今年は暑さ強迫症で、10月になってもまだ暑い日があるんじゃないかという疑いが残ってましたが、どうやらもう夏にはもどりそうもないのでほっとしています。本多泰輔です。
間の空いたメルマガ発行をしていますと、世の中がどんどん変わってしまいます。総理大臣は変わるし、中国とは険悪な雰囲気になるし、ドルは下がるし、検察幹部は逮捕されるし、出版社はつぶれるし、本当にいろいろありますね。
さて、今回のテーマは「語り口の技術」です。
要するに原稿の書き方なのですが、それを持って回って「語り口の技術」というところが、いわば語り口の技術なわけです(?)。
おわかりいただけますでしょうか。
企画が決まっても、原稿が進まないということは、よくあることです。原稿を書いても、編集者がOKを出さないということも、さらによくあることです。わたしが書いた原稿にさえOKを出さない編集者もいます。
そういう時は面白くないので、ほぼ同じ原稿を再提出します。それでOKが来るというのは、どういうことなのか。たぶん前の原稿は読んでいなかったのでしょう。
というのはウソですが、原稿に関しては、近年かなり細かい要求が来るようになっています。なぜかというと、原稿が面白くて、わかりやすくないと本が売れないからです。
読者が我慢して本を読んでいた時代は、もう終ったということですね。読者に我慢を強いる本というのは、教科書以外にはなくなりました。
読んだら得する、儲かる、役に立つ、という惹句は、タイトル周りではありですが、本文に得する、儲かる、役立つを並べてもあきまへん。そのくらいの餌では、読者は我慢して読んではくれないのです。
知らず知らずのうちに、いつの間にか最後まで読んでいたという、詐欺師のような文章が理想的といえます。ま、しかし、そんな魔法の文章を書ける人は、たぶんいないでしょう。
■書けばいいというもんじゃありません
昔の本は、書けばいいというもんだったんです。
ビジネス書といえども、企画が通れば、後は著者が書いたものを本にするだけという時代がありました。
読者は、わかりにくさに苦労しつつ、それは自分の知識が足りないからと、我慢しながら読んでいました。つまりは、本を読むことは勉強することだったのです。
いまでも勉強のために本を読む人は多いですが、本の数が多いために、よりわかりやすい参考書的な本、教科書ガイド的な本が選ばれます。テーマも広い範囲を押さえることより、とりあえず必要なことに絞られたピンポイントで探されます。
出版点数が少なかった時代、著者も少なかったですから、原稿は書けばいいというものだったのですが、出版点数も著者も過剰供給される時代、もはや原稿は書けばいいというものではなくなりました。
出版社は、本が売れない理由だけは、よくわかっておりますので(本当は売れる理由が知りたいのですが)、どうしても原稿に対する要求が年々高くなってきます。また、そういう出版社の気持ちをまったく気づかない著者が多いことも事実です。
読者に受け容れられる原稿は、どうすれば書けるのか。究極のところは、本人のセンス次第なので、これという決定打はないのですが、それでは本メルマガのレーゾンデートルを脅かしますので、秘密の手口をお教えしましょう。要するに、わたしがよくつかう手です。
ふだんしゃべっている時は、とてもわかりやすい話をするのに、どうして原稿になると、こんなにわかりにくく書くのか。いつもは、くどいくらいの説明をする人なのに、原稿は木で鼻をくくったように、どうにも説明不十分という人がいます。
この原因を考えているとき、思いついたことがあります。
目の前に人がいれば、その反応を見ながら語り口を調整できるが、一人で原稿書くときには、だれもそれを読んでいる人はいないので、書き方を調整できないのだ。
だったら、書くと同時にだれかに読んでもらえばいいが、それもなかなか鬱陶しいし、実作業としても不可能、それならあらかじめ読み手の人物設定をして、その人物にわかるように書くという段取りを踏めばどうか。ということを思いつきました。
■読者はだれか、人物設定をしてみる
まず、書き始める前に、想定読者の人物設定を行います。
本メルマガの場合で、話を進めましょう。
1.コンサルタントないし何らかの専門家である
2.出版経験はない
3.出版界の事情にも詳しくない
4.年齢は、極端に若くもなく高齢でもない
5.知的レベルは高い
6.情報アクセスの選択肢は多い
7.性別は無関係
8.出版に強い関心がある
一応、こういうことになりますかね。けっこう狭い範囲の読者です。知的レベルが高いというのは、書き手にとって苦労が少なくて助かります。
こうして人物設定をした読者が読んでわかるか、ということが、このメルマガのクオリティということになります。
当然、メルマガを書くときには、こういう人物設定の読者にわかることであるか、興味を覚えることなのかを念頭に置き、書き進めることになります。
