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第084号 『企画書リアルサンプル版付:奥付の見かた、あれこれ』

嗚呼、ネタがない、ネタがない。
僕の前にはネタがない、僕の後にネタができる。

別にこのメルマガのことではありません。
各社編集長の心中を斟酌いたしました。

おはようございます。
本多泰輔です。

どこの会社でもというわけではありませんが、文庫に新書、単行本と三種類も出していたら、そりゃ企画も枯れますな。しかも毎月20点以上。

文庫本の企画は単行本から持って来ることもできますが、もはやそれだけでは間に合わず、文庫独自の企画も立てなければならないのが今日の出版事情です。

これはではネタ(企画)がない、ネタがないと困り果てるのも無理ありません。

そんな各出版社の窮状を救おうとコンサルジェントが新企画「あなたの企画書お預かりします」をぶち上げたのが先月のこと、この3週間で「みなさまからの企画書が陸続と集まってきている」と樋笠社長が言っておりました。

それで先週、ご参考までに企画書のフォーマット「シンプルなサンプル」をお示しいたしましたが、案の定「もっと具体的なものじゃないとわからない」というお声を頂戴いたしました。

読者のわがままに今さら驚く本多ではありません。
多分そう来るだろうと思って実はかねて用意しておりました。

前回の「シンプルなサンプル」をバージョンアップしました「企画書リアルサンプル」を今回ご披露いたします。まずはご覧ください。

→ http://www.consulgent.co.jp/pdf1/kikakusyo_sample.pdf


■企画書リアルサンプルの見かた


まずは大前提ですが、今回お示ししている「企画書リアルサンプル」の内容はすべて本多の創作ですので、真に受けることのないようお願いいたします。要するに中味はウソ八百ですからね。

見て欲しいのは書式と構成です。構成で大事なのは「何の本か」「どのくらい市場性(売れそうか)があるか」「何が特徴なのか」が、すぐにわかること。

創作ですからその辺はわざと誇張してあります。「何の本か」はタイトルを見ればわかる、というのが理想です。

それよりなにより、どれがタイトルなのか、すぐに見分けがつくよう書きわけることも大切です。

ま、別に彩色までする必要はありませんが。

「どのくらい市場性(売れそうか)があるか」。

出版社にとって最も注目すべきは、この本がどれだけ売れそうかですから、ここもきっちりアピールしておくべきです。本が売れそうな背景は、データで示すことができればベターです。出所の明らかな資料データが添付されていればなおけっこうというところです。

また、著者自信がセールス面でどのくらいの影響力を持っているのか、ブログやメルマガの読者数などもアピールポイントです。

「企画の特徴」は、タイトルでもわかりますが、それを担保するのが仮目次になります。仮目次とはいえ、できるだけ詳細について示すことが望まれます。サンプルでは一枚になっていますが、仮目次は枚数が多くなっても構いません。

仮目次を読み込むというときは、企画を本気で検討しているときですから、そこまで来れば編集者も枚数が多いからと労を厭うことはありません。

著者略歴は、企画にふさわしい著者であることをアピールすることが重要です。この著者の経歴ならこの企画は書けるだろうと編集者に納得させることを心がけましょう。

とまあ、こんなところでしょうか。締切りにはまだ間がありますので、渾身の企画をじゃんじゃんお送りください。お待ち申し上げております。


■奥付の話


だいぶ以前にこのメルマガでも奥付のことを扱いました。

隠れた売れ筋本から好企画を見つけるときの方法として、奥付の刷り数を見て発行してから一年以内に5刷を超えているものや3年間で10刷り以上の版を重ねている本だったら、ベストセラーに上がっていなくても安定的に読者のいるテーマだから、同様の企画で出版社に持ち込めば採用される確率が高い、というようなことを書い
たと思います。

類書からパクるというか、類書をヒントにするという手法ですね。まあ、ひとつの目安としては書いてあるとおりなのですが、会社によっては奥付が当てにならないところもあると、某老舗版元の敏腕マーケッターに教わりました。

普通、重版というのは市場、つまり書店に出して好調であることを確認した上で重版をかける(増し刷りを行う)わけですから、2刷、3刷と奥付に記載があるのは基本的に書店での販売が順調であることの証です。

(ところで、念のため「奥付ってなに?」という人にためにご説明しますと、奥付とは本の一番後ろに著者名、出版社名、印刷所名などがまとめて書いてあるページのことをいいます)

売れていることの証ですから、10刷とか30刷とか刷りの数が多ければ多いほどよい。これは原則です。

ところが初刷り(初版)にしても増し刷り(重版)にしても、印刷部数に制約があるわけはありません。

何部刷ろうとそれは各出版社の自由なので、初版が8,000部、重版が一回当たり3,000部単位の出版社も、初版が3,000部、重版が1回当たり500部単位の出版社も、一回増刷すれば2刷、三回増刷すれば3刷と奥付には記されます。

かたや3刷で14000部、こなたその3分の2以下の4000部、しかし奥付の重版回数の表記はまったく一緒です。

それでも増刷の回数が多ければ、規模はともかく傾向として売れているテーマと見ることはできますので、それを根拠に編集部に類似企画の妥当性を説得することは可能です。編集部も必ずそこには理解を示します。


■刷の数だけではわからないこともある


そういうわけで規模によって誤差はあるものの、刷の数をチェックする奥付調査は、売れ筋テーマを探すときの昔からあるポピュラーな方法なのですが、さすが老舗のエリートマーケッター、この古典的な手法にはもう一つの陥穽があると言ってきました。

