おはようございます。
本多泰輔です。
各書店では、来年の手帳が平台を占めるようになりました。来年は亥年ですね。何回目かの亥年です。前回の亥年のときは価格破壊とか、規制緩和とか言っていたように思います。
思えばあれから順調に規制緩和され、いまや格差社会にまで行き着いている状態です。ま、それなりに時代は連続性を持って進んでるといえるわけです。
さて、そんな格差社会の進む中、労働法が大きく変わるようです。
いわゆる労働契約法。
要するに働く人のタイプに応じて、労働基準法もフレキシブルに適用しましょうという法案です。現在、厚生労働省と連合が最後の綱引きをやっている最中でしょうか。
とりあえず年内には審議会の結論が出て、法案として固まるようです。来年の通常国会で議案として提出されるのでしょう。
何かとんでもない事件でも起きない限り通過するでしょうから、施行は再来年の春前後になるのではないかと見られています。
いまのところホワイトカラーエグゼンプションが世間を少し騒がせているようですが、話はもっと広範囲にわたる影響の大きな法案です。
はっきり言って、ビジネス書にとってはチャンスです。
法案の影響は、個人情報保護法や新会社法の比ではありません。といっても消費税ほどのインパクトはありませんけど。ま、時短くらいでしょうねえ。ただ、時短より複雑ですから対応策でもしばらく食いつなげるのではないでしょうか。
いずれにしても今回も早い者勝ちでしょうから、来年の今頃には何冊か出版されていることでしょう。
それでは本編です。
■発売2ヶ月で、早くも第4刷のヒット・・・!
樋笠:武永さん、この本、非常に売れているそうですね・・・・。おめでとうございます!私も有楽町の書店で、偶然、大々的に売っているのを見て、著者を見たら武永さんだったので、ビックリしましたよ。
【伊勢丹だけがなぜ売れるのか−誰からも支持される店づくり・人づくり】
武永:10月の発売以来、紀伊国屋のビジネス書ベスト10にも先週まで連続 して入っていますし、とても驚いています。初月度で第二刷、第三刷がかかって、11月には第四刷というハイペースのようですね。
樋笠:では、まず出版に至った経緯を教えてください。
武永:最初のきっかけは「伊勢丹な人々」という本を買ったことです。自分なら伊勢丹の強さの本質について書けると思ったのです。
私は伊勢丹が主宰する百貨店連合「ADO」に属する地方百貨店の出身で、伊勢丹提携業務部に出向した際、或いは札幌本店の全館改装の際に伊勢丹の様々な部署の方にVMDとMDを中心に学ばせて頂きました。
それをベースに書けば相当数の販売が見込め、出版社も採用して下さると考えました。
樋笠:けっこう世の中に出ている本にも、そういうヒントがあるものなんですね。それで具体的に動き出した、と。
■度重なる挫折は、ベストセラーへの試練だった?!
武永:はい。ちょうど経済雑誌の編集者の方に知り合いがいて、さっそく企画書を作って、見てもらったんですね。するとしばらくしてOKの返事が来て。これで実現できるって喜んだのです。
ところが・・・何ヶ月たっても、いっこうに進まないし。だんだんと不安になりました。
樋笠:えっ、一度OKになったのに、ですか?なんだか雲行きが怪しくなってきましたね。
武永:そしてさんざん待った挙句、ボツになってしまいました。今年の1月頃でした。実現できると思っていましたから、それはけっこうな挫折感を味わいましたよ、正直なところ。いちどはやめようかと諦めかけました。
それで、せっかくだから「メルマガ」で書いてみようかと、思い立ったんです。過去に何度もメルマガを出していますし、
さっそく発行の申請をしてみたんです。
すると・・・何度出しても、申請しても、問合わせをしても、
まったく反応なし。無視、ですね。なぜだか今でも理由はわからないですが。ダメな理由も、何も、まったく返事がなか
ったのです。これでますます落ち込みました。
樋笠:うーん、メルマガの道も絶たれたとは。ちょっと大変な思いをされたんですね。
■偶然、目にした新聞広告から、起死回生の大逆転!
武永:それから今年の春、転換期がやって来ました。 新聞を眺めていたら、偶然、ある文字が目に入ったんです。
“セブンイレブンからヒット商品が生まれ続ける理由”
この本の広告を見て、ピンと来たんですね。
私が考えていたタイトルが、“伊勢丹が勝ち続ける理由”だったんで、この
出版社なら、私の企画を採用してくれるかも、と考えたのです。
それで「かんき出版」さんへ電話をかけて、企画書と著者プロフィールを送りました。それで、トントン拍子に、出版が決まったのです。
樋笠:なんと!たまたま見た新聞広告が引き金だったんですね。
武永:いちど会いたいという話になって、かんき出版さんへ行ってみると、前から伊勢丹の企画をやりたかったが書ける人がおらず、実現していなかったと聞かされました。
あとから知ったことですが、かんき出版さんほどメジャーになると、1年365日、毎日どんどん企画書の売り込みが来るみたいですね。それでも、ビジネス書は依頼実績のある付き合いのある著者に書いてもらうようなケースがほとんどらしいですね。
こういった売り込みから実現するのは半年に1本もあれば良いほうだそうです。偶然とはいえ、非常に狭き門をくぐり抜けたと実感しました。
樋笠:なるほど。それから編集の方とは、この企画はどんな感じで進んでいったのですか?
