おはようございます。
本多泰輔です。
参議院選挙ですね。
衆議院総選挙に較べると、例年いまひとつ盛り上がりにかける観のある参議院ですが、今年はいろいろ話題豊富、どこまで投票率が伸びるでしょうか。
巷間、「お灸理論」で自民不利と謂われますが、ここ数年自民党は負けていないですからね。一昨年の郵政選挙の時も、不利だ不利だという公示前の予想を大きく引っくり返してのほぼ完勝。小泉ブームは例外という人もいますが、結局のところは投票日までわかりません。
ま、2週間後の結果を注目しましょう。
もう一つの注目は、中国のダンボール6:肉4の肉まんでしょうか。食べ物でないものをつかったという点では、本邦ミートホープ事件を凌いでいました。
ダンボール肉まんでちょっと思い出しましたのは、昔なつかしの駄菓子。物凄くあいまいな記憶ですが、紙に何らかの味のあるものが塗ってあり、それしゃぶる(舐める?)ような品物があったような気がします。
食べ物ではなかったわけですが、子供心にやばそうだなあと思った記憶があります。
食品の曲者は、ダンボール肉まんをつくっていた中国のおじさんも使っていた香料と食品添加物ですね。味と匂いと触感を捏造されたら人間の味覚では手も足も出ません。
日本でも香料はグレーゾーンですし、その他の添加物も内容表示が厳格でないものがけっこうあります。食の安心と安全を考えた時、中国ほどではないにせよ、わが国とて同じ土壌の上に立っているという状況を考えないわけにはいきません。
■新風舎提訴される
2週間ほど前に、新風舎から本を出した4人の著者が、同社に対し損害賠償の民事訴訟を起こしたというニュースが流れました。
多くの人にとっては、赤城農水相の事務所経費問題のほうが、はるかに興味のある話題でしょうから、新風舎提訴を憶えてる人は少ないと思います。
4人の提訴の趣旨は、自分たちの著書は全国書店で販売されるはずだったのに、わずかな店舗に数冊しか並んでいなかった、契約の時と話が違うから763万円の損害賠償を払え、というものです。
先週の「読売ウィークリー」(読売新聞社発行)でも、追っかけ記事が出てましたし、同系列の読売テレビ「ウェークアップ」(土曜朝9時放送)でも5〜6分ほど、この件ついて報道しておりました。
いずれの報道も、団塊の世代の大量リタイアが発生する今日、出版をお考えになる人は多いでしょうが、みなさん自費出版する時は気をつけましょうね、というくくりかたです。
たかが、と言うと訴訟された4人のかたに申し訳ないのですが、金額もそう大きいわけでもなく、また契約の行使について当事者間で揉めることはよくあることで、この程度のことで記者会見に多くのメディアが集まったという点で、すでに普通ではありません。
昨年、碧天社倒産の時に各メディアともある程度問題の背景を仕込んでいたのでしょうな。
新風舎は、年間の新刊発行点数が2,000点を超えるそうですから、出版業界トップの講談社並みです。いわゆる自費出版系の出版社では、文芸社と並ぶ両巨頭だそうです。
■自費出版って?
