おはようございます。
本多泰輔です。
世の中に、新しいものが出ればそれでチャンスになるのが出版業界です。新しいものは新製品でなくとも、カテゴリーが新しければよいのです。
ですが、クールビズやウォームビズのように出版界には何の影響ももたらさなかったものもあります。
北朝鮮が核保有国、というのは新しい状況ですが、これはそのうち何冊か出てくるだろうと思います。もっとも東アジア情勢はもっとその先があるのかもしれませんが。
先日、世界で一番売れた本は何だという話題になって、「毛沢東語録か聖書だろう」と答えたのですが、Wikipediaで調べたところやはり聖書でした。
1815年から1998年までに推定累計3880億部以上売れているらしいです。全人類が一人6冊以上買っていることになります。ちなみに私は旧約も新約も持っていますが、買ったわけではありません。でも誰かが買ったんでしょうね。
宗教に制限のない日本人は、聖書も般若心経も持っていますが、イスラム教徒の多くの人は聖書までは持っていないと思いますので、3880億部はやっぱり凄い量です。
183年間、亡くなる人の棺に入れ続けていたのでしょうか。あるいは火葬するときに一緒焼いたのでしょうか。古書市場ではあまり聖書は見たことがありません。聖書が返品されて断裁処分なんて、不謹慎なことはありませんよね。
なんかいろいろ考えてしまいますが、まあ正確な部数は問題ではありません。世界一であることは揺るぎないでしょう。
日本の出版物では、コミック『ドラゴンボール』(鳥山明)が3億部以上で世界一だそうです。まあ累計ではあるのでしょうが、単行本の世界では、いまだに『窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子)の500万部が一番なのに桁が違いますね。
『ドラゴンボール』は全何巻かはわかりませんが、仮に1001巻だとしても1巻あたり300万部ですから、そら凄いわ。
ついでに日本の出版物の一位も調べてみました。Wikipediaのお陰でこういうことを調べるのは便利です。
一般書籍の日本一『窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子)、この先何年続くのかディフェンディングチャンピオンは健在です。
新書の日本一『バカの壁』(養老孟司)。こちらは新チャンピオン登場の気配濃厚ですね。なにしろ発行点数が爆発的に増えてますから。
小説は『世界の中心で、愛をさけぶ』(片山恭一)だそうです。へえ、そうなんだ。という感じですね。『氷点』を超えたんですかね。ここいらへんがWikipediaの限界で、イマイチ信じ切れない頼りなさがいじらしいです。
文庫日本一は、『人間失格』(太宰治)、『こころ』(夏目漱石)。同率首位なんですかね。まあ、総合出版社の全てから出てますから、総部数は大きくなるでしょうね。
何となく雑誌のABC調査みたいで心もとない気もしますが、概ねこういう状況のようです。文学作品が残っているというのは、意外なような気がしますし、読書層の底堅さを感じさせもします。
50年後も読まれる作品を残せれば、著者も本望でしょう。永く読み続けられる、そういう意味でもやっぱり『聖書』は世界一ですね。
■見開きで文章の区切りつける法
『人間失格』や『こころ』は、発行が古いので昔の版を使っていて、文字が小さかったりしますが、最近の文庫は文字がでかい、図版入りというのが当たり前にになって、単行本から文庫に編集する際苦労するようです。
図版の位置が単行本のときと変わってしまいますから。
ここのところ出版されるビジネス書で、図解のないものはない、というくらい図版は必ず組み込まれています。図版と文章の位置関係は、最初に原稿をつくるときにやっておかないと、後で調整するのは大変なんです。
そこで、限られたスペースで文章をまとめる方法についてお話します。といって難しい話をするわけではなく、とにかく決まったスペースの中に押し込めばいいのです。
だいたいあれこれ詰め込もうとするから入らないのであって、入らないときには捨てていけばいいのです。どうしても残したいときは、別の場所に記しておけば、読者は賢いのでちゃんとそこで理解してくれます。
さて、文章といえばまずはプロット立てですね。前にも何回か書きましたが、プロットとは要するに目次の原形、書きたいことの項目です。
ところが、プロットはさらに分解しないと、実際に原稿の組み立てには役立ちません。まあ、3回くらい分解すれば十分ですし、文章の構成は見えてきます。
文章の構成が見えてくれば、分量もおのずとわかってきます。A5判見開き2ページに収めようとすれば文章量としては1200字〜1500字ですから、プロットの分解は2回くらいでも収まるかもしれません。
片側に図表があれば1ページですから、プロットの分解は1回でいいですね。
「桃太郎の旅立ち」というプロットを立てます。
これだけでは構成はできませんね。すこし分解します。
・いでたち
・装備
・目的
・方向
・おじいさん、おばあさんとの別れ
こうすると隣のページに桃太郎の図解を入れれば一目瞭然。いでたちは、はちまき(マークは日の丸、または桃のマーク)、陣羽織、裁付袴に草鞋。
装備は刀一振り、「日本一」と染め抜いた幟一竿、黍団子3つ。目的、鬼退治(理由不明)。方向、鬼が島(地図なし)。ということになります。
一人前になった桃太郎を見送りながら、感激と感傷で泣いて手を振るおじいさんとおばあさん、というあたりが文筆に力が入るところでしょうか。
■プロットの分解は徹底的に
プロットの分解が細かくなればなるほど、文章にするときのイメージは具体的になります。文章のボリュームも大体見当がつきますから、2ページに余るようであれば、分解した項目の一部を他の場所へ移動することで見開きに収まるよう調整できます。
いきなり書き始めるよりも、初めにプロットをつくり何回か分解していったほうが、スムーズに書ける場合があります。特に文章量に一定の制約がある場合にはそうです。
つまり図解のような形式の本を書くときには、プロットづくりとその分解が有効な方法になります。原稿用紙やPCの画面を前に呻吟するなら、プロットをスケッチしてさらに項目を分解していくほうが楽ですよ。実際。
プロットをつくっていると、一度書き出してみると案外それで書けそうな気がします。もうこれで出来たような気がするときがあります。でも一回のプロットとではやはり十分ではありません。
まあ、だいたい途中でつまります。
1ページあたり、文章の長い人で、プロットは1回は分解する必要があります。なので一冊の本をつくるには全200ほどにプロット分解した項目がほしいところです。
そこまでプロットが揃えば、構成としてはかなりけっこうなものになりますね。多分編集者がうなります。
■まとめ
短期間に売れる本は大変けっこうですが、太宰治みたいに生きてるうちはそんなにベストセラー作家ではなかったのに、死後作品がベストセラーになるというのもなかなか作家冥利に尽きるのではないでしょうか。
多分、太宰自身も喜んでいると思います。漱石はどうかわかりませんが。新しいものが出れば出版はチャンスと冒頭で書きましたが、労基法はこれからどんどん変わりそうですね。
働く側の事情も変わってきていますし、人材に関する企業の考え方は現在かなりドラスティックな位置にありますが、これはこのまま推移するとは思えません。高齢者はしばらくハッピーリタイアをむさぼることができるでしょうが、企業は削ぎ落とした人件負担をキープすることは難しいと思います。
コア人材の数は絞り込んでも、周辺の非正規社員の人件費負担はやがて反転し、負担は増加することになるでしょう。いずれにせよ、ビジネス書のテーマは尽きません。
では、また来週。
|