーンではきっと大量購入したと思いますが、版元の性格からして始めから「ひも付き」ではなかったでしょう。
それともあのスピリッチュアル専門のたま出版ですらPR企画に走ったのでしょうか。まあ、どっちでもいいですけど。
あと防衛施設庁の人が何か出版でもしていれば、4点セットと出版の関係はパーフェクトですが、いくらなんでもそれはないでしょう。
それにしても、グレーなお金をたくさんつかんだ人は本を出すという流れを世間は知ってしまいました。本を出すとあらぬ疑いをかけられ、非難がましい目で見られかねないという世の中になったら困りますね。
それでも出版しますか?
■見かけは大事
「人は見かけで決まる」そうです。
シンクタンクに勤めるただのサラリーマンが、どういう巡り合わせかテレビでコメントすることになり、1回数秒、合計1分くらいニュース番組に出演いたしました。オンエア翌日、何人かから「見たよ」という報告と感想が届きました。
一番多かった感想は「ネクタイの色が変だった」
二番目が「額がテカッてた」
あまりに次元の低い感想に憤慨して、当日話したコメントについて何かないのかと聞くと
「そうだ。しゃべりがなまってた」
発言内容に言及するコメントは、現在に至るまで一切ないとのことです。彼は最近まで
「ネクタイのセンスが良くて、なまりがなければレギュラーコメンテーターになれていたかもしれない」
と真剣に悔やんでいました。
ことほど左様に人の印象は、視覚(見た目)と聴覚(声とかしゃべり方)に支配されます。ですから第一印象は見た目で決まるといっても過言ではありません。
名刺を受け取るまでITコンサルタントかF1レーサーかわからないという風体ではいけません。編集者にもボンクラはおりますが、ボンクラにもそうとわからせるのがプロです。
「私はITコンサルタントである」と全身で主張しましょう。
編集者も人間ですから、初対面で見るからにその専門性や玄人らしさをうかがわせる物腰の著者にはついつい圧倒されます。編集者は案外見かけに弱いのです。
■編集はコンサルタントを見分ける
出版社にはいろんな人が来ます。
著者、デザイナー、イラストレーター、外編、印刷屋さん。
一口に著者と言ってもいわゆる著述業・作家などのプロであったり、本業は経営者やサラリーマンの人あったり、主婦であったりします。
ビジネス書であれば、もちろんコンサルタントであることも多いです。
余談ですが、本多は顔を知らない人と待ち合わせしても、相手がコンサルタントであればまず人違いをすることはありません。
携帯のない時代のこと、待ち合わせ場所のホテルロビーあるいは喫茶店などで、人を探している様子の人に当たりをつけるわけですが、コンサルタントと一般人は見分けがつきますので、これと思った人に声をかければ百発百中でした。
そこにいる人がコンサルタントばかりだったら混乱しますが、世の中そんなにコンサルタントはたくさんおりません。
コンサルタントかどうかは見ればわかります。
ビジネス書の世界で5年〜7年もやっていれば大体そうなります。
また余談ですが、編集者もすぐわかります。
遡ること17年前、私が飯田橋のとある喫茶店でさぼろうとふらっと店に入りましたら、突然「週刊○△の××さんですか」と某新聞社系の雑誌編集者と間違えられたことがあります。
相手も明らかにそれとわかる記者風体。そのときまで私は「自分は普通のサラリーマンにしか見えないだろう」と信じていましたが、いつの間にかそんな風に見られるようになっていたとは。
相手が善人か悪人かは皆目わかりませんが、この二つの職業は手に取るようにわかります。
ただ、最近は携帯で相手を確認できるので、こうした勘が落ちてきているように感じられます。
■見た目と企画書
編集者にとって、目の前の著者が企画のテーマを十分書けるかどうかが見た目のポイントです。
「定年後の充実した人生設計」などというテーマを30代の人間が書けるとは普通思いませんし、「ITなんとか」というテーマであれば、やはり50代以上の著者は不利です。
本当は書けるのかもしれませんが、こういうところにも見た目の先入観が強く影響します。
前段で申し上げたように、出版社には色々な人が出入りします。ビジネス書版元の場合、作家や学者・研究者というのは稀で、多くは実業家・実務家・コンサルタント、あとはいわゆるライターです。
ライターにも専門分野を持って評論家と称している人もいますが、この種の人独特の軽さがあり、すぐわかります。ライターは書くことに関してはプロであり、編集にとっては同業に近い存在なので、持って来る企画に関しても一応の信頼があります。
ですから、雑誌なり何なりに書いた過去の実績を持って、ライターっぽいかっこうで行けば、面倒な導入部分を省略し、すぐ本論には入れるかもしれません。
ライターっぽいとは、なんかだらしない、風采が上がらない、あるいは妙に若づくりした親父だなあと思われる、要するに貫禄がない姿かたちです。
編集者には、コンサルタントはライターなどよりずっと専門性が深く、実務に精通している、という先入観(誤解かもしれませんが)が抜きがたくあります。
その深い専門性と実務への造詣ゆえ、多少原稿がひどくてもやむなしとしているのです。ですから、この編集の先入観を上手く押さえれば、コンサルタントとして見るからにその分野の専門家という印象を与えることは、何かとことを有利に運びます。
顔の良し悪し、ヒゲのあるなし、髪のあるなしは関係ありません。
ただし、歯のあるなしは重要です。
歯が欠けていては顔が締りませんので、入れ歯でも差し歯でもその場限りでもいいので、空白はふさいでおきましょう。
見た目に自信のある人は、とにかく企画書に多くを書き過ぎないこと。
簡潔な企画書だとなにが書いてあるのかよくわかりませんが、編集者は「わからん自分が無知なのかもしれない」と不安になって、強く出られないという可能性があります。書き過ぎてボロが出るより確率の上で有利です。
私もよく
「こんな立派な人がつくった企画書がどうしてこんなに・・・なんだろう」
と不思議に思うことがありました。
■まとめ
専門にもいろいろあります。
実際、ファッション関係の専門家と工場の製造畑の専門家ではまったく見かけが異なります。その違いは一言で言えば派手と地味。
製造畑だからといって作業服で現れる必要ありません。
実際、打合せのときはたいていみなさんスーツですから、装いにそう大きな違いはありません。スーツの安い高いは、ほとんどの編集者には関心のないことなので高級品であることも必要ありません。
企画に不安はあっても、自分のやってきた仕事に対しては揺るぎない自信があることを表情と振る舞いで示してください。
見かけとは心の有り様です。
これまでの経験を信じ、実績を信じ、未来を信じて対面すれば、企画・テーマはどうあれ、編集者にあなたの実力はきっと伝わります。
しかし、見かけといえば、盲導犬や介護犬はどうしてあんなに賢そうな顔をしているのでしょうか。同じ犬種でもその辺のバカ犬とは明らかに見た目が違います。不思議です。
ではまた来週。
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