自分のネタの範囲内で、書けることだけ書いておけばいいでは、読者を裏切ることになってしまいます。たまに、意表を突くこともありますが、それは、まあ、ご愛嬌ということで。
そして、手法として、あえて人物設定した読者を本文中に登場させることもあります。読者代表のようなポジションですが、そういう手法は『夢をかなえるゾウ』や「もしドラ」で使われています。
著者の原稿が、読者とぴったり寄り添いながら進むという点では、こうした語り口は有効だと思いますが、ただし、ドラマをつくることは、原稿を書くよりさらに別の才能を要することですので、この手法を取り入れても成功するとは限りません。かえって混乱してしまうこともあります。
物語づくりに自信がなければ、頭の中の読者に向かって語りかける、説明するというほうが穏当かもしれません。ただ、人物設定もそれほど簡単ではありません。
このテーマに興味のある人、という設定では設定していないのと同じです。目安としては、設定項目が8つ以上あることでしょうか。そのくらいの数がないと、人物がリアリティをもって形づくれません。
人物設定も苦手という人なら、最後の手段です。だれか身近な具体的な人物を思い浮かべ、その人にわかるように書いてみてください。なるべく知的レベルの高くない人を選んで。
■毎度のPRです
またまた、セミナーを行います。
昨年好評だった「元・編集長」が再登場します。
↓
◎ビジネス出版社『中経出版』の元・編集長のセミナー開催決定!
(11/8月曜 13:00〜15:45 東京)
http://www.keieido.net/publish-seminar.html
ビジネス書の有力出版社である『中経出版』にて昨年3月まで現役の編集長を務めていた奥平恵氏によるセミナーです!
奥平氏は、中経出版をはじめ出版業界で30年以上のキャリアをもつベテラン編集者で、現在も中経出版のアドバイザーとして外部から企画を提供したり、他の出版社へも企画提供や執筆・編集業務を行っている第一線のプロフェッショナル。
そんな奥平氏の経験から、これからビジネス関係の出版を目指す方、2冊目・3冊目を目指す方へ、出版社側の本音をお話します!
さらに後半のパートでは、本メルマガ編集長としてビジネス出版社OBならではの内部情報や毒舌を披露してきた本多泰輔が、何としてでも本を出したいという方のために、より今日的かつ実践的なレクチャーをさせて戴きます。
これからビジネス書を出したい、2冊目・3冊目を狙いたい、という方には、きっとご参考になる、ここでしか聞けない豪華2本立ての内容だと思います。
※あまり大きな声では言えませんが・・・出版業界のインサイダーとして豊富な人脈・コネクションをもつ講師のお二人と名刺交換して、企画を見てもらうことが一番の出版への近道かもしれません!
先着順で締め切りますので、ご興味ある方は、ぜひお早めにお申し込みください。
<予定内容>
●第1部:ビジネス出版社の元編集長が語る、出版社側の考え方
1.著者が知らない出版社のインサイダー事情
・ビジネス出版社の編集者はどんな仕事をしているのか
2.ビジネス出版社が企画を決定するプロセスとは?
・編集会議の内幕と本を出す決裁権限
3.持ち込まれる企画書・原稿は実際にどうなっているのか?
・実際に送られてくる企画書、原稿のゆくえ
4.編集者の目に留まる企画書のポイント
・こんな企画書が注目される、こんな企画書はダメ
5.確実に本を出したい方への実践的なアドバイス
・忙しくて書く時間がない人でも本は出せる
●第2部:本が売れない時代に出版するためのポイントとは?
1.出版の効果
・なぜ、2冊目、3冊目の著書があったほうがよいのか
2.出版社を攻略する方法
・刊行スケジュールのエアポケット
・企画の穴と狙い目の出版傾向
3.なぜあの人は次から次へと本が出せるのか
・目標は年間3冊
4.著書づくりのファクトリーをつくろう
・企画書も原稿も書かない作家たち
※当日の講演内容は一部変更になる可能性もございます。
◆開催日時
11月8日(月)13:00〜15:45(開場12:45)
◆場所
ちよだプラットフォームスクエア 5階会議室にて
◆対象
ビジネス書の分野での著者デビュー、出版を目指していらっしゃる方。(とくにコンサルタントや研修講師の方、歓迎します)
◆定員
15名を予定 ※先着順に受付
◆会費
15,000円
◆お申し込みフォーム
http://www.keieido.net/publish-seminar.html
<受講者特典!>
出版企画書をご準備できる方には、本多氏より、内容に対してコメント・アドバイスをさせていただきます。また有望な企画につきましては、ご希望に応じて出版実現に向けた支援(プロデュース)をさせていただきます。
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