おはようござます。
北朝鮮のミサイル実験とサッカーW杯の関係に密かに注目している本多泰輔です。
それにしても98年のときと較べると週刊誌は静かなもので、早々と話題は9月の総裁選や秋田の事件に戻ってしまいました。多分もう書くことがないのでしょう。今週は(なぜか)日経がスクープした「元宮内庁長官メモ」関連の記事が氾濫するのですかね。
98年当時は北朝鮮のしでかした事はそれほど多くの人々に知られていませんでしたから、次々と出てくるネタに「こんなひどい国があるのか」といちいち驚くことができましたが、もう世間が注目するほどの新ネタは出てこないのですかねえ。どうも結局「一人転び」の気配が感じられます。
ところで、光文社新書『企画書は一行』がところどころでベストに入っているようです。内容は糸井重里のコピー講座みたいなところもありますが、出版のみならず他業種でもやはり一行で企画趣旨を表現することがベストなんですな。
本書の肝は前書きに込められています。
前書きだけでも一読されてはいかがでしょうか。
では本編です。今回の樋笠インタビューは『SNSビジネス・ガイドweb2.0で変わる顧客マーケティングのルール』著者の伊藤靖氏です。
■大企業の社員だった頃、出版を決意。
樋笠:伊藤さん、本日はよろしくお願いします。これまで最新作の共著を含め、4冊の著書を出版されていますね。まずはきっかけから教えてください。
伊藤:もともと書くことが好きでした。最初に本を出したいと考えた頃は、大企業でプロジェクトマネージャーの仕事をしていたんですね。確かに安定した身分だったんですが自分の働き方を考えたとき、これからも大企業に依存していくよりも、自分の得意技や特徴を見つけて、たとえ独立しても生きていける力を身につけたいと思っていました。
自分で本を出すことも、そのきっかけになればと思って。それで当時、プロマネ系のセミナーで翔泳社の方と偶然知り合って、企画を売り込んで、実現しました。
【プロマネは見た!】(翔泳社 2004年12月)
この本は、自分が見て経験してきた大企業の官公庁向けプロジェクトが、いかにひどいものか、技術的な問題よりも人や組織の問題で失敗に至ったのか、をあからさまに書いた本です。
当然、当時いた大企業ではこんな本を出すのはご法度なので、転職してから出版したんですが(笑)。もちろん会社の実名は出していないんですが、見る人が見ればすぐわかりますし、「2ちゃんねる」ではこの内容について、けっこう叩かれましたね・・・。
しかし当時、プロジェクトの実態をあからさまに語った本はなかったので、批判はあるにせよ、日経コンピュータの書評にも取り上げられましたし、意義はあったと思っています。
■自分の書きたいことに固執しすぎない
樋笠:なるほど。デビュー作の出版がスムーズに決まった要因は、自己分析するといかがでしょうか?
伊藤:自分の書きたいものと、出版社が出したいものは、違うということが理解できたからでしょうね。周りを見ていると、自分の書きたいものに固執しすぎる人はだいたいダメだと感じます。またそういう人に限って、難しい内容の本を書きたがるようですね。
出版社側、ひいては読者側の市場ニーズに合わせていく努力が著者には必要だと思いました。
樋笠:それから第2作目が、転職に関する本ですね。
【エンジニア 35歳からの転職】(翔泳社 2005年3月)
伊藤:これも私自身の体験談です。自分で企画を売り込みました。35歳で転職は遅い、限界だ、それから転職回数が多いのはマイナス、とよく転職コンサルタントは言ってますが、それは実際に体験していない人の勝手な言い分じゃないかと私は思っていました。それで、同じような立場のエンジニアを元気づけたい気持ちで書いたのです。
樋笠:サブタイトルに「6回の転職で年収1000万(超)になったSEが語る」とあるのがちょっと目を引きますね。
伊藤:私は正直、年収のことは書きたくなかったんですが・・・。これも出版社側のニーズであり、売るための戦略ですから。
樋笠:それから3作目【完全まるわかり読本 ネット業界・企業】(翔泳社 2005年11月)を出版されて。
伊藤:これまでは自分をさらけ出して書いてきたので、今回はちょっとIT業界について、客観的に執筆してみました。この業界は歴史も浅く、また人脈をたどれば、だいたい知り合いや、昔の同僚に行きつくような小さな業界なんですよ、意外と。
改めて資料をチェックしながら書いてみると、一番実感するのが、その急成長ぶりですね。昔は小さな会社だったところが、驚くほどの事業規模になっています。
