おはようございます。
本多泰輔です。
そこはかとなく秋の訪れを感じる今日この頃。暑い暑いとさんざん迷惑そうにしてたくせに夏も終わりと思うとなぜか寂しい気持ちになります。
そんな心のスキをついて今回も出版メルマガをお送りいたします。
さて『プロ論』という一昨年の暮れに出た本がありました。リクルートの雑誌「B−ing」で連載されたものを一冊にまとめた本ですがなかなか売れたようです。
大昔、といっても25年位前ですけどタイトルの頭にやたらとプロと付けるのが流行りました。プロ管理者10の心得とかプロ課長、プロ店長、プロ経営者というのもありました。
そのころは大見得を切るとき、よく「われわれはプロですから」とか言ってました。ま、仕事でやってるわけですからプロには違いないのですが、プロというと何となく『一流』というイメージもついてくるので、はったりとしても通用したのでしょう。
最近の書店ではあまりみかけなくなりましたが、ときどき『プロ投資家』が現れて昔を思い出させてくれます。それにしてもプロ管理者というのはいかにも古式蒼然とした字面です。
いまなら1000万円店長、1500万円課長、1億円マネジャー、5億円経営者とかいうことになるんでしょうか。
プロというのは自分から申告しても許される一番高い番付で、「達人」とか「匠」ではいかにも大げさですし、自ら「達人」と称するような人物はかえっていかがわしさを覚え信用されません。
プロというのは使いやすいことばですね。
■講演のコツ
これも昔よく云われていたことですが「原稿を書ける人は話が下手で、話の上手い人は原稿が書けない」。
原稿とは文章、話とは講演のことです。実際そういう人はいました。本は何冊も書いているのに講演はあまりぱっとしない。何を言っているのかよくわからない。
その反対に講演では調子よくしゃべっているのに原稿では何が言いたいのか支離滅裂でさっぱりわからない。こういう人の原稿はほぼ毎日見ていました。
天は二物を与えずとはいうものの、同じ人間の頭の中で同じ言語の組み立てなのに、なぜ異なったクオリティのものが出てくるのか、実に不思議でした。
じゃあお前はどうなんだ、といわれるとつらいですけど、まあ、多分文章のほうがいくらかましでしょうが、話下手というわけでもありません。低レベルで同じようなもんなんじゃないでしょうか。
お話と文章の違いといえば、文章は考えながら書けますが、話は考えながらはできない。その代わりお話は文章ほど組み立てがシビアでないので、多少話が前後しても表情や音声で理解してもらえるという利点があります。
講演にはコツがあるそうです。
トリノオリンピックのフィギアスケート金メダリスト荒川静香選手は、講演のコツを次のように教わったといいます。
「結論から始めよ、短く区切れ、適当に間をとれ」
出典はどこかの新聞記事なのでだれが言ったかまでは書いてなかったのですが、このアドバイスをした人は「講演の達人」ですね。
■講演と文章は一緒
オリンピック金メダリストとして講演を頼まれることが飛躍的に増えた荒川選手ですが、もともとスケーターであって長時間人前で話すことなど経験がありませんでした。
1時間半もどうやって話せばいいのかと困っているところへアドバイザーから話のコツを教わり、その通りやってみると過不足なく時間内に話しきることができたそうです。
ビジネスセミナーでよくある講演の最後のほうになると「時間がなくなりましたのでこの後は省略させていただきます」という講師は、荒川静香選手の爪の垢でも煎じて飲んで欲しいものです。
「結論から始めよ、短く区切れ、適当に間をとれ」
これはそのまま文章のコツでもあります。この3つを心がけるだけで随分読みやすい文章になります。
講演でこの3つを守れば講師として十分活躍できるように、ビジネス書やその他の一般書であれば十分著者としてやっていけます。
つまり講演と文章は基本が一緒ということです。
やっぱりそうだったのですね。
