お久しぶりです。
あれ、休刊したんじゃなかったのか、もう出てきたのか、とその節操のなさに呆れているかた。そもそも休刊したことを知らず、まだやってたのかと思われたかた。
それよりこんなメルマガがあったことさえ知らず、今日まで有意義な人生を送ってこられたかた。
みなさまお元気ですか。本多泰輔です。
わたしは元気です。
再開したわけではないんですが、都内新宿紀伊国屋書店近く、とあるビルの地下で樋笠社長にビールと串焼きをごちそうになったとき、はずみで「休刊してから書きたいことがいろいろと思いついた。ゲリラ的に書いてみるのもいいかな」などと口走ってしまい、
「それじゃあ著者インタビューのときに」ということで今回の運びとなってしまいました。軽率とは、こういうことをいうのでしょうな。
しかし、休刊してからあれほどいろいろ思いついたことも、いざ書くとなると意外につまらんことばかりで、さらにそのほとんどは忘れてしまったため、結局あまり書くことがない。
また休刊したい気分です。って、現在休刊中でした。
『たった3秒のパソコン術』(中山真敬著 三笠書房知的生きかた文庫)が売れてるみたいですね。最初にタイトルを聞いたときは、何の本だ、と思ったのですが、テスト販売でかなりの好成績を挙げたと聞いて、わかる人にはわかるんだねと思いました。
最近、タイトルだけではよくわからん本がけっこう幅を利かしてますから、ビジネス書のタイトルはまたひとつ文芸書に近くなったようです。
『不機嫌な職場』(高橋克徳他著 講談社現代新書)も一見小説のごときタイトル(だって職場が機嫌悪くなるわけないし。不機嫌なのは職員でしょ)ですけど、まあ、両者とも一般人でもなんとなく空気はわかる、わかる人には痛いほどわかる、そういうたぐいでしょうかね。
それにしても3秒というのは短かすぎないか、と本多の周辺の多くがいいます。
これが他の製品だったら不当表示で訴えられるところですが、なぜか本や雑誌はOK。フィクションという位置づけなんでしょうか。
もうすこし好意的に比喩としてとらえてもらっているのかもしれません。「比内地鶏」も比喩としてとらえてもらえば、会社もつぶれずにすんだのですが。
食品業界は出版界ほど世間がおおらかではないようです。簡単、早い、ということを強調するのに、よく時間で表します。
3秒(多分これは最短記録)、3分、3日、なぜか3ですね。「3年で辞める・・・」とかいうのもありました。たいてい3です。
山田雅夫さんというかたが「15分スケッチ」という技法をいくつかの本で披露していますが、一番売れているのは『スケッチは3分』(光文社新書)、やはり3とつけたほうがいいんですね。
そういえば『財務3表一体理解法』(國貞克則著 朝日新書)も、やっぱり「3表」が効いたのでしょうか。
しかし、「7つの習慣」とかいうのもあったな。
7でもいいのか。日本人は。
そういうわけで(?)、以下樋笠社長の著者インタビューです。
■外資系コンサルティング会社では書けなかった本音
樋笠:いつもお世話になっております。横田さん、本日はよろしくお願いします。まずは本を書いたきっかけを教えてください。
【ソニーをダメにした「普通」という病】
横田:2年ほど前でしょうか。ある小さい出版社から「本を書きませんか」とアプローチがありまして。
それまでは自分の言いたいことが本では伝わらないと信じていましたので、全く書こうとは思っていなかったんです。
けれどもサラリーマン(外資系のコンサルティングファーム)を辞めて独立して2年たった頃でしたので、いやまてよ、今なら当時書けなかった本音が色々書けるかな、と思い直して。それで少しづつ企画を書き始めたんです。
樋笠:なるほど。その出版社さんとは?
横田:結局、音信不通になってしまいました。
そのころ、ちょうどこの「出版メルマガ」を興味深く読んでいまして。本多さんのがんこな変人ぶり?を感じとって、アドバイスしてもらおうと思い連絡しました。自分でも出版社に売り込む自信はあったんですが。
■本多氏のアドバイスは役に立ったのか?
樋笠:私も当時、ご連絡をいただいてビックリしました。
横田さんは色々とコネクションもありそうだし、本多さんに依頼しなくても出版できそうかな、と思いましたので。確か最初の面談は・・・池袋でしたよね。本多さんのプロデュースは、いかがでしたか?
