おはようございます。
本多泰輔です。
悲願のW杯予選リーグ突破!(一応、前回大会では突破してますが、世間の盛り上がりはこんな感じでした。ついこの間までW杯に出られるかどうかが注目の的だったのに、本当に人間の欲は尽きない)は、結局ブラジル戦の結果次第ということになってしまいました。
ブラジルに勝つしかないって・・・、引っ張りますね。
中継テレビ局は大喜びでしょうか。
それしてもテレビは視聴率を上げるためとはいえ、気持ちを送る応援をしましょう!とか江原啓之じゃあるまいし、妙にスピリチュアルモードで煽りますね。いつの間に旧陸軍みたいな精神主義になってしまったのでしょうか。
さて、株も下がり気味のこのごろ、唯一の頼みだった株本にもかげりがでてきそうです。ビジネス書業界も予選突破できるか、すこし雲行きが怪しくなり始めました。
では本編です。
■最初は企画書を送ってみるが・・・
樋笠:本日はよろしくお願いします。早速ですが、デビュー作が発売されましたね。いまの感想は?
【理詰めのトレンド予測 センスがなくてもヒットは作れる!】
森田:コンサルタントとしてのお墨付きをもらった感じでしょうか。僕のように流行予測を専門にしていると、普通の経営コンサルタントと違って、説明しないとわかりにくい。何ができて、何ができないのか。ちゃんと説明したかった。
だって流行を予測するなんて、いかにも怪しいじゃないですか。僕が逆の立場だったら「うさんくさいやつ」だなって思いますよ。眉唾もの、ですね(笑)。
例えば衣料品業界では、流行予測は、外れるという前提で業界の仕組みができていますから。
樋笠:なるほど。そういった意味では異端かもしれませんね。森田さんは流行予測の世界に入って、もう20年以上になるそうですけれど、出版の準備はいつ頃から?
森田:おととしの9月頃。本を書こうというオフ会があって、初めて企画書を人に見てもらいました。評価は、可もなく、不可もなく、でしょうか。それから出版塾の畑田さんに依頼して、11月頃に、出版社へ企画書を送りました。3社から反応がありました。
1社目は、話の段階でだめ。
2社目は、営業サイドからの反対があったらしくだめ。
3社目と、話がまとまって。それで一気に書き上げました。
樋笠:ようやく出版が決まったんですか?
森田:書きあがったのが5月で、なかなか進まず、初校が出たのが11月。量が多いだとか、書店で企画を見せたら反応が悪い、などいろいろ言われて、年明けになってこれはダメだな、と自分で判断しました。結局、あきらめて。小さな専門書系の出版社でした。
それから今年の2月、アップルシードさんへ持ち込んで。ダイヤモンド社に紹介してくれたんですが、断られて、結局それっきりになってしまいました。
■再度のチャレンジで、最高の出会い
樋笠:うーん、なかなか厳しいですね。それから、今回の出版社に決まるまで、どういう作戦だったんですか?
森田:以前、まだ送っていなかった出版社に、企画書を自分で送りました。その時に、3社から出版したいとの返事があったんですが、一番返事が早くて、一番興味をもってくれたのが、今回決まった秀和システムさん。3月に正式に決まりました。
評価されたポイントは、『理詰めのトレンド予測』という題名が良いといって下さったこと。理系の出版社だから相性が良かったのかもしれませんね。
タイトルに「理詰めの」と入れたのは、原稿を書いていた時期に、あるオフ会でお会いした山田真哉さんから「入れるべきだと」薦められたからです。きっかけは題名だったのですが、内容を読んだ秀和システムの方も「これは売れると思います」と評価してくれました。
樋笠:ようやく良い出会いがあったという感じですね。出版が決まったあとのプロセスは順調でしたか?
森田:ビックリする位、早かった!システマチックな仕事ぶりで、どんどんレイアウトが送られて、校正を送って、という具合に流れ作業でスムーズに進みました。同じ出版社でも、これほど違うのか・・・と驚きです。秀和さんとの出会いは、本当によかった。ツイていたと思います。
この本には、過去の流行を説明するために、たくさんの資料写真を準備したり、メーカーに許可を取ったり、かなり面倒な作業だったと思うんです。それもすべて秀和さんでやってもらました。
樋笠:さすがプロですね。手際良い仕事ぶりが、カッコいいです。この6月、発売されました。いまどういう気持ちですか?
