おはようございます。
本多泰輔です。
インサイダー疑惑が世間の注目を集める中、盗作騒ぎまでありました。あそこまで似てればどう見たってパクリじゃんと思うのですが、絵画の世界ではまた見解がちがうのでしょうか。
件の画伯は「スギ氏の作品をモデルに独自の作品を描いた」オマージュであるという話もしておられて、なんか強引な気もしますがオマージュか盗作かは、結局のところ出来上がった作品のレベル次第なんでしょうか。
芥川龍之介の「杜子春」を盗作だと言って騒ぐ人はいませんが、井伏鱒二の「黒い雨」は盗作疑惑がありました。無名の被爆体験者がほぼ同じような記録を残しているからです。それでも小説「黒い雨」は井伏鱒二の代表作として残りました。
多分、盗作疑惑の多くの部分は当たっていると思いますけれども、それで彼が「黒い雨」を書くことを断念し作品が世に出ないより、禁を侵して発表したことのほうを私は多とします。
画伯と違って井伏鱒二はこの件についてずっと寡黙を通しました。戦術だったのか、なにごとか胸に期するものがあったのかはわかりません。
大体盗んだものだから価値がないというなら、大英博物館の財宝資料はほとんど無価値ということになります。
もうひとつどうでもいい話題です。最近プロ野球中継の途中でメジャーリーグ情報がクリップされます。
どこの局かは申しませんが、「ヤンキース松井選手は怪我をしたので、自宅で本を読んでいる。いま読んでいる本は太宰治の『午後の曳航』だ」と自称松井選手と親しいメジャーリーグ通の男性キャスターが明言しておりました。
そりゃ太宰じゃなくて三島由紀夫だろ!と全国で何万人かがテレビに向って突っ込みをいれたことと思います。本当は松井選手、何を読んでいるのでしょう。
■持ち込み代行業
ネットの検索中、とある編集プロダクションが「あなたの企画受け付けます」と言ってるので、覗いてみると受け付けた企画書をあちこちの出版社に一斉に送りつけることやっているのですね。出版が実現したら印税の3割を手数料として取るそうです。
実績を見るともっぱら文芸関係が多いようでしたが、配信先リストには私の古巣の社名も載っていましたので、ジャンルに制限はないようです。そのエージェントの案内にも企画書はタイトルが重要と書いてありました。
受け取る側からすると企画が送られてくるのは、ありがたいことはありがたいですが、メールないしFAXでごそっと送られてきた場合、一応その場で目を通しますけど経験から言って何本も同時に来たらタイトル以外は見ないですね。
企画者の名前さえ確認しないと思います。そして一度見たら二度見ることめったにはありません。要するに一瞬の勝負です。
そういう点では郵送で送られてくるものは、間違いなくすぐには見ませんが、開いたときには同封の書類一式に目を通しますので、よくも悪くもしばらくは憶えています。
二週間以内なら企画者から電話をもらってもすぐわかりますので、そこから人間関係がスタートすることもあります。それでも会えないという話をよく聞きますが、私は時間がある限り積極的にお会いしましたから、同じようなビヘイビアーの編集はいまでもいるはずです。
時間をかけてでも編集者との人間関係を築こうとすれば、やはり後者のほうがお奨めです。もちろん何十社かに企画書を送って初めて出合いが訪れるわけですが。
でも、時間をかけるのは面倒だ、一瞬のチャンスにかけると割り切るなら前者のような持ち込み代行業者を活用するのもよいかもしれません。
■出版社のサイト
別に代行業者を使わなくても中小出版社では、企画受け付け用のウェッブサイトを持っておりますし、中には積極的に持ち込みを受け付けているところもあります。
代行業者だからといってすべての版元編集部直通のアドレスを持っているわけではありません。付き合いのないところには公開されているアドレスに送るしかないわけですので、総体的に見れば条件は業者も一般人とそう変わりありません。数で勝負するなら個人名でせっせと送ってもいいと思います。
それにしても競合する企画者、著者は多いと見込んでおかなければいけません。多くの中で抜きん出るためには企画そのものとその表現方法で差をつける意外ありません。
