おはようございます。
本多泰輔です。
今回は「ひまネタ」です。
「ガセネタ」ということばが一気に市民権を得てしまいました。「ネタ」とは本来情報という意味ではなく、テキヤさんの業界用語で販売する品物のことです。
「ネタ」とはタネをひっくり返したもの。タネとはタネ銭ということばが示すとおり金を増やす資本、テキヤさんは露天商ですので資本イコール商品ですから商品がタネです。いつの間にかネタというと情報という風になってしまいました。
ちなみに「ガセ」も出所は同じだと思いますが、語源はわかりません。真贋のがんと偽物のにせを合わせて「ガセ」とでも言ったのでしょうか。
そして「ひまネタ」とは不要不急なテーマのことです。
さて、世間ではデフレ脱却、景気回復と盛んに喧伝をしていますが、出版界は今期も業績低迷、いまだ回復には至らないようです。
株もの関係の出版社はおおむね良好だったみたいですが、ハリーポッターのような大物もありませんでしたし、売れたのが文庫と新書ばかりでは出版界全体としては儲かろうはずもありません。
雑誌も広告収入が今ひとつ回復していませんし、コンビニ、ネット書店もまだミニ市場で読者の拡大にはほど遠い状態です。相変わらず渋〜い状況が続く出版界、せめてパチンコ業界の10分の1でも儲かれば、新人著者の本も気前良く出すのでしょうが。
なにか業界が諸手を上げて歓迎する新機軸はないのでしょうかということでちょっと考えてみたのがこれ。
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■文芸の世界のビジネステーマ
文芸とビジネスの融合、ビジネスをテーマに小説を書く、というアイデア。つまり『ザ・ゴール』のような作品です。例えば『上司が鬼にならねば・・・』という幹部教育の本には、多数のケーススタディがありました。
マネジメント教育では、ケーススタディは一般的な手法です。このケーススタディの部分を拡大して物語化し、全体としてマネジメント教育小説に仕上げる。どうでしょう。やる人はいませんか。
かつて研修ビデオがこの方法で何本も出しましたが、ヒットしたのは「てんびんの詩」だけでした。この種のものは物語がチープだと見向きもされません。キーマンはディレクター、すなわち編集者です。
ビジネス書を小説で著そうということは、すなわち相手とする出版社をビジネス書専門版元から講談社、新潮社、小学館、集英社など総合出版社にねらいを移すことを意味します。ビジネス書には小説というジャンルはありませんし、小説の編集が出来る人間もおりません。
『ザ・ゴール』はダイヤモンド社ですが、翻訳だからできたこと、山田真哉著『女子大生会計士の事件簿』は日本実業出版社ですが、小説としては半端ですし光文社新書に取られてしまいました。ビジネス書版元で小説を出すのはユニクロで野菜を売るようなものです。野菜を売るならはやっぱり八百屋です。一日の長があります。
ビジネス書の版元に持ち込んでも埒があかないというかたは、小説つくって文芸書の版元に持ち込んでみてはいかがでしょう。小説には決められた形はありませんので、論文は下手でも小説は上手に書けるかもしれません。図解小説というのも新鮮です。
こちらもいきなり単行本というのは、ハードな業ですので雑誌レベルに寄稿するという方法論で、うまく編集者と交流を持つことが出来れば新たな発見と展望が開けるかもしれません。
昭和40年代、黒岩重吾、城山三郎の登場で経済小説というジャンルが生まれました。とはいえ、主たるテーマは「乗っ取り」や「疑獄事件」、大物経営者の評伝で、ビジネス書のテーマ、リーダーシップなどは時代小説「徳川家康」などを教材としていました。
戦国武将を教材にするのは今に至るも変わっていない深層底流です。最近はNHK「プロジェクトX」のおかげか、現場の課長レベルのリーダーを主人公にしたビジネス小説もだいぶ見かけますし、映画にもなっています。
小説にしても映画にしてもコミックにしても、人物ドラマ部分がメインで『ザ・ゴール』のようにシステムの改善に至る道筋がメインテーマに置かれることは日本ではまだ稀です。
あなたがその草分けになるのです。ビジネス(あるいは文芸に)書に新風を吹き込む第2の城山三郎を目指して、さあ執筆にかかりましょう。
■ライター集団の野望
出版支援サイトを検索していますと、よく「専門ライター集団、いつでもどこでもどんなテーマでも、最適のライターを派遣」というような惹句を目にします。出版社に対してのPRともとれるし、代筆いたしますと売り込んでいるようにも見えます。
フリーライターというのは、今般「堀江メール」で、はからずも世間の耳目を集めてしまいましたが、もともと資格を要する仕事ではありません。コンサルタントといっしょで名刺に書き込めばその瞬間から「フリーライター」です。名刺がなくても自称フリーライターという人もたくさんいます。
