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第187号 『遠く険しい、ひょっとしたらないかもしれないベストセラー作家への道』

『遠く険しい、ひょっとしたらないかもしれないベストセラー作家への道』

おはようございます。

年末のこの時期に、こんなメルマガなど読んでいる人が本当にいるのだろうかと、やや疑心暗鬼の本多泰輔です。

「わたしの99%は無力感と敗北感と屈辱感でできている。残り1%の半分は自尊心、もう半分は嫉妬心」

まあ、企画だけで生業を立てている者なんて、365日のうち364日はこんな心境です。到底、愛とやさしさではできていません。むしろ一番足りないのがそれです。

しかし、今次衆院選挙後にはわたしのほかにこんな気分の人が何百人かいたのでしょうね。

こういう気分の時はもう人前に出たくないし、何もしゃべりたくなくなるのですが、落選候補者の人たちはそれでも支援者のところへあいさつに行ったり、聞かれたくもないインタビューに答えたり、候補者によってはすぐに辻立ちで捲土重来の弁を述べたりしていますから本当にタフな人でないと政治家にはなれないんだと思います。

出版企画の持ち込みは、選挙ほどお金はかかりませんが、なかなか当選しないという点では同じようなものです。お年玉つき年賀はがきに当たるほうが確率は高いでしょう。

一方、出版も選挙も一度当選して目立った実績をつくると、けっこう次回からのハードルは低くなって、連続当選できるというのもいっしょです。

ベストセラーさえかっ飛ばせば、出版社は頭を下げて著者のところに行列しますから、そうなればもうこっちのもんです。

しかし、そうなるまでは大変、こっちで頭を下げてお願いにまわらにゃなりません。実際に著者が頭を下げてお願いすることはありえないのですが、気分的にそう感じることはあるでしょうね。

■ヒットさえ出れば・・・・

なんやかんやでとりあえず出版が決まったとして、それで喜んでばかりはいられません。

なにしろ原稿を書かないと本はできないわけですから、著者は締め切りまでに必死になって原稿を書き続けることになります。

だいたいこの段階で、出版が決まって浮かれていた始めのころの高揚感は吹っ飛びます。やんなきゃよかったと思い始める人もすくなくありません。

そうして編集者から「このへんをちょっと・・・」とか「ここをもうすこしくわしく・・・」などと言われながら原稿を上げ、何度か校正をした後やっと刊行、ここにこぎつくまで早着て4ヶ月、長いと半年、そんなこんなで出た本が見事に当たればいいですがだいたい当たらずに終ってしまいます。

出版した本がたちまち重版で、毎週のように増刷を重ねていれば、何も言うことはありません。次の本の依頼も引く手あまたでしょう。

そういう人も毎年何人かはいるのですが、好意的に見て7割、現実的に見れば8割の著者は苦労の甲斐なく残念な状況に置かれます。

残念な本でも書店に出ていれば、思わぬチャンスに結びつくことはありますが、やはり引く手あまたの著者になりたいというのが著者の偽らざる本音だと思います。

要するに望むはベストセラー作家、ヒットメーカーですね。
ヒットさえ出ればすべてが好循環で回り始めます。

本を書く→売れる→コンサルのオファーが来る→本のネタが貯まる→出版社からオファーが来る→本を書く・・・・、と永遠に続くわけではありませんが何年かは好景気が持続するでしょう。

じゃあ、どうすればベストセラー作家になれるのか。

それはわかりません。
もしわかっても教えません。

いや、まあ本当はわかってたら教えますけどわからないんですよ。

いま、出版界でどうすればベストセラーになるのかわかっている人は、池上彰さんくらいじゃないでしょうか。

わかっていると思い込んで全力でまちがった方向に走っている人はもっと多いでしょうけど、出版界の圧倒的多数の人はわからないと言うはずです。

池上さんはたぶんこう思っているんじゃないでしょうかね。
「いままでどおりにやっていれば売れる」

一方、ほとんどの出版に関わる人々はこう思っています。
「なんであっちが売れて、こっちは売れないんだ」


■ベストセラーは人よりテーマ

有名人が書けば本は売れると思いがちですが、必ずそうかというとそうでもありません。実際にベストセラーになる本を拾っていけば、無名の新人著者が書いたもののほうが多いはずです。

