おはようございます。本多泰輔です。
セミナーが近づくとにわかに発行頻度が上がる、とても見え透いたメルマガです。
ポプラ社の小説大賞は賞金2000万円なんだそうで、2000万円ということはおおよそ20万部相当の印税ですから、無名の新人の本がそこまで売れると踏むポプラ社というのは、とても児童書の版元とは思えない度胸のよさです。
今回の受賞者が、いくら元人気俳優だとて20万部は確かな数字ではありませんからね。
ま、それでもこの後、なにかとメディアに著者が露出すれば、20万部くらいには届くという読みなんでしょうか。いずれにしても他人事なので、お手並み拝見ですね。
さて、今回のメルマガは、来週のセミナーの講師でもある中経出版の元編集長奥平恵さんの特別寄稿です。それでは奥平さん、よろしくお願いします。
■いま出版社の編集部で起きていること
今、版元の編集者は「売れる本」を作ることに躍起になっています。商業出版の編集者の仕事として、当たり前といえば当たり前なのですが、10年前、20年前の編集者と比べると、書籍企画の着眼点が圧倒的に「売れるか、売れないか」に集中せざるを得なくなってきているのです。
それだけ本が売れなくなっているからです。出版市場は、1996年をピークに長期低落傾向に歯止めがかからず、出版社も書店も苦しい経営を強いられていることはご承知の通りです。
そうした中で、編集者の仕事は「良い本、もしくは良い著者を世に出す」ことよりも、「会社の売上げを作る」ことが最大の使命になってきました。
いかに文化的に価値ある本を出したとしても、売れなければ評価されません。立派な出版文化論を熱く語っても、現実の売上げに貢献できない編集者は「役に立たない社員」の誹りを受けるのです。
では、編集者が眼前の売上げづくりに集中するとどうなるかというと、座して書店のPOSデータをチェックし、売れている本の後追い企画を立てるのです。各社の編集者が同じように、売れている著者や売れているテーマを追いかけるために、同じ著者、同じテーマの本が書店に溢れることになります。
いわば、みんなが一斉に柳の人にいる二匹目のドジョウを追いかける状況になります。
しかし、心ある編集者は常に「これでいいのか」という問いかけを自らに行っています。できたら後追いではないオリジナル企画で売上げ貢献したいと考えています。自らのオリジナル企画で確実に売れる本を作ること。
ほとんどの編集者の本音はそこにあります。後追い企画は、明日のメシより今日のメシを確実に稼ぐために、理屈抜きにやむを得ず行っていることなのです。
編集者は、会社の商品開発担当者にほかなりません。商品開発を使命とする者には、業種に関わらず共通する絶対的な「思い」があります。
それは、ひと言でいえば「初めての開発」です。誰も考えつかなかった商品を開発したい、まだ世に出ていない商品を自分の手で売り出したい・・・この思いは当然、編集者にもあります。
■斬新な企画は著者と編集者の雑談から生まれる
後追いではなく先陣を切ること──本来、編集者は皆、そうした思いを潜在的にせよ持っています。すなわちこれこそが編集者魂というものです。
では、そうした本をどうしたら出せるのでしょうか。それは、書店のPOSデータからは生まれません。POSデータは、あくまでも過去のデータなのですから。
答えは、雑談です。たとえば、ビジネス書の場合を考えてみましょう。
ビジネス書の編集者は、ビジネスのテーマについて広い知識を持っています。しかし、広いということは当然、浅いのです。
“広く浅く”がビジネス書編集者の共通する知識的なバックボーンです。そこで編集者は、ビジネス書の様々テーマについて、「専門家」と雑談しながら、専門家に教えていただきながら、企画の着想を得ます。
今日のように、書店のPOSデータを机上で見られるような環境になかった時代には、企画の着想の多くは、専門家との雑談から生まれていました。
もちろん、今でもそうした企画雑談は折に触れて行っています。ただし、データ主義に陥っている現状では、フィールドで専門家と雑談する機会はだいぶ少なくなってきているのも事実です。
しかし、その機能の重要さを否定する編集者はいません。皆、大切な企画着想のチャンスの一つだと考えていることに変わりはありません。
ところでビジネス書のテーマにおける「専門家」とはどういう立場の人でしょうか。第一に浮かんでくるのは、税理士や公認会計士、社会保険労務士などでしょう。
しかし、そうした資格には編集者はさほどこだわりません。編集者は、企業の現場に接し、現場を指導しているコンサルタントを重視しています。
企業現場に接するチャンスが多くあり、専門的な観点から現在進行形で改善指導している先生がた。編集者は、そうした現場型コンサルタントとの雑談を求めているのです。
編集者とコンサルタントとのフェイス・ツウ・フェイスのコミュニケーション。
そこから、未だ世に出ていない本、同じテーマであっても切り口のまったく違う本、画期的なわかりやすさを盛り込んだ本・・・そうした本が生まれていくのです。
そのようにして生まれた本が数十万部のビッグヒットになるケースもあります。
もっとも編集者は、夢のようなビッグヒットばかり狙っているわけではありません。特に、ビジネス書の編集者は、最近では数年に一度出るかでないかのビッグヒットより、2万部、3万部クラスのスモールヒットで確実に売上げに貢献する本を望んでいます。
いうならば、ホームランよりシングルヒット、あるいは返品リスクのないバントヒットでもいいいと思っています。
そうした高打率で本を出し続ける一番の方法は、コンサルタントの知恵をお借りすることなのです。
「このような切り口で決算書の本を解説したら、若手のビジネスパーソンが喜ぶのでは」
「指導先のA社の事業計画書は優れている。この計画書をモデルにした事業計画書の作成手引きの本を出したら読者に役立つのでは」
と、こんなアイデアを雑談の中でどんどん話題にしてくれるコンサルタントを編集者は求めているのです。
他の人のベストセラーを引き合いに出して、「あの程度の本だったら私にも書ける」「私のほうがよく知っている」と揶揄する著者が少なくないのですが、そうした抽象的な他者批判ではなく、具体的なオリジナルアイデアを盛り込んだ雑談をしてくれる人をビジネス書の編集者及び出版社は求めているのです。
■セミナーPR いよいよ来週です
再び本多です。再三のPRで恐縮です。上記寄稿者の奥平さんとわたくしで、来週都内でセミナーを開催します。
くわしくはこちらをご覧ください。
↓
◎ビジネス出版社『中経出版』の元・編集長のセミナー開催決定!