ブラックな世界だけで生きている事件屋さんも、表向きはフリージャーナリストまたはフリーライターという名称を使っています。こうしたジャーナリスト・ライターは、書いた文章が一度も世間の目に触れることなく職業人生を全うする場合もあります。
書いた原稿を発表しないことで暮らしている人もいる、まことに不思議な業界です。ライターというのは、基本的に字が書ければだれでもライターです。
ライター集団というのは編集プロダクションにくっついてあちこちに存在します。
複数の集団に所属する人も多く実態は不透明です。新聞・雑誌記者OB、業界記者の集まりなどは普通ですが、主婦、フリーターが集まっているライター集団もあります。
集団のレベルも主宰者次第でこれまたピンキリですが、ライターは氏素性より仕事の出来で判断すればいいことで、ここでは著者サイドから見たその活用方法について考えてみます。
出版活動をある程度計画的に安定的に継続しようと目論んでいるかたにとっては、事情に精通したライターと組むことは決して余計な出費ではないと思います。
気の利いたライターなら新たな企画も提案してくれますし、著者の知らない、経験のない分野を補う調査機能も持っています。
ライターをパートナーとして二人三脚で出版活動を進めている著者は実際に数多くいます。印税収入がすべての生活の糧という作家でなければ(あるいは作家であっても)、専門ライターと組むという選択肢は悪い判断ではありません。
ライターと組む場合、テーマごとにライターを変えるということをやっているという人はほとんどいません。特定の人とコンビを組むのが普通です。
そして、ライター集団の活用法ですが、企画のたびにライター集団から人を探していたのでは、工程的にもコスト的にも大変ですので、ライター集団は最初に適性のある人を探す窓口として活用したほうがよいと思います。
集団のマネジメントをする側としては、毎回事務局を通してくれないと困るかもしれませんが、フリーライターはそもそも帰属意識の低い人たちですからその辺はライター個人のしきりに任せましょう。
一般にライターの費用というのは、取材込みで400字詰め原稿用紙一枚当たりいくらという風になります。いくらが相場かというと普通数千円です。
5千円以上というのは相当に名実共実力のある人です。
駆け出しで2千〜3千円くらい。
私、本多もフリーライターに属しますが、自称実力派なのでそのような価格帯におります。
■とにかく出版実績をつくるなら
自分の著書にスポンサーをつけるのも出版を有利に進めるための効果的な方法です。出版社も商売で本をつくっていますから、スポンサーがある程度購買に協力してくれるなら出版実現に大きな力となります。
本文中にスポンサー企業の事例を取り上げたり、著書のテーマを曲げない範囲で企業紹介をするとか、発行後社員教育用のテキストとして採用してもらう約束を取り付けるとか。身の回りにスポンサーになってくれそうな企業はないか、一度見回してみましょう。
コンサルタントのかたの中には、企業から「弊社のPRのためにぜひ先生に本を書いて欲しい」と言われて出版する人もいます。私が知る限りでも過去に何人かいましたし、多分いまでもいるでしょう。
小説家でも「わが社の創業者をテーマに作品を」という話が来るそうです。それで印税率が上がるわけではありませんが、初版の部数が大分ごっついものになりますので著者の収入も潤うのです。
スポンサーにするのなら、やはり顧問先、指導先が一番でしょうね。
「貴社製品の販促に本を出さんか。わしが書いたる!」と企画提案してみてはいかがでしょう。書くのが面倒ならライターもご紹介します。
■まとめ
ビジネス書に感動とドラマを持ち込みたいというのは、本当は私の個人的な願望です。
石川啄木の短歌や高村光太郎の詩にも仕事の哀歓は詠われているのですから、今日もっとビジネスを扱った作品が光輝を放ってもよかろうと思っております。でも、小説が上手い人はビジネスを知らず、ビジネスを知っている人は小説が下手というのが問題です。
ライターの活用は、以前にもここで書いたことがありました。
自らスポンサーを見つけて出版を進めるというのは、知り合いの著者がスポンサーを見つけて来て「どこかいい版元はないか」と相談があった、最近の出来事に由来しています。
これも趣旨は何度かこのメルマガに書きましたが、今回ちょっとだけ踏み込んでみました。なんとなくもっと大事なことがあったような気もしますが、再来週までには思い出すでしょうから、次々回をお楽しみにしてください。
「お楽しみに」は民主党代表が使ってからちっとも期待の持てない文句になってしまいましたが、本メルマガでは全幅の期待に応えられるよう今後も頑張ってまいります。
来週は樋笠トップの突撃インタビューですね。
これまたお楽しみに。
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