それも視認性の高いもの、ひと目でわかるものでなければいけません。やはり大見出し、タイトルは重要ですね。もうひとつ、広く門戸を開いている会社は自費出版を当てにしている場合もありますから一応心得ておいたほうがよいと思います。
大変すばらしい企画(または原稿)です。ぜひ本にしましょう。
と言うので喜んで会ったら
「ついては○○万円ほどご用意ください」
といわれるケースもけっこうあるようです。
「大変すばらしい企画(または原稿)です。ぜひ本にしましょう」
と言われたら素直にありがとうと感謝の意を述べ、その次に遠慮気味に「出版条件は・・・」と聞きましょう。自費出版系の出版社であれば「いくら請求されるかを聞いているんだな」と思い、さっそく商談に入ってくるでしょう。
一般の出版社であれば「印税のことを聞いてるな。けっこう渋いな」と思い、え〜とかう〜とか言いながら「まだ決められない」とか答えるはずです。実際印税率を決定するのは最後になるのが普通です。
前者の場合、商談が始まったら最後まで聞いてもいいですし、途中で飽きたら「自費出版は考えていません」と言えば終ります。自費出版も最近はいろんな形態がありますから、ひょっとすると適当な条件が提示されることもあるかもしれません。
後者の場合は「いえ、印税のことではないんです。出版までにやることを聞きたいと思いまして・・・」と心にもないことを告げて、とりあえず編集者を安心させてやりましょう。
その際間違っても「いえ、自費出版かと思いまして・・・」などと口にしてはいけません。編集でも商売っ気のある奴は「しめた。著者買いあるかも」と余計な色気を抱きかねません。
■企画の送り先
ともかく送りましょうとは言うものの、版元違いへいくら送ってもかえって良識を疑われる恐れがあります。一応、ビジネス書の企画書であれば送り先は、過去ビジネス書、あるいはそれに類するものを発行している出版社であることが望ましいところです。
小説や童話、俳句や短歌の本を出している文芸の版元に送ってもちょっと実現不可能です。つまりポプラ社や河出書房新社にビジネス書の企画を送ってもムダということです(河出はひょっとするとそうでもないかもしれませんが)。
総合出版社はとりあえずなんでもOKです。
しかし、企画書が編集部まで辿り着くことは芥川賞受賞より困難なことだと覚悟しておいてください。ここで話は翻ります。
文芸書の版元に送ってもムダと書きましたが、最近どこの版元もジャンルの拡大に大胆ですから、突然河出書房がビジネス書を出してくるかもしれません。いまや実用書の老舗、成美堂出版がビジネス書を文庫で出してきている時代、どこが新たに参入してくるかわかりません。
新規参入がタマ不足なのは当然、したがって大きなチャンスが見境なく送った版元から転がり込んでくる可能もあります。
ならば逆転の発想、良識を疑われることをものともせず、顰蹙覚悟なら見境なく送ってみるのも戦法かもしれませんね。メールで企画書を送るならコストの問題はありませんし。
昔エロ本いまパチンコ本とか、昔エロ本いまペット本とか、書道の専門書版元がクルマの雑誌を出したり(これはもう古い話)とか、あれよあれよと思う間に版元は変身してしまいます。
ましてまだビジネス書は魅力的なジャンルと思い参入したがっている版元は多いですから、どこでどんなチャンスがあるかわかりません。
■まとめ
本当は今回最近の売れ筋傾向について書こうと思ったのですが、ちょっと見た感じではあまり変化が見当たらなかったので、少し調べてから書くことにしました。
それにしても最近特に似たような本が目立ちます。はっきり言うと、山田真哉と樋口裕之の本しかないのか、という印象です。新たなスターの登場が望まれてしかたありません。
60歳以上人口が4000万人を超えているのに、ライフマネジメント関連の本はなぜ出てこないのでしょう。ああ不思議。
ではまた来週。
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