講演の上手い人は文章も上手い(はず)、文書の上手い人は講演も上手い(はず)。
字は汚いとか声が小さいとかいう欠点は、いまや機械が補ってくれますから自信を持ってマイクの前ないしパソコンの前に臨んでください。
■名文を求める著者
ここまで読んでなにか物足りない気分を感じている人は、読者のうち約50人くらいはいるでしょう。
「文章ってたった3つのことを注意すればできるのか?」
釈然としないかたは次のことに拘泥があるからです、
書く以上は名文といわれる文章を書きたい。
出す以上は名著といわれる本を出したい。
「結論から始めよ、短く区切れ、適当に間をとれ」
この3つでは不十分なのは芸の世界です。
つまり落語、講談などの話芸の世界、そして文芸の世界です。一流の芸の世界では確かに3つのコツだけでやっていけるものではありません。
ところが講演に落語家並みの話芸があっても、ビジネス書の原稿に小説家並みの技巧があっても別に悪くはないですが、多くの場合読者や聴講者はそこまでを求めてはいません。
もっぱら情報やヒントを求めているのですから、語り口にそこまで技巧を凝らす必要はまずないと言っていいでしょう。少なくともビジネス書の編集は著者にそこまでの要求はしません。求めているのはせめてこの3つくらいです。
「結論から始めよ、短く区切れ、適当に間をとれ」
■技巧が大事なケース
それならなぜ前々回『さお竹屋は・・・』や『社長のベンツ・・・』などに見られる文章の技巧について書いたのだ、ということになりますので、技巧が大事となるケースを挙げておきます。
文章の技巧、表現の工夫が重要になるのは「いまさら珍しくない、類書もたくさんある基本中の基本のテーマ」について改めて記す場合です。
テーマそのものが新鮮なうち、あるいは見識がユニークであれば、編集も読者も著者に文章の技巧を求めたりはしません。
しかし類書が溢れ、かつては漫画にもした、図解もやりつくした、だけど基本だから内容は変わらない、同じ内容のものをどうやって読ませようか、という本は文章の技巧がわずかに残るブレイクスルーなのです。
それでもよくよく見てみれば、語り口と語る角度は目新しくても、『さお竹屋・・・』も『社長のベンツ・・・』も『千円札・・・』も文章自体は「結論から始めよ、短く区切れ、適当に間をとれ」の原則に当てはまっているのではないでしょうか。
つまり、ビジネス書ではいまだ文芸レベルの文章が求められる段階には至っておりません。
それでも名文、名著を求めるというかたの志をあえて止めることはいたしませんが、ビジネス書の世界は結果として名著はあっても名文はほぼありません。そういう世界です。
■まとめ
芸の世界とPCに打ち込むと最初に「ゲイの世界」と変換されてしまいます。
とある夏日の一日、知り合いの事務所が新宿御苑前にあり先日やぼ用で訪問したのですが、窓から御苑の緑が望めさらにもう一方には新都心のビル街が見えるという借景としては抜群の場所です。
用事を終え、そそくさと新宿西口へと向かっておりますとやがて控えめなお店がぽつぽつと並ぶ裏通りの一角へ。
道端で立ち話しているおじさんとあんちゃんの前を通り過ぎるとき、おじさんの嘗め回すようなちょっと気になる視線、改めて周囲を見回すと点在する店は、ゲイ風の明らかなマッチョなポスターをウィンドーに貼ったその筋のものばかり。
これが噂の「ゲイの世界」かと、しばし新都心新宿の奥深さに感嘆し、かつこういう多様な文化が集合する場所に事務所を構えている知り合いの現代文化に対する造詣の深さに感心いたしました。
全身を嘗め回すような視線というのは警察官の職業的視線でもあるのですが、まあ、あの風情は私服刑事というわけでもありますまい。
そのまま表通りへ出れば普段見慣れた新宿通り、いろんな世界があるものです。
そういうことで、ではまた来週。
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