新年明けましておめでとうございます。
本多泰輔です。
昨年の年間ベストセラーのトップは、やっぱり『1Q84』でしたね。ほぼダントツ、鉄板でした。
ただ総合順位のトップ10で、いわゆる小説は『1Q84』のみ(いや、『人間革命』vol.20も小説かな、でもノンフィクションでカウントされてます)、ミリオンセラーもこの『1Q84』と2位の『読めそうで読めない間違いやすい漢字』の2点だけで、全体的に発行部数は伸びなかった年というのが印象です。
ビジネス書では、総合トップ10に入ったものはありません。そりゃ、まあいつものことですけどね。ミリオンセラーもありませんでした。それもいつものこと。
ただ、50万部を超えたものもなかった。これはちょっと寂しい現実です。恐らく20万部を超えたものさえ、わずかな点数だったと思います。こりゃすこしやばいな。会話とか話し方は、健闘著しかったですけどね。
昨年、出版業界の市場規模がついに2兆円を切るという報道がありました。1兆9000億円台の真ん中より下の数字になるだろうと。
書籍が8000億円台半ば、雑誌のうち週刊誌が2000億円ちょっと、月刊誌がほぼ書籍と同額、ちょうどバブルピークの平成元年の一年前あたりの水準と構成に戻ることになります。
ただし、あのころは右肩上がりの途中(出版業界のピークは96年)、いまは右肩下がりの途中で、いまだに底を打つ気配がありません。
ですから、昨年もだいぶ業界再編がありましたが、当分の間その傾向は続くでしょう。
新年早々、暗い話題からスタートしてしまい、申し訳ありません。
『文章力の基本』(日本実業出版社)という、なかなか健闘しているビジネス書がありますね。已然として本の売れ筋は「読む」(漢字の本)「話す」(会話と話し方)「書く」(文章力)と「脳」(考えをまとめる)から離れていないようです。
江戸幕府以来、人材登用試験は「読み書き算盤」が基本でしたから、それはいまでも生きているのかもしれません。多分、算盤はITかPCなんでしょうな。
そこで今回のテーマは、本多流「書く技術&考えをまとめる技術」を披露いたします。
ほんのお年玉です。ご笑納ください。
■まずExcelに書くべき項目を適当に書き散らす
まず全体のテーマを決めておくことが前提です。企画の技術ではなく、書くための方法論ですから。
言ってしまえば、要するに小項目を思いつくままに書き留め、それを後で大項目ごとに分類して整理するという方法です。一人ブレスト、一人KJ法ですね。
小項目の書き出しは、何人かでやってもよいですが、大項目の分類はあらすじ(構成)づくりですので、著者一人でやったほうが効率的にも品質的にもよいと思います。
Excelを使うと便利なのは、あとで章ごとにまとめるのに移動させやすいからで、ポストイットや付箋を使っても同じことはできます。
ただExcelだと嵩張らないし、持ち運びにも便利、また参考資料のURLもセルに貼りこんでおけるので、実際に原稿を作る際にも便利という利点があります。
さて、まずはExcelを開きます。
開いたら、Cの行の上から下へ、書きたいこと、書くべきことを短い言葉で、思いつくままに書き込みます。ひとつのセルに一項目が原則です。
これは小項目かな、大項目かな、などと考える必要もありません。思いついたらとにかく書き込む。各項目のつながりを意識する必要もありません。
明らかにつながりのある項目が、あとから思いついた場合には、左記に書き込んだセルと同じ列でひとつ後ろの行(D行)のセルに書き込みます。さらにまた思いついたら、そのまた後ろの行に書き込んでいきます。
この作業は何日間かかけて行います。
書き出した小項目を見ているうちに、新たに項目が思いつくことは多いので、出力紙を持っていれば出先でもちょっとした時間に書き込みを追加することができます。
こうして書き込んだ項目が50〜60個を超える数になるまで作業を続けます。
20〜30個でもう書き尽くしたと思ったら、それはその人はまだ本を書く準備ができていないということですから、この段階でしばらく時間を置いたほうがよいでしょう。
■小項目の群れの中から章タイトルを見つける
書き出した項目がそこそこの量になったら、各項目のチェックを行います。
なにを書くつもりで立てた項目だったかわからなくなったとか、同じことを別々の言葉で表記しているだけの項目などは、削除したり一つにまとめたりという整理を行います。
項目を整理していくと2割くらい減ってしまうことがあるかしれませんが、この段階では項目の補充を行わず次に進みます。
項目は思いつきで書き込んでいますので、範囲の広いものと狭いものとが混同しているはずです。
範囲の広いものは、ExcelのAの行へ移動させます。そうすると広い範囲の項目はの行に、狭い範囲を示す項目はCの行に並びます。
当然、Aの行のほうが項目は少ないはずです。
次に、Aの行に並んでいる項目の範囲、Cの行に並んでいる項目の範囲、それぞれの行ごとに並んでいる項目の範囲が同じ程度にそろ
っているかを見較べてみます。
そしてC行の項目としては、ほかのものより範囲が広いが、A行の項目ほどに広くはないという、いわば中間項目があれば、それをBの行に移します。AからBに移る項目もあるかもしれません。