大手出版社は大手なもんですから有名人を著者に立てることが多く、中小出版社はそれを見て羨んでいるのですけれども、大手の有名人指向はかえって仇になっていることもすくなくありません。

世の中は売れてる本しか注目しませんから、それが有名人の本だと「やっぱり」となるわけですが、出版界には売れていない本のほうがとんでもなく多く、売れてない本はだれも知らないので、有名人が書いているのに売れていないことは話題にもならないのです。

有名人が書いたのに売れなかった「知られざる本」は驚くほどたくさんあります。

要するに売れる本は人よりテーマということです。しかしこのテーマがつかめない。

マーケティングというジャンルは、売れないという定評のあるテーマですが、そのなかでも一つぽんと飛び出す本もあります。

25年前だったら「話し方」の本でベストセラーは望めなかったのですが、今日では様変わりです。

逆にセールスのテーマは25年前は鉄板だったのに、今日では出版社が最も避けるテーマの一つになってしまっています。

結局のところ、いつなにが売れるのかは神のみぞ知るですから、著者としては現在専門としているテーマをひたすら深く掘り下げていくのがいいのかもしれません。

いかなるジャンルであれ、いつか陽の当たるときが来るかもしれませんから、その時が来るまで一つのテーマを磨き続けるのが最善の策ではないかという気もします。


■テーマ以外の売れる本の条件

売れるテーマはわかりませんが、売れる本の条件には基本的な原則もあります。それはわかりやすい、読みやすいということ。

わかりやすく読みやすい本だけがベストセラーかというと、実は以外に難解な本がヒットしたこともありますから決め手とは言えないのですが、わかりやすく読みやすい本のほうがよりヒットになりやすいということは言えます。

大成功は小さな成功の積み重ね、ベストセラーのテーマは神の領域ですが、文章は人の努力で補える余地があります。わかりやすい原稿、読みやすい文章を意識することは大いに有意義なことです。

じゃあ、わかりやすい原稿、読みやすい文章って何だ、どうすれば書けるんだということになるのですが、これも説明が難しい話で、要するに池上彰さんの本ですよ、阿川佐和子さんの『聞く力』ですよと言ってもわかんないですよね。

あえて説明しようとすれば、ビジネス書の読者はたいてい素人ですから、素人の立場に立って書くということは一つの方法です。

じゃあ、素人が書けばいいじゃん(案外そうだと思いますけど)となると、素人は素人だけに本を書くだけのインテリジェンスのベースがありません。

プロないし専門家は本を書くだけの十分なベースがありますが、素人だった時代のことはとっくに忘れちゃったので、素人の気持ちがわかりません。

ここになかなか越えられない溝はあるのです。

その点、いつも素人を相手にしている人は若干アドバンテージがあるかもしれませんね。

目の前にモデル読者がいるのですから、どこがわからないかどこに関心があるか、手に取るようにわかるでしょう。

常にモニターしながら書けるわけですから、大学教授(目の前に学生はいますが彼らの多くはビジネス書の読者ではありません)や研究者にはできないことです。

あとは池上彰さんの本など、わかりやすいと言われる本を真似るという方法もあります。

中身をそっくり真似ることは法的にも技術的にもできませんので、説明の仕方や説明の順序など文章の書き方を真似るということになります。

ただし、首尾よく池上さんのような文章が書けるようになったとしても、読者から、その前に編集者から、池上さんのようにわかりやすいと絶賛されるかというと、それはわかりません。

読者には「池上さんの文章はわかりやすい」という刷り込みができています。

それは「池上さんだからわかりやすい」という刷り込みでもあるわけで、池上さん以外のだれかが似たような文章を書いたからといって、池上さんでない以上それで池上さんのようにわかりやすいとはなりにくいのです。