横田:結果的に、本多さんに企画書を見てもらって大正解でした。自分の中ではソニーを題材としてケースにするアイデアは全くありませんでしたので。
ビジネス全般に通じる原理原則を書いた企画だったのですが、本多さんのアドバイスによって「ソニーを通じて書いた方がより出版社にも通りやすいし、世間の注目を集める」ことに初めて気づきました。
樋笠:そうでしたか。ありがとうございます。それから本多さんに出版社も紹介してもらったんですか?
横田:はい。企画を書いている段階で、ある出版社さんと引き合わせてもらいました。残念ながらその出版社さんは、なかなかGoサインが出ずに、それなら自分でも探してみようと。
以前から大前研一さんの「ビジネスブレイクスルー」の講師をやっていまして、そこがゴマブックスさんとお付き合いがあった関係で、企画書と原稿を送って見てもらいました。すると一発でOKを戴いて。決まりました。
樋笠:なるほど。紹介先が決まらなかったのは残念でしたけど。良いご縁があってよかったです。それから書き上げるまでは、いかがでしたか?
横田:この世界では私も新人なものですから。編集者の方に色々とアドバイスをいただいて相当手を入れていきました。とくに第4章はそっくり追加しましたし。
ただ全て編集者のいうことを聞いた訳でなく、10要求されて、自分で納得のいく3を受け入れた、という感じで。
樋笠:そのあたりは、頑固な横田さんらしいですね(笑)。今年の2月発売でしたね。実際にデビューされたご感想は?
■ソニー暴露本?という批判はゼロ
横田:タイトルがタイトルだけに、へんな暴露本と勘違いされないかと、それが一番の心配でした。
3か月以上経った今も、そういう評価は一切ないので安心しました。
amazonのレビューもすでに10件以上書きこまれていますが、私は賛否両論というか、この本がいろいろ議論のきっかけになってくれれば非常に幸せに思います。
みんなが忘れかけているような、人のあり方、仕事のあり方、ちょっと大袈裟ですが日本の国のあり方について、伝えたい気持ちが強かったものですから。
樋笠:慶応卒、ソニーを経て、外資系企業を渡り歩いたといえば、かなりエリートな人という印象ですが。この本を読めば、現場たたき上げで職人気質な横田さんのガンコさが良く伝わってきますよ。リズムも良く、内容も痛快ですね。
横田:ありがとうございます。音楽やりたかった身なので文章のリズムにはこだわりましたので。うれしいですね。
いまは2冊目の企画に取り掛かっています。まだ出版社は決まっていませんが、営業の本です。内容はまた楽しみにしていて下さい。
■コンサルタントは自分の考えをカミングアウトせよ
樋笠:最後になりますが、これから出版を目指すコンサルタントの方へアドバイスをお願いします。
横田:コンサルタントとして、自分の考えに共感してくれるお客さんのほうが効果も上がるし、お互い本音で付き合えると思っていましたので。
本が出たことによって、自分の価値観や考えに賛同してくれるお客さんと出会えるようになったと実感しました。この効果は非常に大きいですね。
それから、カミングアウトした気分といいますか、なんだか気分もすっきりしましたね。
物事の本質に迫っていった結果として、他人と違うことをしたり、出る杭になったり、周りから変人と言われるものですが、私はそれでいいんだとハッキリ宣言できた気がします。
樋笠:なるほど。やっぱり横田さんは「普通」ではありませんね。ほか出版社選びについては?
横田:はい。どうせ出すなら販売力のある大手の方が良いのではと思います。
決してゴマブックスさんがだめという意味じゃなんですが、やはり大手は広告量などが半端じゃないですから。
私の本は、企画が良かったのか、ほとんど広告がなくても既に増刷を重ねてそれなりにヒットできましたが、やはり商業出版は、露出して、読まれないと意味がないですから。
樋笠:なるほど、わかりました。本日はインタビューありがとうございました。次回作も期待しています!