森田:あっちにぶつかり、こっちにぶつかり、また引き返して違う道を行ったり、と2年近くかけてようやく実現しました。いま思うことは、力のある人ひとりに気に入ってもらえれば決まる、ということ。なんとなくいいという人が、たくさんいても仕方ないです。
■抽象論でなく「机上の実論」
樋笠:さて、この著書で書きたかったことを教えて下さい。
森田:自分が研究して知ったことは、みんなに知らせたいと思いました。読んだ人からは「ここまで書いていいの?」と言われた位、いろんなことを盛り込んだつもりです。この本は、ポケット図版シリーズの中の本なので1260円とリーズナブルですが、300ページ近くあるんですね。
抽象論でなく、右か、左か、答えのはっきり出る話しかしていないつもりです。そういった意味では、机上の空論でなく、調査や研究に裏付けられた「机上の実論」を伝えたかった。
デザインの話が一番結果が見えやすいのでそういう事例も多く入れましたが、その専門書ではありません。第4章の“同一視”と“対立視”や、第5章の“アリ型人間”と“キリギリス人間”、第6章の“束縛”と“自由”というように、抽象的概念のトレンドが一定の周期で現れる話は、あらゆる経営者やビジネスマンの参考になると思います。
■素人が本を出せるチャンスの時代
樋笠:なるほど。私もモノづくりの事業でないんですが、サービス業や、そういった業種を問わず、参考になりそうですね。では最後に、これから出版を志す方へのアドバイスをお願いできますでしょうか?
森田:本が売れない出版不況と言われながらも、本の発行点数は増え続けていると聞きます。儲からない場合は、品番を減らすのがビジネスの常識ですがそうなっていない。
つまり単純に不況ということでなく、出版業界がコンピュータ化が進んだことによって、損益分岐点が下がっていると思います。だから1点1点のリスクを減らして、次々と新しい著書を発行でいるようになっていると思う。
出版取次の寡占化や再販制度という面では社会主義ですが、その一方では、大小あらゆる出版社が自由競争を繰り広げており、どんどん新しい企画を探している。
たとえ発行点数が倍に増えたとしても、急に編集者の企画が倍になる訳ではないので、素人が本を書く環境としては、これまですごく良かったのではないでしょうか。今はまだ、チャンスは続いていると思います。
樋笠:なるほど。何度もチャレンジして、最後に納得のいく出版社と出会った森田さんのように、行動あるのみですね。本日は楽しいお話をありがとうございました!
■まとめ
再び本多です。
素人が本を書くチャンスが広がっている・・・かどうかはともかく、大体ベストセラーというのは新人著者の作品であることは多いです。
ベストセラーというのはこれまでにないテーマの本がほとんとですから、書く人もやはりこれまでにはいなかった人となります。
出版市場は結局去年も漸減でした。2兆3千億円は10年まえの規模に戻りました。10年前はAmazon.comはまだ日本にはなかったでしょうし、河出書房新社もまだビジネス書はやってなかったし、ハリーポッターもありませんでした。
その10年前と同じ規模になってしまったのです。売上が減って発行点数が増えたのは、残念ながら制作の効率が高まったわけではなく、文庫、新書のような低価格本が増えたせいです。
自費出版系版元も毎年5000点くらい出してますが、これが押し上げたというほどの数字ではありません。まあ、わずかな影響でしょう。ともかく出版は依然不況の中におります。
困窮にあえいでいる版元は実績のない著者を選ぶ勇気はありません。「いまならこういうテーマが売れます」というマーケティングの背景をきちんと示しながらでないと新人著者の企画はむずかしいと思います。
「私は私の好きなテーマを書きたい!」のであれば、ごく一部には景気のよいところもありますから、そのあたりを選んで交渉したほうがよいと思います。
ではまた来週。
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◆◇今週のおすすめビジネス書◇◆
【理詰めのトレンド予測 センスがなくてもヒットは作れる!】
著者:森田 洋一 出版社:秀和システム 価格:¥1,260(税込)
流行には「特定要因」と「循環要因」がある、「同一視」と「対立視」で流行を読む、家電、自動車業界の景気は予測できる、まったく同じ流行が起きない理由…。「はやり」「すたり」をとことん分析する一冊。
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《著者プロフィール》
森田 洋一(もりた よういち)
モード工学研究所 所長
1951年生まれ。流行予測、市場予測コンサルタント。流行ビジネスが感覚的な手法に頼っていることに疑問を持ち、流行予測の研究を始め、その成果をトレンド情報誌に発表。1982年、乗用車のデザイン史研究に参加し、大手自動車メーカーのデザイン室に調査方法や分析方法について助言する。研究成果を実際の車に適用、結果2車種がヒットする。1983年より流行予測の研究所に所属、メーカー、卸、小売店など幅広い業種において講演やコンサルティングを始める。流行予測における独自の理論を確立。1987年、モード工学研究所設立、研究成果を順次発表している。
《参考コラム》
『長生き商品の作り方』
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