おはようございます。
本多泰輔です。
本メルマガも回を重ねること95回。
出版への熱意を持った数多の人々に対し、さんざん出版の困難さを強調することで、その志気を阻喪することに大なる効果を挙げた本メルマガですが、振り返るにつけ自嘲を禁じえません。
みなさま、よくお付き合いいただいております。
そこで今回は、改めて出版することの積極的な面をとらえ、コンサルタントにとって本を出すことの意義を再確認してみたいと思います。
以前、やったような気もしますが、今回はダイジェストです。
■本は全国を歩く営業マン
個人のコンサルタントにとって、自ら営業することはなかなか難しい作業です。かえって不利になるケースもありますし、そもそも全国的に展開することはコストパフォーマンス上不可能といえます。
本は、基本的に全国書店に配本されます。ビジネス書の場合は、あまり地方には行きませんけどそれでも企業が集中する都市部にはちゃんと配本されます。実際売れるのはほとんど東京なんですが、配本は全国なんですね。
ということで見ず知らずの都市の書店でも、しっかり本は並びます(出版社によっては並ばないところもありますが)。 そして見知らぬ読者とあなたを結びつけることになります。
大事なことは書店に本があることで、いくら本を出しても書店に並んでいなければ、読者とあなたの出合いは永遠にありません。そして、長く書店の店頭に置かれ続けるためには、単行本であれ文庫であれ売れないことには始まりません。
大きな出版社から出せば1ヶ月くらいは書店に残りますが、売れなければ消え去るのみです。中くらいの出版社ですと2〜3週間くらいで消えます。小さいところだと納品した翌日に消える・・・かというと、実はそうでもないことがあります。
極端に小さいところからでは、本当に店頭に並ぶ前に終ってしまうこともありますが、小さいながらも検討しているところは、むしろ一つ一つの商品を長持ちさせようと努力するので、案外店頭寿命が長いのです。ま、配本の数は少ないですが。
中くらいのところは、新刊の発行サイクルが短いので売行きが鈍いものは、ところてん式に返品へと押しやられ書店寿命が著しく短いのです。
かくして読者とのご縁は、細く短くか、太く短くかということになります。配本が少ない上に売行きが渋いときは、細く短いこともありますし、ベストセラーなら太く長くという、讃岐うどんのようなけっこうな場合もあります。
本が営業マンとするならば、有能な営業マンが大勢で活躍する場合と貧弱な営業マンがぽつぽつ存在するような状態があるわけですね。
どっちがいいかは言うまでもないですが、いないよりはマシということもあるわけです。
■本は説得力のある営業マン
本一冊読むということは、相応の時間と労力を必要としますので、最後まで読めば自然と読者と著者の距離は縮まります。
顧客に信頼感をもたれるためのツールとしては、おそらく本はセミナー、講演会以上でしょう。ただ、セミナーのようなライブと本は相乗効果の関係で、両社が有効に絡むことで本業への誘客は一段と高まると思います。
こうした本の効果は、バイブル商法やブックセールスなどの手法に顕著です。アガリクスもネットワークも本とセミナーというゴールデンコンビが基本形、本で信頼させてセミナーでクロージングするというやりかたですね。
研修やコンサルティングの効果について、長々と説得するよりは一冊の本を渡したほうが効果的です。ただし、相手が本を読めばですが。
もっとも渡した本を読まないような人は、本来そのテーマに関心がないわけですから、いくら説得しても無意味な人ともいえます。
いまは上場した某FCの社長の本を何冊か出版しましたが、本を読んでからFCの問い合わせをくれる人の加盟率は非常に高い、また、FC加盟の検討をしている人に本を渡すことで制約率がぐんと高くなると言ってました。
その本は書店では対して売れなかったにもかかわらずです。
■本はコンサルタントをきらびやかに飾る
あるコンサルタントの人が、コンサルティングを導入するかどうかでクライアントと交渉しているとき著書を出すと「いままで○○さんと呼んでいた相手が○○先生と言うようになる」と話しておりました。
日本人には(多分他国の人もそうでしょうが)本についてのミラージュがあります。活字の魔力ともいいますが、著書が出版物として市場に出ることは一つのステイタスの証明と見られます。
どんな本でもステイタスになるかどうかは、私はビジネス書の出版社しか知りませんので、小説やエッセイの著者がどのような厚遇を受けているのかわかりません。
ステイタスとして本を見たときは、やはりハードカバーの単行本のほうが立派に見えますね。本当は文庫本になるほうがハードルは高いのですが、見た目が厚くて大きいほうが何かグレードが高いような印象を受けます。
でも、ソフトカバーでも何でも出版されたものであることが肝心なことは言うまでもありません。ただし、5年前に出した本を一冊ばかり示されても相手が「先生」と呼ぶかどうかは疑問です。
事例のコンサルタントの場合、2年に1冊くらい出していましたから、「これが私の本です」というときは5冊くらい積み上がります。
「数は力なり」はこういう場合にも適用されるようです。
前述のFC社長も、売れなかったとはいえ3年間で3〜4冊ほど出していましたから、数の力は行使していたといえます。ただ、株式公開後はあまり出版はしなくなりましたね。本は出さずともマスコミに露出する機会が増えたせいかもしれません。
■売れれば印税も入ってくる
本を出せば「印税生活」と思っている人は少ないでしょうが、それでも100万部も売れれば十分印税生活は可能です。
著書が100万部のベストセラーになれば、印税収入はほぼ1億になると思います。松坂大輔や松井には遠く及ばないものの、売れている間は怪我の心配もなく印税生活を謳歌できます。
10万部を超えれば1千万くらいですね。しかし、著書が初版止まりでは印税だけで生活することは不可能です。初版3千部くらいの「極めて手堅いところ」から出せば20万円に届かないこともあるでしょう。
初版千部だったら自費出版と同じです。それでも著書の出版でご本人のステイタスが上がるなら、それでも意義はあるかもしれません。
本は売れると一番儲かるのは出版社ですが、著者にも相応の利益があります。本が売れないと大きく損害を受けるのは出版社ですから、そもそも売れそうにないテーマの本を出版社は出すことはしません。
著書の数を増やすためには、やはり堅実な実績を持っていたほうがよいでしょう。ただ、前著が売れたから新しい企画が受け入れられるかというわけではありません。
要するにその企画が売れそうなものかどうかが全てです。
■まとめ
そういうわけで本を出すと「こんなにいいこと」があります。なんとなくどれだけ実益に結びつくのか心もとないですが、はっきり言ってそれが現実です。
実益に結びけるためには、本出すことよりも、本を出した後の仕組みとマーケティングに力を入れなければなりません。
宝くじよりも低い確率の奇跡であるベストセラーになること以外では、本を出すだけで直接実益がもたらされることはありません。
儲かる出版を目指すなら、出版の後の計画が大事です。
では、また来週。
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