■まとめ
再び本多です。
「本田氏のアドバイスは役に立ったのか」という刺激的な小見出しがあったので、どれだけ誉めてるかと思ったら、結局大して役に立ってないという、身もふたもない結果が記されていました。
ま、そんなもんでしょう。
結局、自分のことは自分で誉めるしかない。これは人類誕生以来の鋼鉄の法則ですな。
ところでビジネス書を一番多く読む世代というのは、何歳くらいでしょうか。
30代、40代、50代?
ビジネス書の愛読者というのは、おそらく50歳代が多いでしょう。
昔から読者はがきで一番多い世代ですから。
しかし「ビジネス書の愛読者」って世の中にどのくらいいるでしょうかね。読書家といわれる人で、ビジネス書を中心に読んでますって人いますか。わたしは会ったことがありません。
おそらく「ビジネス書の愛読者」という存在自体、極めて希少であろうと思っています。極めて稀な「ビジネス書の愛読者」にだけ読まれている本じゃ、書店じゃ陽の目を見ませんわね。
つまりより多くの人に読まれる本、ベストセラーを出そうとするならば、普段はビジネス書なんか見向きもしないような、彼方にいる読者を取り込まなければいけない。
世代でいうと多分20代後半から30代、仕事以外にもいろいろやることが多くて本なんか読んでるヒマがない人たちです。
こうした、ほとんど本など読まない人をとりこまなければベストセラーにはならんのだろうと思います。
では、どうやって取り込むのか。
ひとつは共感できるってことだと思います。
テーマに共感できる、これは最重要ですけど、それだけではない。
ディティールにおいても共感できるかどうか、ディティールというのは文章表現や事例なんぞでしょうかね。
なにしろプロット、すなわちビジネス書の筋書きは昔も今も変わりないのですから、変えるとすれば装いを改めるしかない。
どうも上から目線で講釈たれてベストセラーになる時代ではないようです(一部のコアな人はいまだに歓迎してくれますが)。そういうことは見えてきたように思います。
それではまたそのうち、どこかで。
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◆◇今週のおすすめビジネス書◇◆
【ソニーをダメにした「普通」という病】
著者:横田宏信 出版社: ゴマブックス 価格:¥1,365
本書は、部品検査員から始まった末端ソニーマンとしての13年間と、その後の、折々ソニーにも関わってきた経営コンサルタントとしての12年間の経験に基づき、ソニーさえも蝕んだ「普通」という病(普通病)の症例を綴ったものである。「普通病」とは、企業文化の「悪しき普通」化を、その忌わしさから病に例えたものであり、「悪しき普通」とは「本質的には非常識な一般常識」を意味する。
(著者より)
実は、ビジネス書を書いたつもりが私にはありません。魅力的な「生き方」の提案書を書いたつもりです。私は、より魅力的な「生き方」をする人々の集団である企業や国が、結局はより経済的にも繁栄するのだと思っています。例えば、多分、奇跡とも称される戦後日本の高度経済成長は、魅力的な日本人が生み出したものに違いありません。そうしたことを、経営コンサルタントの立場から書きました。ですので、普段はビジネス書を手にとることがない方々にも、この提案書を是非とも吟味していただければと心から思います。
《著者プロフィール》
横田 宏信氏
ソスピック株式会社 代表取締役
1958年埼玉県川口市生まれ、久喜市育ち。慶應義塾大学経済学部卒業後、ソニー株式会社に勤務。「出る杭」歓迎であった成長期のソニーの中でもひときわ「出る杭」ぶりを発揮、英国ソニー赴任期間中には、多国籍有志連合を結成して自らの企画を勝手に推進、世界に先駆けて、ソニーでも初の本格SCM(Supply Chain Management)革新を 成功させた。
ソニー退職直後の起業に失敗するも、その後は、外資系大手のIT会社やコンサルティング会社の要職を歴任。Big-5と呼ばれた世界5大会計事務所系コンサルティング会社の内、PwCコンサルティング(現IBMビジネスコンサルティングサービス)ではシニアディレクター、 CGE&Y(現、NTTデータ系のザカティコンサルティング)では、コンサルタントとしての最高職位であるヴァイスプレジデントに就任。NHKの特番で取り上げられた成功プロジェクトの実績も持つ。
2004年、ソスピック株式会社を設立。企業やコンサルティング会社や学術機関へのコンサルティング活動に加え、講演活動も活発化させる。大前研一率いるビジネスブレークスルーの番組講師も務める。
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