おはようございます。
本多泰輔です。
先週、とある法曹関係のかたがたの集まりに参加させていただきました。
毎月一回研修会を開いているという、『カバチタレ』(講談社週刊「モーニング」連載)の世界の人とは思えぬ真面目な態度に頭が下がるとともに、本多なんぞの話まで聞いておこうという守備範囲の広さに小さな疑問を抱きつつ、小雨の煙るなか会場へと向っておりました。
場所は神奈川県の入り口、いまやおしゃれで文化的な街並みに変わってしまっている川崎駅西口、「川崎ってこんなんだったかなあ。
確かもっと灰色だったような気がするけど」と旧い記憶を遡ってみると、あの灰色の景色、すなわち「東芝」の工場群が丸ごとない、そこにはいくつかの瀟洒な文化施設が・・・(土壌汚染大丈夫だったんだろうか)。
ソニー、松下、日立、東芝、NEC、富士通、そしてサンヨー、かつて栄華を誇っていた電機メーカーが、だんだん後退していくのを見るのは寂しい思いがします。
すこし早めに会場に着いたので、2階の喫茶店で仕掛かり原稿の目次チェックをしながら時間調整しようと入ってみたら、これが禁煙(まあ仕方ないですが)、自然素材、自然食の筋金入りエコ喫茶。
しかもお客は私を除いて全て女性。内装もテーブルも塗装なしの無垢の木、テーブルカバーも自然素材の木綿布地。
かつて大気汚染の代表的な街で、どっちかというと男の街だった川崎までこうなってしまっては、もはや私ら無頼の輩は行くところがありませんなあ、などと思いながら、自家焙煎無農薬国産豆100%のコーヒーをすすっておりました。「ドトール」よりはおいしかったです。
さて、本物の行政書士は、マンガの『カバチタレ』みたいにきわどいことばかりやる仕事ではないことがわかりました。
それでも「行政書士を辞めるときはすべてを暴露したい」という人もいたので、それなりに面白い世界に足を踏み込んで仕事しているようでした。
まあ、全体に優雅な感じの人が多かったので、税理士なんかよりも「いい資格」なんでしょうね。
■定年後の進路
もうすぐ07年、団塊の世代の大量リタイアといわれていますが、あまり目に見える動きはありませんね。
「ちょい不良オヤジ」のLEONが少し世間の耳目を集めましたが、出版界においても団塊を当てにしたものは、一般書では目につくほどのものはありません。
団塊の世代というと男性を想起しますが、男女の数は高齢になるに従い女性の比率が高まるわけですから、実は女性の世代と見たほうがよいのではと思います。
確かにリタイアするのは男性ですが、世代としては女性人口に注目すべきなんじゃないでしょうか。
定年起業はリタイアした本人が志すことなので、多くは男性でしょう。しかもかなりエネルギーがある人です。こういうアウトプット型はやはり男性的な行動です。
しかし、そういう人は多くない。
公的年金と企業年金、それに貯蓄や金融商品で経済的な基盤を支えようという人は、美術館めぐり、登山、海外旅行など、悠々自適の優雅な生活を楽しんでいます。
仕事をしながら悠々自適、という人々が最も多いのではないでしょうか。こうした行動の主導権は女性にあります。
前にも書きました高尾山(高尾山にも熊が出たそうですが、当然ですよね。山なんだから)の登山者250万人のほとんどは女性です。男性は女性に連れられてやってくる程度。
保険やらなんやら団塊世代をねらったCMは夫唱婦随のイメージですが、私は「婦唱夫随」が現実の姿だと思っております。
■定年後の読書
読書人口を世代別に見れば、結局10代が一番多いんですが、図書館には高齢者の姿も多い。
団塊の世代が果たしてどのくらい本を読むかわかりませんが、彼らが手にする本とは一体どんなものでしょうか。とりあえずベストセラーは読むでしょう。
最近は昭和30年代ものが多いですから、なつかしさも含め読まれているのかもしれません。そういえば映画「三丁目の夕日」も観客はおばあさんばっかりでした(ま、私はウィークデイの午前中から映画見てますから。すでにホワイトカラーエグゼンプションです)。
「僕とおばあさん、おばあさん、おばあさん、ときどきおじいさん」という館内の状況でした。『東京タワー』も多分そうなるのでしょう。
「昭和30年代」ブームは、団塊のテーマなのかもしれません。私のような50歳前後の人間にとっては、70年代(昭和45年〜)が想い出多き時代ですが、団塊の人たちにとっては「美しい10代」だったのは昭和30年代ですから。
ま、しかしビジネス書でどうやって昭和30年代を扱えばいいのか、思案に苦しみますね。小説のように自由につくれればいいのでしょうが。
「昭和35年の松下電器」とか「東京オリンピックと東芝」とか「日立の東京タワー」とか・・・、うーん、やはり物語になってしまいますね。
『鉛筆で奥の細道』や「水彩画の描き方」や「楽器の弾き方」「山岳ガイド」の類は、やはり余暇の増えた高齢者が読者層の核になっていることは間違いありません。
団塊という冠はつけていないにせよ、水面下では書籍のシルバー市場は少しずつ拡大しているといえます。それにしても趣味の世界ばかりですね。
文学も古典文学や名作の読者が増えています。
■文学全集の復活は
以前にもここで紹介しましたが、文庫の売上No.1は夏目漱石と太宰治です。
最近は村上春樹の翻訳で『グレートギャツビー』が文芸書のベストセラーになっています。何年か前には『キャチャー・イン・ザ・ライ』がベストセラーになりました。
おかげで白水社の『ライ麦畑でつかまえて』までがベストセラーとなるという奇想天外な動きとなりました。白水社の本がベストテンに入るなんて古今未曾有じゃないでしょうか。
リタイアしてから若いころにかじった楽器をもう一度やろうという人の登場は、楽器メーカーを相当潤しているようですが、若いころに読めなかった本をもう一度読み直そうという人もいるのでしょうか。
いまのところ文庫ばかりに手が伸びているようですが、私の経験からいっても文芸作品は高じてくると全集が欲しくなります。文庫で全巻そろえても達成感がないんですよね。見た目も全集の豪華本のほうがかっこいいし。
ただし、全集をそろえると中は読まないという抜きがたい法則があります。
現在、文学全集は古書店に行かないとお目にかかれないですが、再び全集が売れる時代が来るのでしょうか。そういうときが来れば、書店と一部分芸書の老舗は大活況でしょうね。
白水社のみならず、博文館や北隆館などの老舗が再び出版界の雄に返り咲くかもしれません。
「昭和大衆文学全集」なんてどうでしょうかね。でも、やはり「日本名作文学全集」でしょうかね。印税ないですしね。
■まとめ
まとめといっても今回は本当にとりとめのない話でしたので、まとめようがありません。どうしたもんでしょうか。
結局、いまのところ団塊は、読書傾向で見る限りビジネスよりも趣味のほうに関心が向っているようです。
定年後にコンサルタントをやろうか、という人もいるのでしょうが、絶対数は少ないです。定年起業家もいるのでしょうが、まだつかみどころがありません。
来年のテーマとしては、新卒採用者と先輩社員たちとの価値観のギャップや、部下の心のケアまでを管理の範囲としなければならない管理職のための本のほうが喫緊かもしれません。
団塊のテーマっていったいなんなのでしょうか。いつかは経済的な課題もテーマになるのでしょうけど。
では、また来週。
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