おはようございます。
本多泰輔です。
北海道や四国では、水不足の地域も出てきた今年の梅雨。おなじみ香川県早明浦ダムの湖底の様子が写し出されると、もうすぐ夏だなあ、という気がします。
しかし、渇水のニュースは流れても、水位が戻ったという報道に触れることはありません。地元では流れるのでしょうが。
容疑者逮捕のニュースは流れても、実は無罪でしたという報道がなされない、というのにすこし似ています。
さて、今回の「シリーズわたしの出版体験」は柘植智幸さんです。
柘植さんのお仕事内容についてはこちらをご覧ください。
人材の採用、定着、育成を手がけている若手のコンサルタントです。そして今回出版されたのが『上司の言葉はなぜ部下に届かないか』(あさ出版、6月20日発行)です↓
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4860632192.html
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0107942774
http://www.asa21.com/korekara.html
現在好評発売中です。
■出版までの経緯
今回の柘植さんの本には、不肖本多も幾分関わりました。
本多が柘植さんとお会いしたのは、昨年11月末だったと思います。その後、1月に出版社を紹介して、今月発行、と割合順調に進みました。
最初にお会いした印象は、柘植さんがまだ20代で1億くらい稼いでるコンサルタントであることにまずびっくりでしたが、それより、ものの見方の切り口が斬新であることに感心しました。いちいち目からうろこでした。
私がこれまでに聞いたことのない意見でしたから、そのとき別の企画書も示していただいたのですが、これは企画書で勝負するより本人を見せたほうが早いと判断し、さっそく出版社に声をかけることにしました。
あえて悩んだことと云えば、どこの会社に声をかけるかでした。
声をかけた相手を天びんにかけ、一番良い条件のところに落とす、オークションのようなことは、本多の立場ではできませんので、柘植さんにとっても戦略上マッチベターな選択を心がけました。
一応出版社にはポイントを伝えておきましたが、打ち合わせの結果、本多が説得するまでもなく、出版社も柘植さんの魅力を理解し、出版はすぐに決定となりました。
出版は決まりましたが、いかなるテーマで行くか。あさ出版では、担当編集者が柘植さんにインタビューし、その中からテーマを選ぶということになりました。
話がここまで来ると、もはや本多には出番がありませんので、あとは当事者間で実務を進めてもらいました。その間のことは以下のインタビューをご参照ください。
■著者の柘植さんに聞く
―そもそも出版の目的は
「一言でいえば出版の世界で自分を試したい、ということです。
じんざい社のこと、柘植智幸のことをたくさんの人に知って欲しい、という思いももちろんありましたが、自社のPRというよりは、自分の考えや主張が出版の世界でも通用するのだろうか、と
いうトライアルがしたかったということです」
―トライアルは順調ですか
「出版社の担当営業のかたからは、書店さまから事前注文が、
4,500冊あった、これは大変よい反応だと聞いています。
また発売直後にすぐ3,000部重版の決定もしてくれました」
―それは順調。ご同慶の至りです
「ベストセラーになれば、本多さんにもお返しができますしね」
―ありがとうございます。ぜひ大ベストセラーになって欲しいものです。ところで、近年、未曾有の採用難と謂われています。柘植さんは採用コンサルティングでも超売れっ子なわけですが、採用をテーマに選ばなかった理由は
「採用の戦略戦術は、個性的なもので会社によって大きく異なり
ます。また、時代や世代により変化が激しい。長生きできる本にはしにくいテーマなので、今回の上司本にしました。また、よい上司のいる組織は、採用でも好結果を出します。上司は組織の根本ですから」
―他の上司本との違いは何でしょうか
「リアルタイムの問題をリアルに解決する本です。上司と部下の問題は、戦国時代からその本質は変らないですが、解決の方法は時代によって変化します。その理由は、若い世代の価値観の変化にあります。
今書店に並んでいる多くの本は、建前論、リーダーシップの教科書通りの理屈ばかりが述べられ、上司と部下の本音がない。現実感のない本です。
問題の捉え方も、中高年の妄想で、20代、30代社員の目線で書かれたものがない。この本では、上司と部下の心の中で起きている本音を若者の目線で切り取ってみたかった」
―他の上司本にはない、リアルな問題提起をしていると
「はい。この本に紹介したことは、すべて私が現場で目の当たりにした実体験、あるいは直接本人たちから聞いたことです。この本には、いわば若者たちの言霊が詰まっていると思います。
すべての若者には育つ意欲があります。多くの場合、上司が育て方を間違えているか、ひどいケースではかえって育つのを邪魔している。
この本では若者の本音を詳らかにしています。彼らの本音を知ることで、上司と部下の問題の多くは解決できると思います」
―タイトルはご自身のアイデアですか
「いえ。6月の半ばに出版社から知らされました。決まりましたよ、と。でもいい感じのタイトルでしたから、不足はありません」