武永:本の中身自体は、ほとんどそのまま通りました。自分が書きたい内容と、編集が考えた方向と一致していたようですので。
当然、いくつかの要望も出てきて手直ししましたが、大きく手を加えていただいたのは、タイトルや、目次や、帯のコピーなどです。タイトルや、目次の表現や、帯のコピーなんか、さすがだと感心しました。
例えば、編集者の方との雑談で「伊勢丹しか勤めていない人は、そのすごさが自分では良く分からないんですよ」と言った内容が、帯のコピーで効果的に使われていたり。自分では思いつかないような表現が目次のタイトルにつけられたり。
樋笠:なるほど・・・やはり優秀な編集者によって、同じ本でも、かなり味つけというか完成度が変わっていくものなんですね。とくにこの本、表紙が伊勢丹チェックのカラーに似ていて、非常に目を引きますし。これも売れている理由のひとつなんでしょうね。
武永:デザイン案もいくつかあったようですが、これが一番良かったみたいです。かんき出版さんとしても、ベストセラーにするために力を入れる本として選んで下さったので、発売時には書店をまわってみて、その宣伝の力の入れようにビックリして、感動しました。
やっぱりビジネス書の大手が力を入れるとすごいな、と。日経新聞などの広告も何度も見ましたし。
樋笠:その期待に応える売上実績を叩き出している訳ですから、本当にさすがです!ぜひ5万部は突破したいですね。
■時流に乗って、相手のやりたいことに合わせるのが成功のコツ
樋笠:さて最後に。これから出版を目指すコンサルタントの方へのアドバイスをお願いできますでしょうか。
武永:自分ではあまり意識していなかったのですが、出版社側がやりたいと思うところへ、うまく話をもっていけたのが勝因ではないかと思っています。
「この出版社なら、こんな企画をやっているから、シリーズとして自分の
企画が採用されるのでは?」という考えがあったのは、1作目のときも、今回の企画も、まったく同じです。
つまり出版社が望んでいる、探している、と想像できる先を選んで企画書をぶつけていったのです。
樋笠:なるほど。やはりそのへんは相手(出版社)あっての著書ですからね。ひとりよがりの企画が、日々、出版社に送られてはボツになっていっているんでしょう。
武永:それから、そもそも「伊勢丹」の本は時流にも乗っていますし、売れるという確信があったことも事実です。企画書にも書いたのですが、伊勢丹は全国の百貨店の1番店連合と言われるグループADOを束ねる中心会社です。
ですから、まずこのグループの関係者は間違いなく買って読むと思いました。それから、日本で一番注目されている百貨店は新宿伊勢丹なので、三越や、高島屋や、大丸などのライバル関係者も読むだろうと。
もちろん伊勢丹を中心とする百貨店の取引先のビジネスマンもターゲット読者ですね。そのへんのマーケティングの考え方も企画書に盛りこんだのです。
樋笠:やはり武永さんはコンサルタントですから、このあたりは科学的に裏づけがあったというか、計算されていたんですね。武永さん、本日はインタビュー、ありがとうございました。非常に参考になるお話でした!
■まとめ
来年から税金が上がるんですねえ。所得の多い人にとっては減税になることもあるみたいですが、貧乏人には辛い時代です。
減税がなくなったり税率が変わるのは大きなことなんですが、だからといって本にしたって売れるわけでもなくつまらんものです。
そういえば2007年問題はどうなったのでしょう。
各別なんの動きもないというのがちょっと気になりますね。個人情報法保護法のときも12月まで無風状態でしたから、このままなんにもなしに2007年を迎えるかどうかはわかりません。
ではまた来週。
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◆◇今週のおすすめビジネス書◇◆
【伊勢丹だけがなぜ売れるのか−誰からも支持される店づくり・人づくり 】
著者:武永 昭光 出版社:かんき出版 価格:¥1,680(税込)
《著者プロフィール》
武永 昭光(たけなが あきみつ)
株式会社ショーアンドテル 代表取締役
1948年生まれ。1972年大学卒業後、百貨店に入社。百貨店にて婦人服マネージャー、婦人服飾雑貨フロアマネージャー、国際事業室長、VMD推進室長等を経験。VMD担当として、店舗の全面改装の際に米国のVMDコンサルティング会社、店舗設計会社と共にチームを組み、様々なノウハウを習得する。1996年、日本に真のVMDを広めたいと考え、VMDのコンサルティングをメインとする(株)ショーアンドテルを設立。VMDの正しい理解と売り場での実践ができれば、売上は確実に上がると考える。現にセミナーで真のVMDを理解、納得してもらい、その後の現場実践により、売上、利益を伸ばしている。売り場で販売員と共にVMDの改善を行いながらVMDノウハウを習得してもらう、現場密着型のコンサルタントと自負している。
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