おはようございます。
本多泰輔です。
いつの間にか歳の瀬です。
今年なにがあったか思い返してみると何があったか、にわかには思い出せません。マンション偽装やらホリエモン逮捕やら、W杯もありましたね。個人的には目論見倒ればかりだったように思います。
でも一応何冊かは陽の目を見たんですけどね。やっぱり売れないとやった気がしないのも事実です。売れないのはだれが悪いんでしょう。やっぱりプロデューサーかな。
ま、売れなかったものは運が悪かったと諦めることにしておりますが、人間関係は大事にしたいですね。大事にしたいと思いつつ疎遠になることも多いですが。
話は飛びますが、著者にとってよい編集者とはどんな人でしょうか。知識豊富で著者より詳しく、下手な原稿には鋭いチェックを入れてくる人?ヒットメーカーといわれるような腕利き編集者?
基本的には相性ですから、一般論でベストな編集者というのは、あなたにとってベストな人であるとは限りません。
まあ、強いていえば「猿回し」と「猿」の関係でしょうか。この譬えは刺激が強すぎて顰蹙を買いそうですが、意外と的を射ていると思っております。
編集者と著者、どっちが猿でどっちが猿回しかは障りがあるのではっきりとは申し上げませんが、つまり著者が猿です。
猿と猿回しではスターは猿です。猿回しは猿が芸をしないと厳しく指導しますが、芸をしているときは猿が気持ちよくのれるよう褒めまくります。といって猿を舞台に乗せるかどうかは猿回しの判断次第、いくら芸を褒めても舞台に出せないものは出しません。
要するに、あれこれ文句をつける編集者より、著者の良いところを発見して、著者をその気にさせる編集者と出合えたほうがラッキーといえます。ゴルフのレッスンプロにも似ています。
そんな編集者と出合う機会があったら、関係を大事にしたほうがよいと思います。ただし、これは関係の譬えであって編集者が著者を猿と見ているということではありませんので、誤解なきよう。心の中では常に尊敬を持って接しております。
それでは本編です。
■9冊の共著をへて、はじめての単独出版デビュー
樋笠:松林さん、今日はクライアント先からの電話インタビューとご多忙の合間にありがとうございます。まずは献本いただき、読ませて戴きました。今回の著書で、ちょうど10冊目とのことですが。
【週2、3日働いて1000万円稼ぐコンサル起業術】
松林:実はこれまでの9冊はすべて共著で、初めての単独での著書になります。いまは独立してコンサルティング会社を経営していますが、第一作目は日本IBMに勤務していた頃です。(CIM戦略 IBM藤沢工場の挑戦:工業調査会)
それからSAPジャパンを経て、日本ビジネスクリエイトというコンサルティング会社の勤務時代に、多くの本を出しました。その理由は、IBMやSAPなら名刺交換の時に「どんな会社なんですか?」なんて聞かれることはほとんどありませんね。誰もが知っている大手ですから。
ところがコンサルティング会社は、決して有名ではありませんから、最初に会社のことを延々と説明する必要があって、なかなか本題に入れないんですね。
それで名刺代わりになる本、やはり入門書が良いだろうと思ってその当時手掛けていたERPに関する本を企画しいろんな会社に声をかけて共著で出したんです。
樋笠:なるほど。やはりコンサルタントにとって本は、初回訪問時に大きな武器になるんですね。
松林:そうです。一定レベル以上の会社と理解していただけますから。言ってみれば「販促ツール」ですね。初めて訪問するお客様には必ず一冊もっていくようにしていました。
コンサルタントとしてのキャリア・プロファイルを説明し、会社のブランドアップには必ず役立つと思います。
■出版プロデューサーとの出会い
樋笠:それで今回の「コンサル起業術」ですが、これまでの実務書の路線からはガラッと180度変わっていますね。どういうきっかけで出版されたのですか?