―最後に何か
「今回、最初のインタビューの後に編集部のほうから、さまざまなシチュエーション設定や質問項目が出てきました。
担当スタッフが女性だったため、普段私が気に留めていないようなこともいくつかあり、本づくりの過程で改めて女性の視線というものを気づかされました。
お陰さまで、また視野が少し広がりました。担当スタッフのお二人には感謝しております」
―お忙しいところありがとうございました。
■担当編集者に聞く
あさ出版の担当編集者Yさんには、柘植さんのインタビューの席で一回お会いしてましたが、改めて話を聞くと、共通の知人がけっこうたくさんいることがわかりました。ま、それはともかく、今回の本の手ごたえをお聞きいたします。
―まずどんな本にしようと思いましたか
「素朴な疑問にすっきり答える!が全体の本づくりのイメージでした。ほぼ、そのように出来上がったかと思います」
―本の売りはなんでしょう
「上司と部下の世代間ギャップの正体が明らかになる。これを読めば若者の心の内がわかる!」
―進行はどうでした
「最初に著者にインタビューし、その中から構成案、プロットを絞り込んだので、その後の進行はとてもスムーズに行きました」
―具体的には
「こちらの構成案に沿って、柘植さんに答えていただく形で進めました。柘植さんご自身引き出しの豊富な方ですので、問題の捉え方や答えに説得力があり、テンポよく進めることが出来ました」
―テーマを上司と部下に決めたのは
「始めに仮タイトルを、上司の気持ちが部下に伝わらないのはなぜか、というようにしてスタートしましたので、その延長で。
この本のサブタイトルは、部下の気持ちはなぜ上司に伝わらない
か、なのですが、タイトル案では、【上司の言葉はなぜ部下に届かないか、部下の気持ちはなぜ上司に伝わらないか】でした。
これではあまりに長い、ということで、始めの一行を本タイトルとし、二行目をサブタイトルにしたのです」
―次回策の話もあるそうですが
「柘植さんは本当にたくさんテーマを持っている人なので、進行の途中で【ダメな上司の操縦法】という企画を思いつきました。出版が実現するかどうかは、この本の売れ行きにもよりますが、ぜひ実現させたいと思っています」
―「ダメな上司の操縦法」ですか。『上司の言葉はなぜ部下に届かないか』を裏返したような本ですね
「女性読者にうける本になると思います」
―女性にうける本が売れるという時代ですから、期待できそうですね。本日はお忙しいところありがとうございました
■まとめ
上司本というのは新しい言葉で、従来のカテゴリーではリーダーシップ、書店でもリーダーシップのコーナーに置かれているのが普通だと思います。
最近、できる上司とかすごい上司などと、「上司」とつくタイトルが多いので、「上司本」という括りで呼ばれるようです。部下の育成指導などもこのジャンルに収められます。
『上司の言葉はなぜ部下に届かないか』が、何10万部を超えるベストセラーになれば、本多としても大変うれしいのですが、本の目利きとしては、この本は手堅く売れる本になるだろうと思っております。
それは始めに出版社を紹介した段階で考えていたことですから、順当な結果になったと思っておりますが、何かの拍子に物凄いベストセラーにならないかなという思いが底堅く残っているのも事実です。
本はとにかく売れたほうがよい。一冊の本は、いろんな人の思いを載せ、今日も書店で読者を待っております。
ではまた来週。
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◆◇今週のおすすめビジネス書◇◆
【上司の言葉はなぜ部下に届かないか】
著者:柘植 智幸 出版社: あさ出版 (2007/6/20) 価格:¥1,470
《内容紹介》
部下は「なぜ」、やる気がないのか、あきらめるのが早いのか、ノミニケーションを断るのか、辞める前に相談しないのか・・・
上司は「なぜ」、何でも相談しろよと言うのか、会社で爪を切るのか、聞いてないよと言うのか・・・
今、上司と部下の「意識のズレ」がかつてないほど深刻化している!上司の言動はなぜ部下のやる気をなくすのか、部下はなぜ「信じられない」行動をとるのか、その「差」の埋め方を、具体的に解説します。
《著者プロフィール》
柘植 智幸(つげ ともゆき)
株式会社じんざい社 代表取締役
1977年、大阪生まれ。大阪ビジネスカレッジ専門学校経営学科卒業後、自分の就職活動の失敗経験などから、大学での就職支援、企業での人材育成事業に取り組む。就職ガイダンス、企業研修、コンサルテーションを実施。組織活性化のコンサルティングや社員教育において、新しい視点・発想を取り入れ、「自ら考え、自ら行動し、結果を出す人材」に変化させる手法を開発し、教育のニューリーダーとして注目を集めている。銀行系の総研や各地の商工会議所での講演実績も多数あり、セミナー業界では、「若手社員活性化NO.1講師」と定評がある。2006年4月、スターティア株式会社(東証マザーズ上場)と共同で人材総合サービスのスターティアレナジー株式会社を立ち上げ、取締役も兼任している。
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