自費出版は、文字通り自分のお金で本をつくること。
個人で本をつくる人はまだ珍しい存在でしょうが、企業が配っている『○○会社20年史』もカタログも、つまりは自費出版です。出版社が発行する本との違いは、書店の流通ルートにほとんど乗らないことです。
わたしの手元には、昭和34年発行の『首都東京大観』(東京都観光協会編)という社団法人東京都観光協会が出した写真集があります。
これは、定価3千円(当時では超高額本)となっていますが、まあ自費出版でありましょう。自費出版だから、商品ではないということはありません。
また、自費出版であろうと「他費出版」であろうと、読者にとってはどうでもいいことで、今日、『首都東京大観』は昭和34年の東京の風景がわかる貴重な出版物の一つだとわたしは思っています。
希少な自費出版物が、後年非常に貴重な資料になることはよくあることです。
本来こうした自費出版は、何社かから見積もりを取り、適当なところへ制作を依頼すればよいわけで、話は複雑なものではなく誤解の入り込む隙間はほとんどありません。
もし自費出版の本をなんとか書店に流通させたいとすれば、手数料または口座借用の賃料を払って販売を委託する方法があります。
制作費と流通手数料・販売費は自分持ち、売れたらその分は収入です。大手出版社がやってる自費出版本の流通は、たいていこのパターンで、あくまで自費出版は自費出版、必要があれば「あなたの本」の流通委託も承りますよ、というスタイルです。
ただし、流通させるだけですから、営業してくれるわけではありません。出荷費用と倉庫保管料に手数料を載せた程度ですから、総合大手出版社のやっているサービスでも割合リーズナブルな金額です。
自費出版系出版社の場合、「書店に並べる」とは、こうした自費出版本の流通を代行しているわけではないようです。
普通、自費出版では著作権も出版権も著者本人に帰属するのですが、自費出版系の場合、出版契約は普通の出版物同様、出版権を版元に設定していると聞きます。
碧天社倒産の時にもこの契約があったため、自費出版でありながら自分の本を回収できないということが起きました。自費出版なのに、本は他人のものというのは自費出版といえないでしょう。だから自費出版系の会社では共同出版とか言ってます。
■出ないはずの本が書店に出て行く無理
書店流通を前提にした出版で、本売って暮らしていこうとするなら、初版は最低5,000部以上必要です。
暮らしは他で立てるから、とにかく損はしない程度で、と思っても制作販売コストを回収するには3,000部は必要となります。
日本に書店は約16,500店舗あるといわれます。そのうち100坪以上の店が約4,000、300坪以上だと約1,000あります。
じゃあ1,000部つくって300坪以上の店に撒こうと考えても、そんなに都合よく流通現場が動いてくれるわけがありません。新刊の発行点数は年間76,000を超えるのです。
広告や営業のない本をわざわざ置こうなんて書店は、ほぼゼロです。
本を流通させるには、歴史と実績のある出版社か、営業にコストをかけている出版社から出すか、ほぼ同等のコストを自ら負担するしかありません。
そして広告費や営業費にコストをかけている以上、1,000部や2,000部売れたくらいで採算が取れるような収支構造はありえません。
やはり効率よく1万部に届くよう、初版と重版部数を設定しなければならないのです。
つまり本気で自費出版の本を売ろうと思ったら5,000部以上の初版部数が必要ですし、広告・営業費用も見なければいけないわけです。
もし、「あなたの本を全国書店に並べます。ベストセラーになるかもしれません」というコピーに対し、ベストセラーになるかどうかは別として、言葉どおり忠実に実行しようとすれば、軽くても400〜500万円の負担が発生するだろうと思います。
多分、個人の趣味や記念にそこまでかける人は少ないでしょう。
だからといって、広告・営業コストを節約して、HPで宣伝しFAXで書店に新刊案内を送っただけでは、全国書店はもとより主要書店に本が並ぶこともありません。本はお金をかけないと売れないのです。
それを著者と出版社で半分こしましょう。250万円ずつです。
というのは、一見可能なようですが、出版社は5,000部の返品をかぶるリスクがありますから、やり切れないでしょう。しょせん売れなきゃ赤字ですから。
250万円に目をくらませるのはほどほどにして、やはり売れる企画を選び出版社らしくやろうとなります。
全額著者が負担してくれれば問題ないですが、個人の趣味や記念にそこまでやる人は少ないでしょう。
そういうわけで、初版500部は著者にとっても版元にとっても負担が小さいのでしょうが、発行部数500部の本を書店に配本して売ろうというのは、期待するほうも無理筋だと思います。
まあ、それに近いことを言われたから提訴したのでしょうが。
■まとめ
本メルマガの読者は、自費出版などお考えではないと思いますので、今回は余計な話でしたが、もしすこし費用協力をしてもよいとお考えになることがあったら、その時は「これは自費出版ではない」ということを明確に認識してください。
ですから「作家になりませんか」と呼びかけている自費出版系の出版社ではなく、本を売ることに血道をあげている出版社をお訪ねになることをお勧めします。
基本的に本を売ることに集中している出版社は、本は商品としか見ておりませんので、協力費よりも企画が売れそうか、そうでないかで判断します。
企画が売れそうなものであれば、協力費などあなたの言い値です。
ではまた来週。
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