松林:実は出版プロデューサーの土井英司さんのところで有料コンサルを申し込んだのがきっかけです。土井さんに2本の出版企画書を見てもらいました。
1本は、コンサルティングの方法論に関するテーマ、もう1本は間違いだらけのIT投資といったテーマでした。ところが、両方ともピンと来なかったような感じで。
それで雑談の中で、私の会社がコンサルタントを雇わず給料も払わずに、必殺仕事人スタイルでプロジェクトベースで行っているスタイルの話や、32歳の時から生涯計画表を作成してきたこと、やりたい仕事・やりたくない仕事のリストを自分で作ってきた話などをしますと「そのほうが面白い」ということになりまして。
それで1週間後に出来上がった企画書を、ダイヤモンド社に見てもらいとんとん拍子で話が決まりました。
樋笠:そうだったんですか。ご自身が予定していたものとは違った方向で決まったんですね。
松林:こういったコンサルタント志望者向けに自分の体験をお話する本は、3年計画の中にはありましたので、次の構想が早めに巡ってきたのかな、と思っています。
ただタイトル自身は、私が一番気に入らないというか、好きじゃないんですよ。実は。私からもタイトル候補を20くらい挙げたんです。ワクワク生きるとか、団塊の世代への応援歌とか、いろんなキーワードを使って考えたんです。
“週2、3日働いて1000万円稼ぐ”というのは、どうも品がないから、頼むからやめてくれとお願いしたんですが、やっぱりこのほうが売れそうだからと営業サイドの強い要望もあって、ダイヤモンドさんにお任せすることにしました。
中身は読んで頂ければわかりますが、楽して稼ぐといった財テクのようなものではなくて、非常にまじめな内容です。
樋笠:この11月に発売されましたが、今の手ごたえといいますか、感想はいかがでしょうか。
松林:先日、お客様や弊社関係者の方々100名くらいで出版記念セミナーを開催させていただきました。そこでお話したのですが、今の自分がもっているものを、全部なにもかも出し切ったという感じですね。心地よい脱力感といいますか。
あとは皆様で煮るなり焼くなり、お好きなように評価して下さいという気持ちです(笑)。幸い、読んだ方から「勇気づけられた」といった反響も聞いておりますし、amazonのブックレビューでも好意的にコメントをいただいております。
■クライアントの株を買って、覚悟を示す
樋笠:私が読ませて頂いた中では、担当するクライアントが上場企業なら、その会社の株を買うようにしているという部分が特に印象に残りました。コンサルタントとしての「覚悟」というか「心意気」を感じましたね。
松林:クライアント先のキックオフミーティングで、社長や役員が参加していらっしゃる中で、こうお伝えしています。
「私はいま64歳。決して御社の社員にはなれませんが、株主にはなれます。今回の仕事をお受けするにあたって御社の株を1万株、買わせていただきました。ぜひ、私のことも、同じ仲間と思っていただきたい。これは私のコミットメントです。」と。
口先ばかりでなく、こういった姿勢を示すことで、伝わるものがあるので
は、と思います。
ただ、10年位前の話ですが、こうして購入したクライアント企業が、談合事件でニュースになり、買ったとたんに暴落したこともあります。女房にはずいぶん叱られました(笑)。幸い、5、6年塩漬けにして、ようやく買った値段には回復しましたよ。
樋笠:そうでしたか・・・。やはりリスクもありますし、普通のコンサルタントにはなかなか真似ができないですね。
それでは最後に、これから出版を目指すコンサルタントへのアドバイスをお願いできますか。
松林:まず第一に、自分なりの出版目的をはっきりさせることです。何のために本を出すのか?自分をブランド化するためか、印税か、本が売れる必要があるのか、そうでなくても良いのか。
コンサルタントの仕事でもそうですが、カタチや手法に陥ることなく「目的は何か?」という原点から、方法論やすべて
のことを考えるようにしています。
第二に、プロの力を借りなさい、ということです。望めば、決して高くない額で、プロの貴重なアドバイスを受けることができます。私がお願いした土井さんも厳しい方で、決して誰でも本が出せるという安易なことではありませんが、必ず現状よりも大きく前進できるはずです。
樋笠:松林さん、本日は貴重なお時間の中、インタビューをありがとうございました。今後のご活躍をお祈りしております!
■あとがき
冒頭、著者と編集者の関係を猿回しと猿に譬えました。重ねてお断りしておきますが、全ての編集者が著者を猿と思っているわけではありません。
多分、人間、それもかなり尊敬すべき人間と思っている場合がほとんどだと思います。
さて、来年の今頃は何をしているでしょうか。毎年おなじことをしているというのは切ないので、何か違うことをしていたいと思いますが、さてどうなることでしょうか。
ではまた来週。
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◆◇今週のおすすめビジネス書◇◆
【週2、3日働いて1000万円稼ぐコンサル起業術】
著者:松林 光男 出版社:ダイヤモンド社 価格:1,500円(税込)
(松林氏より)
この本で一番伝えたかったメッセージは、コンサルタントであれ、どんな職業であれ「自分が主役」の人生を歩んで欲しいということです。そのヒントにしていただくために、具体的に私自身がやってきたことを書いたつもりです。
この本にも書きましたが、コンサルタントとして、私が一番大事に思っていることは、「顧客志向」とうことです。
よく「ギブアンドテイク」ということが言われますが、ふつうの友人関係でも「1つ与えて、1もらう」では、相手はそんなにもらってないよ、1/3くらいだよ、と思っていると私は受けとめています。
つまり、「3つ与えて、1つ返ってくる」位に思っていて丁度良いのではと考えます。これがコンサルタントだと「3倍、5倍、できれば10倍以上の付加価値をお客様に与える」くらいの発想でないとダメですね。
10万円戴いたら、100万円の付加価値でお返しする。そういった姿勢が大事だと思います。
時々「私はこれを知っている、これに詳しい」と自慢される方もいらっしゃいますが、お客様にとってそれが付加価値でなければ、何の役に立つのでしょうか、と感じます。
《著者プロフィール》
松林 光男(まつばやし みつお)
ワクコンサルティング株式会社 代表取締役
1941年生まれ。早稲田大学理工学部電気工学科卒業。日本IBM(株)にて、藤沢工場のCIM構築に従事し、日本経済新聞FA賞を受賞する。その後、CIM構築を中心とする外部企業へのコンサルティングに従事。SAPジャパンソリューション担当ディレクターとしてコンサルティングに従事。(株)日本ビジネスクリエイトに参画し、同期ERP研究所設立とともに中核スタッフとして参画、常務取締役を歴任。前東邦学園大学経営学部教授。ワクコンサルティング(株)を設立し代表取締役となり、現在に至る。技術士。
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