(11/8月曜 13:00〜15:45 東京)
http://www.keieido.net/publish-seminar.html?mgk101102
ビジネス書の有力出版社である『中経出版』にて昨年3月まで現役の編集長を務めていた奥平恵氏によるセミナーです!
奥平氏は、中経出版をはじめ出版業界で30年以上のキャリアをもつベテラン編集者で、現在も中経出版のアドバイザーとして外部から企画を提供したり、他の出版社へも企画提供や執筆・編集業務を行っている第一線のプロフェッショナル。
そんな奥平氏の経験から、これからビジネス関係の出版を目指す方、2冊目・3冊目を目指す方へ、出版社側の本音をお話します!
さらに後半のパートでは、本メルマガ編集長としてビジネス出版社OBならではの内部情報や毒舌を披露してきた本多泰輔が、何としてでも本を出したいという方のために、より今日的かつ実践的なレクチャーをさせて戴きます。
これからビジネス書を出したい、2冊目・3冊目を狙いたい、という方には、きっとご参考になる、ここでしか聞けない豪華2本立ての内容だと思います。
※あまり大きな声では言えませんが・・・出版業界のインサイダーとして豊富な人脈・コネクションをもつ講師のお二人と名刺交換して、企画を見てもらうことが一番の出版への近道かもしれません!
先着順で締め切りますので、ご興味ある方は、ぜひお早めにお申し込みください。
<予定内容>
●第1部:ビジネス出版社の元編集長が語る、出版社側の考え方
1.著者が知らない出版社のインサイダー事情
・ビジネス出版社の編集者はどんな仕事をしているのか
2.ビジネス出版社が企画を決定するプロセスとは?
・編集会議の内幕と本を出す決裁権限
3.持ち込まれる企画書・原稿は実際にどうなっているのか?
・実際に送られてくる企画書、原稿のゆくえ
4.編集者の目に留まる企画書のポイント
・こんな企画書が注目される、こんな企画書はダメ
5.確実に本を出したい方への実践的なアドバイス
・忙しくて書く時間がない人でも本は出せる
●第2部:本が売れない時代に出版するためのポイントとは?
1.出版の効果
・なぜ、2冊目、3冊目の著書があったほうがよいのか
2.出版社を攻略する方法
・刊行スケジュールのエアポケット
・企画の穴と狙い目の出版傾向
3.なぜあの人は次から次へと本が出せるのか
・目標は年間3冊
4.著書づくりのファクトリーをつくろう
・企画書も原稿も書かない作家たち
※当日の講演内容は一部変更になる可能性もございます。
◆開催日時
11月8日(月)13:00〜15:45
(開場12:45)
◆場所
ちよだプラットフォームスクエア 5階会議室にて
◆対象
ビジネス書の分野での著者デビュー、出版を目指していらっしゃる方。(とくにコンサルタントや研修講師の方、歓迎します)
◆定員
15名を予定 ※先着順に受付
◆会費
15,000円
◆お申し込みフォーム
http://www.keieido.net/publish-seminar.html?mgk101102
<受講者特典!>
出版企画書をご準備できる方には、本多氏より、内容に対してコメント・アドバイスをさせていただきます。また有望な企画につきましては、ご希望に応じて出版実現に向けた支援(プロデュース)をさせていただきます。
◆おまけのPR
本多の電子書籍、アメリカの電子書籍の平均実売数は驚きの20冊
と聞いて、かなり気を強くした著者がしぶとく粘って、絶賛!まだ
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《このメルマガのバックナンバーはこちら》
http://www.keieido.net/publish-mag.html
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