Aの行に残った項目を章の見出し、章タイトルにします。タイトルである以上、ことばの面白さも大切ですが、飾りつけは最後の最後にやればいいこと、まずは全体の構成を定めることが先決です。
次に眺めるのは章タイトルの順番です。ここであらすじのあらすじが決まります。
章タイトルを見ながら、話の大きな流れを頭に描いてみる。漠然としていたものが、章タイトルによってすこし輪郭を帯びてくるはずです。そうすると、自ずと章として不足なものがあれば、それが見えてきます。
ここで、肝心なのは最初になにを持ってくるかです。
結論をはじめに持ってくるか、序論から入るのか、現状認識から入るのか、将来予測から入るのか、導入部で構成案の性格が決まります。
確たるアイデアがなければ、一般的な序論からスタートするのがよいでしょう。
章として抜けている部分があったら、然るべき位置に章タイトルを書き加えます。これで、あらすじのあらすじ、話の大枠が出来上がりです。
次に中項目、小項目を章タイトルに応じて並び替えます。
■構成はばらつき少なくバランスよく
ExcelのAの行の第1列に第1章の章タイトルが置かれます。次のB行には中項目がいくつか、C行には章タイトルに深く関係する小項目がずらずらと縦に並びます。
第1章の章タイトルはA行の第1列に置かれますから、第1章の小項目が10本あれば、10列が項目で埋まります。
なので、第2章のタイトルは9列の空白を空けて、A行の第11列に置かれます。そうやってつくっていくと、一応見た目も目次っぽくなってきますね。
小項目によっては、どの章に置けばいいのかはっきりとしないものが出てきます。そういうときは、あまり考えこまずいったんどこか適当に置いておきます。
あまりにも置き場所不明な項目が多いようでしたら、ちょっと章立てに問題ありですが、1〜2割くらいは出てもしかたありません。
むしろこうした項目は、後で全体のボリューム調整のときにバッファーとして使えるので重宝なのです。
さて、これで一応章立てとその中身についてまとまりました。話の流れも大筋見えてくるので、なんかもう一冊完成したような気になりますが、そうではありません。
今度は章ごとの小項目の流れを眺めてみます。章ごとの話の流れですね。論理的な構成になっているか、飛躍はないか。重複はないか。
そして話の順番、つまり小項目の順番は適当か。
話を進める上で欠けている項目があれば、このとき書き加えてください。この小項目が本文の小見出しになります。
さらに小見出し(小項目)を眺めていると、章ごとにその数にばらつきがあることを発見します。ほぼ例がなく発見します。やけに小見出しの多い章とあまりにも少ない章があります。
これは本作りの上であまり芳しくありません。
小見出しの量は、概ね同じ量であることが望ましい。
中心になる部分は厚みがあってもよいですし、序論やまとめは少なくても構いません。それでもあまりに極端なのは問題なので、全体的にならす必要があります。
そのとき役立つのが先の置き場所不明の小見出し(小項目)です。
量的バランスの調整に使えます。一つの章のボリュームが過剰に膨れ上がっているときは、中項目を章に格上げして小見出しを平均化することもあります。
そういう調整では、どうにもならないのであれば、新たに項目を考え出して少ない部分を埋めていくしかありません。
中項目は、実はこのとき以外に出番はないので、この段階で使いみちがなければ、削除しても構いません。
■最後に何ページくらいになるかボリュームチェック
さて、これで構成案ができました。
すなわち目次であり、あらすじ(プロット)が出来上がったわけです。やれやれ、よかった、よかった。一応考えもまとまったことと思います。
ところで、何ページくらいになるのでしょうか。
各章の小見出しが10本くらいで、全体では6章で60本の小見出しだったとします。さて、まずは各小見出しの文少量は何ページくらいになるでしょうか。
だいたい1ページ500〜600字くらいを目安として、すこし概算してみましょう。小見出し1本は2ページくらいですか、3ページ以上になりますか。
小見出し1本が2ページだと、本文全体は120ページ、ちょっと単行本一冊としては足りないですね。3ページなら180ページ、これくらいならOKです。
実際には、小見出し1本で1ページ分しか書けないとしたら悲劇です。それではよほどのことがない限り本になりません。残念ながら、振り出しに戻ってやり直すことになってしまいます。
でも、ここでもうちょっと考えてみてください。
なにか添付すべき資料やデータはありませんか。説明を補足する図表類はありませんか。なにか適切な事例はありませんか。小見出しの量は変わらなくても、書くべきことは増えませんか。
考えてるうちにけっこういろいろ思いつくものです。
さあ、これで構成案は完成しました。あとは書くだけです。
ただし、書き始めるのは出版社が決まってからのほうがよいですよ。
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