わかりやすさは著者の名前のせいだったりすることもあるのです。
やっぱりヒットをかっ飛ばしておくに限りますね。

………………………………………………………………………………

◆お知らせ◆
2年ぶりに「出版セミナー」を開催します。
今回はダブルテーマで講師もダブルキャストで行います。

第1部は「いまビジネス書の出版社が求めている著者」で、中堅ビジネス書出版社、ベストセラー『日本で一番大切にしたい会社』の記憶が新しいあさ出版の佐藤社長にお話をいただく予定です。

第2部は「自費出版の効果と限界」で、実際に自費出版の現場にいる日経BPコンサルティング・カスタム出版部の今野プロデューサーと安藤プロデューサーにリアルな情報を提供して頂く予定です。

http://www.keieido.net/publish-seminar.html

コンサル出版フォーラム主催
『ビジネス出版セミナー 2013』

日 時 2013年2月13日水曜日13:20〜16:50
会 場 ちよだプラットホームスクエア(竹橋)
千代田区神田錦町3−21

講 師 第1部「いまビジネス書の出版社が求めている著者」
佐藤 和夫氏(あさ出版代表取締役)

第2部「自費出版の効果と限界」
今野旬一郎氏・安藤かおり氏(いずれも日経BPコンサルティング・出版部プロデューサー)

参加費 10,000円(税込)※先着順に受付

第1部「いまビジネス書の出版社が求めている著者」の講師、あさ出版の佐藤社長はビジネス書の出版に40年以上携わってこられ、そして今日も第一線でご活躍中の、ビジネス書のことなら知らないことがない超ベテラン編集者です。

あさ出版の出版物には、ベストセラーとなった『日本で一番大切にした会社』のほか、いま話題となっている『新幹線 おそうじの天使たち』『夢に日付を! 夢をかなえる手帳術』など多くのヒット作があります。

また、あさ出版は優れた新人著者を次々と発掘することで業界でも定評のある、著者開拓型の出版社です。新人著者とは、過去に出版の実績のない人のことを言います。

では、実際にどのようにして著者を探し出してるのか、どのような規準で著者を選んでいるのか、編集現場のリアルなお話を期待したいと思います。

さらに、持ち込み原稿や持ち込み企画の運命や出版社へのアプローチはどんな形がベストなのかなどなど、細かい情報もさることながら、40数年にわたりビジネス書業界の中心にいた佐藤社長には、これから著者と出版者の関係についても多くのサジェッションをいただけることと思います。

第2部の「自費出版の効果と限界」は、なぜ出版セミナーで自費出版なのか、お金を払ってまで聞く話か、と訝しく思われるかもしれません。

しかし、現実に企業家やコンサルタント、士業の人たちで自費出版をしている人は多く、また、自費出版のお誘いを受けて迷っているという人のお話もよくうかがいます。

自費出版といえど、いまや書店に流通するのが当たり前で、外形的には通常の出版と区別がつきません。自費出版からベストセラーになるというのも一つや二つではなく、自費出版はすでに無視できない出版の形態となっています。

それなら、自費出版のメリット、デメリットについて、しっかりした情報をしっかりした人に提供してもらうことは重要であろうと、信頼できる日経BPコンサルティングの今野プロデューサーと安藤プロデューサーにお話いただくことといたしました。

通常の商業出版であれ、自費出版であれ、いかなる形の出版であろうと著者にとって最適であれば、それが最善の出版であるということは間違いありません。このセミナーでは、その点を追究してみたいと考えています。(本多)

●お申し込みはこちらまで
http://www.keieido.net/publish-seminar.html

 



   《編集後記》
 
コンサル出版フォーラム主催のビジネス出版セミナー。来年2月の開催ですが、ぜひお早めのお申し込みをお待ちしております(早割なら1000円オフ)。出版社の社長のセミナーはめったにありません。ベストセラー作家への道が開けるかどうか分かりませんが、少なくとも出版への道が、具体的にはっきりと見えてくると思います。(発行者:樋笠)





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