曰く、出版社によっては重版のカウントのしかたが違う。

どういうことかといいますと、先ほども述べましたように多くの出版社では、初版何千部かを刷って書店での様子を見て重版(2刷目)をかけるわけですが、出版社の中には初刷のあとに2刷目がないところがあるのです。

初版売り切りで重版をかけない、というのではありません。以下のような表記ルールになっているからです。

例えば、初刷り5,000部を市場に撒いて、売行き好調と見た上で増し刷りを1,000部かけるとします。この1,000部を重版したとき、普通は2刷ですが奥付に突然刷り数6刷と表記する版元があります。

つまり1刷の単位が1,000部であって、刷の数イコール部数という表記を社内ルールにしているのですね。といって新刊なのに初版がなくて、いきなり5刷から始まるのはいかにも異様なので、初刷は初刷として表記しています。

いわば2刷から5刷までは初刷に隠れているわけですね。そうすると奥付調査で何気なく重版回数(刷数)を見たとき、1ヶ月で7刷とか10刷という驚くべき重版回数が現れるという場面に遭遇します。

これはもう普通だったら全国ベストセラーの上位にランキングされる重版回数です。このくらい極端だと現実の動きとの違いですぐに感づきますが、わかりにくいのは一年間で7刷、8刷と奥付に記される場合です。

こうなるともう「意外に売れるテーマなんだなあ」と納得せざるを得ません。そうして企画を間違えるわけです。こうした重版表記をする会社は、そうめったにあるわけではありません。

また、表記方法はひとつの社内ルールで、別にズルしているわけではありませんので、どこの社がどういう重版の表記方法をとっているかを憶えておけば、混乱することはありません。そのあたりについてはまたやります。

ただ、結局何部出てるのかは外部からはわかりませんね。
部数は発行者の企業秘密ですから。

ここではわかりやすく刷の単位を1,000としましたが、これも会社の都合で決められるので、実際刷り部数の単位は社内の人間でないとわかりません。

それでも何が売れ筋のテーマかを見るには、部数よりも傾向のほうが重要ですから、奥付リサーチはいろいろ不確定要素のあることを含み置きながらやれば、依然有効な方法であろうと思います。


■まとめ


近所の一級河川の堤防を歩いていると、たくさんの赤とんぼが舞う季節になりました。気がつけば今年もあと3ヶ月と3週間ばかり。

最近山の実りが少なくてちょくちょく人里に降りてくる熊のことを聞くにつけ、秋とはいえ格別に収穫のあるわけではないわが身を思う今日このごろです。

熊はちゃんと冬眠できるのだろうか。

ではまた次回。

来週はまた樋笠社長の出番ですね。
また、何か思いつくのでしょうか。


………………………………………………………………………………
◆◇コンサル出版新企画【あなたの企画書、お預かりします】◇◆
   締め切り迫る!9月末で第一次募集を締め切ります。

<企画概要>

あなたの企画書を、本多が目利きして、版元へ持ち込み出版交渉をします。お受けできる条件は、

○ビジネス系の出版企画であること

○商業出版を前提としたもの(社史や専門書は不可)

○まだ出版が決まっていない企画であること

○すでに出版社へ持ち込んで検討中のものでないこと(訳あってボツになった、交渉が決裂したものは可)

○お預かりする費用は無料です

○企画は、コンサルジェントおよび本多氏がセレクションした上で出版社へ持ち込みを代行します

○セレクションの結果、持ち込めないとなった企画については、本多氏がコメント(もっとこうすれば良いんじゃない?)をつけて簡単なアドバイスをいたします

※持ち込めないとなった企画書の添削はいたしません。有料の添削 やプロデュースサービスをご希望の方は、こちらをご覧下さい。

○見事、出版が決まった企画については、初版印税のうち3%という成功報酬です

○企画書の事例は、ご本人の承諾のうえで、このメルマガでご紹介させて戴く場合があります

<応募方法>

出版企画書を、以下の体裁で、下記アドレスまでお送り下さい。

1.仮タイトル
2.仮目次
3.本書のセールスポイント
4.本書の持つ市場性・ターゲット読者層
5.類書の有無
6.類書との違い
7.原稿の仕上がり予定
8.著者略歴・著書の有無
9.原稿見本(10ページ以内)

<サンプル>
http://www.consulgent.co.jp/pdf1/kikakusyo_sample.pdf

(メール送付先)
maimagl@consulgent.co.jp

※件名に『コンサル出版企画書』係まで、と明記ください。

(郵送の場合)
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町1-10-2きめたハウジング6F
株式会社コンサルジェント 『コンサル出版企画書』係

<締め切り>
2006年9月末日までに到着分まで



    《編集後記》
 
企画書リアルサンプルを見ますと、前回の“便利本”と連動していたんですね・・・さすが奥深いです。サンプルの内容はともかく、非常に市場性やセールス面への配慮がなされているあたりがセールスに苦労された本多さんらしいです。「企画書お預かりします」は、9月末まで受付中ですので、皆様の力作をお待ちしております!(発行者:樋笠)



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出版プロデューサー/本多 泰輔(ほんだ たいすけ)

プロデューサー・本多泰輔氏は、ビジネス出版社(版元)で20数年の経験をもつベテラン編集者から、出版支援プロデューサーに転身した人物です。その考え方について詳しく知りたい方は、本多氏編集のメールマガジン『コンサル出版フォーラム!本はあなたをメジャーにする』のバックナンバーをご一読下さい。

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