樋笠:そして最新作が、共著である『SNSビジネス・ガイド』ですね。
【SNSビジネス・ガイド web2.0で変わる顧客マーケティングのルール】(インプレスジャパン 2006年6月)
伊藤:これはWeb2.0時代のソーシャルメディアとしてのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を各分野で活躍する9人によって解説した共著です。
私が現在、在籍しているループス・コミュニケーションズの斉藤社長をはじめ、SNSの第一線で活躍する人が集まったので、自分としても今までとは違った世界を味わった気がしています。ちょうどコンサルタントとして活動している現在の仕事そのもののテーマですし、非常に面白い執筆でした。
■一冊で終わらずに、続けていくこと
樋笠:本当に良い機会でしたね。では最後に、これから出版を考えている読者のみなさんにアドバイスをお願いできますか。
伊藤:私はいま本を出しやすい環境にあり、チャンスがいっぱいあると感じています。ブログに代表されるように、自分を表現できるメディアもあれば、それこそSNSで新しい人脈やネットワークを広げるチャンスもあります。
ぜひ、何でもいいですから、自分自身を表現していくことを始めるべきだと思います。そしてだんだんと、本にするんだという意識で、あるテーマにフォーカスしていくべきじゃないでしょうか。
それから、本にする企画案を公募しているようなサービスもありますから、できるだけ出版を実現できるような情報に日ごろから接しておくのも大切だと思います。
最後は、あきらめないで、チャレンジし続けることでしょうね。私も今は仕事が忙しくて依頼を断っているような状態ですが、何とか今年中にはもう一冊出したいと考えています。
せっかく出版に成功しても、一冊で終わってしまう人も少なくないと聞きます。私はそれじゃもったいない、続けていくことが大事じゃないでしょうか。そう思います。
樋笠:伊藤さん、本日はお忙しい中、会社に押しかけてインタビューさせてもらって、ありがとうございました。
■まとめ
再び本多です。
2004年小学生が図書館で借りた本は調査を始めた74年の約6倍、86年度の約2倍で、過去最高だったそうです。
「全校一斉の『朝読書』など学校での読書指導強化が活字離れの食い止めに役立っているようだ」(文科省)。
つまり、いまの中高年が若いころ本を読まない、最低の読者層なのであって、今後は2倍、6倍と読書量は拡大していくということでしょうか。いまから30年後が楽しみです。人口は減ってますが。
ではまた来週。
………………………………………………………………………………
◆◇今週のおすすめビジネス書◇◆
【SNSビジネス・ガイド web2.0で変わる顧客マーケティングのルール】
著 者:斉藤 徹、伊藤 靖ほか(共著) 出版社:インプレスジャパン
価 格:¥2,310 (税込)
《出版社/著者からの内容紹介》
mixiやGREE、米MySpaceの普及で注目を浴びたソーシャルネットワーキングサービス(SNS)は、ここにきて急速にビジネス目的での活用が進んでいる。こうして企業が立ち上げたビジネスSNS(企業がビジネス目的で導入したSNS)の数は、すでに200を優に超える。「会員制」「紹介制」「クローズド」といったSNSならではの特徴を、企業はビジネスにどのように生かせるのだろうか?
そして、どのようなビジネスチャンスがあるのか? 「ウェブコンテンツがソーシャル化する」と囁かれるWeb 2.0時代のコミュニティビジネスの姿は……?
こうした問いに対して、本書はその解をSNSビジネスの第一線で活躍する業界トップランナーたちに求めた。SNSビジネスのプレイヤーたちが、その見解とアイディアを余すところなく述べた、書き下ろしWebビジネスガイド。
《内容「BOOK」データベースより》
本書では、ビジネスモデルの分析はもちろん、コミュニティ活性化のノウハウやマーケティングへの活用、イントラへの導入、そしてモバイルでのビジネス活用など、SNSによるビジネス展開を考えるうえで欠かせない、7つのテーマについて解説を試みた。
《著者プロフィール》
伊藤 靖氏/株式会社ループス・コミュニケーションズ エバンジェリスト
Web 2.0とSNS導入に関するコンサルティングを行うかたわら、執筆や講演でも活躍。ITmediaオルタナティブ・ブログで「おるたなてぃぶ思考+etc」を連載中。
|