おはようございます。
本多泰輔です。
今週末は、知事選投票日ですね。注目は都知事選ですが、何かすでに勝負あったような気がします。都民の皆様および知事選の行われている自治体にお住まいの皆様、日曜日投票には行きましょう。
さて、今回は私本多の一つの顔である(ほかにどんな顔があるのでしょうか)出版プロデュースについて少しお話します。
いまさらながらの自己紹介ともいえますし、自己宣伝とも解釈できます。いまさら宣伝しても遅きに失しているというか、韜晦ならそれに徹すればよかろうにという気もします。
時折、このメルマガの読者の方やその他のチャンネルから、本を出版したいというオファーをいただきます。
もちろん本多は出版社は経営しておりませんので、オファーされるかたがたの目的は「どこか適当な出版社を紹介してくれ」ということなのですが、そんなときには下記のような具合で進めております。
■企画書には3つある
いまのところ出版プロデュースは、4つのチャンネルからお話が来ます。
一つは2つのコンサルタント団体からの紹介、もう一つは個人のコンサルタント等の人脈から、3つめはなぜか出版社から(畑違いのテーマなど)、4つめはこのメルマガの関係です。
ビジネス書という狭いジャンルなので、オファーの総数は大したことはありません。オファーには一応企画書と略歴をつけてもらっています。
まず書類を拝見して判断するのですが、企画には3つの種類があります。
1.どこの出版社へ持っていってもOKな企画
2.企画自体は?だが、著者にポテンシャルがある場合
3.どうにも見通しのつかない企画
1.のいつでも、どこでも、だれ(どんな編集者)とでもOKというのは、非常に稀ですが昨年のオファーを受けた内では4本だけありました。著者との信義がありますので書名は明らかにできませんが、4本のうち2つは販売面で強いサポートがあったものです。
一つは著者の持っている固定客層がかなり分厚く、一定の販売数が見込めたもの。もう一つは買い支えてくれるスポンサーがいました。
本を売るのが商売である出版社にとって、販売部数が何千部か見通せる企画は心強いですから、そのような条件のついた企画は、いつでも、どこでも、だれとでもOKということになります。企画があまりにも偏っている場合は別ですが。
残りの2本は、テーマが旬であったことと著者のキャリアがあつらえたようにテーマにどんぴしゃであったケースです。
2.の企画は?だが、著者のポテンシャルに期待できるという企画は、全体では2番目に多いものです(ということは、一番多いのがどれかわかりますね)。
著者にポテンシャルがあるかどうかというのは、要するに著者のキャリアに光るものがあるかということです。光るキャリアというのは、学歴や有名企業に在籍していたかなどということではありません。
肝心なのは「旬な企画」に通じるキャリアがあるかどうかです。
つまり、トヨタにいたというだけでは「ああ、そうですか」なので、トヨタで何をしてきたか、その結果何を知っているのかが、出版にとっては重要なキャリアということになります。
例えば『トヨタ語辞典』という企画に求められる著者のキャリアとは、現場で品管をやっていたとか、SCMを担当していたとか、生産現場を一気通貫した知識とそれを担保する実績です。
トヨタにいた人でも広告やマーケティング、人事畑出身では『トヨタ語辞典』の企画に対してはあまりきらめきを放ちません。
したがってたとえフリーターであっても、ディズニーランドで働いていてホスピタリティの何たるかを自分なりに理解していれば、十分著者としてのポテンシャルが輝くわけです。ホスピタリティだからといって看護士やホテルマンである必要はありません。
3.のどうにも見通しのつかない企画は、実はお気づきのようにオファーの中で一番多いのです。哀しいことに。私としても大変つらい。
このメルマガの読者からは、いまのところ3.に該当する企画をもらったことはありませんが、どうにも見通しのつかない企画はオファー総数の3分の2を占めます。
なるべく企画書に対するアドバイスという形で終わりたいのですが、紹介者や団体の関係もあり、なかなか簡単に終わらせることができず、面会せざるを得ない場合も多々あります。
お会いしても会話に苦心します。
たいていこのケースは年配者が相手ですから。
なんとなく曖昧な話をして、最後に「このメルマガのバックナンバーを見てください」と伝えます。すると何日か後に「あのときのお話の意味がわかりました」という丁寧なメールを頂戴します。
長幼の序を重んじる儒教精神の強い世代にとって、こうした面談は普段の数倍の心労があります。
ところで見通しのつかない企画の特徴を挙げると
・類書の存在を知らない(自分の企画が唯一だと思っている)
・出版のねらいや意図は明らかだがプロット(構成案、または仮目次)がない
・テーマが漠然としている
つまり、著者に自信と情熱はあるが、視野が狭く気持ちが先行して方向が定まっていないという傾向です。
■版元へのアプローチ
1.のどこでもOKの企画は、いつでも、どこでも、だれとでもよいわけですので、著者の意向によって版元を定めます。
著者の条件が印税収入であれば、初版部数と印税率の大きい版元につなぎます。特に条件がなければ、こちらから提案することもあります。
本業(コンサルティング)に寄与する戦略的な出版を考えているなら、テーマしだいではありますが、中小版元へ持っていくことも少なくありません。
発行点数の多い版元の場合、初速の出ない本は早い段階で見限られる傾向があるからです。早い段階というのは、配本前の新刊注文段階を含みます。つまり、極端なケースでは、書店に並ぶ以前に見限られることもあるわけです。
大手版元には相応のメリットもありますが、こうしたリスクもあります。本は市場になければ本としての十分条件を満たせません。そういう点では中小版元を選ぶことも一つの戦略です。
2.の著者のポテンシャルに期待が持てる場合は、企画書つくりよりもまず著者を編集者に会わせるようにします。そのとき企画書を用意するかは状況次第です。
1.のケースでも、もちろん編集者との打ち合わせはありますが、企画が定まっているので、もっぱら実務的な話となります。
一方、2.のケースでは「会って何かよい企画が生まれたらいいね」というスタンスですから、必ずしも企画に向かって一直線という流れにはなりません。
企画はむしろ編集者主導になります。逆に言えば、編集者主導にならなければ企画の成就はあまり期待できません。
著者のポテンシャルを認め、それをしっかり受け止め企画まで持って行くのは編集の腕であり、編集本来の仕事ですから2.のケースは編集のセンスに負うところ大です。
タイミングよく会うことができれば、その場でテーマおよび企画全体が決まることもあります。打ち合わせの結果、出版に至らなくても2〜3人の編集者に会えば、どういう企画にすればよいのか見えてきます。
その辺りから出版実現の気配が見えてくるので、その上で再度企画書をまとめてチャレンジしてもよいと思っています。
で、3.のケースですが、何ヶ月かした後に「出版しました」というご報告をもらうことがあります。
聞いたときはにわかには信じがたいのですが、要するに私の見る目がなかったということなのでしょう。何事もやってみなければわからないということですね。
出版プロデューサーなんていい加減な人物の話など真に受けず、自分の信じるところで行動したほうがよいという証左といえます。
■まとめ
昨年、プロデュースした本でベストセラーになった本はありませんでした。ちなみにベストセラーとは名目10万部以上の本をいいます。
「どんな企画が版元に通るか」はわかりますが、「どんな企画が売れるか」は相変わらずわかりません。わかっていればすでに出版社を立ち上げていますね。
まあ、ベストセラーがないと出版プロデューサーとしてもつらいのですが、主体的に著者開拓をしていない現状では、ちと難しいですね。
今年はベストセラーを一つくらいプロデュースしたいものです。
ではまた来週。
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