おはようございます。
本多泰輔です。
今度、ビジネス本の書き方のセミナーをやります。そのご案内を含
め、原稿の書き方についてすこし書きたいと思います。
出版の場合、結局のところ原稿がすべてです。著者の見た目がどんなに良くても、いかに凄い能力を持っていたとしても原稿がないことには本にはなりません。
しかし、いざ原稿を書く段になってみると意外に書けないものです。
本来、日本語でコミュニケーションをとっている人なら、伝えるべきことを文章にすることができないはずはないのですが、本の原稿となると、どうも心身に余計な力が入ってしまいスムーズに文章が出てこないようです。
かく言う本多は、いまでも下手な文章ですが、初めて原稿を書いた30数年前は、とんでもなくダメな原稿ばかり書いていました。
本多の原稿のダメなところは
1.的が絞れてない。何を捨てて何を残すかができていない
2.文章のわかりやすさを意識していない
3.つまらない
の3つでした。
他にも字が下手(当時の原稿は手書き)とか、文字量が足りない(多すぎる)とか、見るも無残な状態で、唯一の救いは実はけっこう書くのが好きという1点だけ。この唯一の救いだけで、今日まで生きてこられたようなものです。
そういう本多めごときが、何を偉そうに本の書き方などとのたまうかと、かつての上司や先輩方からお叱りを受けそうですが、そこは泥棒にも三分の理、原稿は「だれでも書けるのですよ」ということを身をもって示すには、不肖本多ほど適材はいないと思うのであります。
■書く力を奪うもの
書くことはたくさんあるのに、筆が進まないのはなぜ?書くことがあって、書く力があるのに、書けない。まるでクリプトナイトを前にしたスーパーマンのようです。
いったい何が書くことを邪魔するのか。
こういう状態からなかなか抜けられない人に対するアドバイスとして、不肖本多は、かつて著者と原稿を書く人は別でいいので、無理に自分で書こうとせずに原稿はプロのライターに書かせればいい、情報提供と口述だけでも本は出来ると言ってました。
それはいまでもそうなんですが、本を出版しようという人は殊のほか真面目で、あえて無理なことに挑戦しようとする人が多いのもまた事実。なので、そうなると後はもう頑張って書いていただくしかありません。
そこで「書く力をつけるセミナー」を思いついたわけです。
自分の体験に照らしてみても、書くことがあるのに書けない人は、だいたい良い文章を書こうとして呻吟しています。
良い文章とはどんな文章か。間違いなく言えることは、このメルマガの文章とは異なる文章のことです。
しかし、良い文章を探求することは、実はあまり重要ではありません。ビジネス本において求められるのはよい原稿であって、必ずしもよい文章ではないからです。
よい原稿とは何か。それはわかりやすい原稿です。読んでわかりやすい原稿がよい原稿。これは鉄板です。
ビジネス本の原稿を書くときの基本は、まずよい文章を書こうとは考えないこと。これでいくらか気が楽になります。
■世界で一番厳しい配偶者の批判
そうかわかりやすく書けばいいんだな。
なるほど、それならできそうな気がする・・・・と思ってやってみたけど、やはり書けない、どうすればわかりやすい原稿が書けるのか、という人には処方箋が三つあります。
一つ目はとりあえず書けるとこまで書いてみて、最も身近で世界一厳格な批評家である配偶者(妻のほうがより厳しい傾向にある)の批判に委ねるという方法です。
そして、その的確で仮借ない指摘の一字一句に耐え、言われたとおりに修正を重ねます。これを三回くらい繰り返せば、どこに出しても非の打ちどころのない原稿が完成することでしょう。
ただし、たいていの人は一回の批判で二度と見せまいと思うようになりますが。
相手はあなたと違って素人ですから、ここがわからない、ここは説明不足と膨大な量のダメ出しをしてくれます。
仮に素人ではなくても、他人の書いたものをほめようとはしないのが人間の基本。なにかしらケチをつけてくるでしょう。
しかし、言葉の荒さ、ていねいさに違いはありますが、指摘していることは編集者とだいたい同じと思ってよろしいというのが、わたしの経験則です。
それくらい身近な批評家の見る眼は正しい。
さて、それはそうかもしれないが、あまりに過酷な批判をされると気持ちが折れてしまいかねない、わが家の場合それは確信的でさえあるという人や、自分は講演や会話ではわかりすい話をしている、そこには自信があるのだという人への処方箋は次の二つです。
■手紙を書くように原稿を書け
講演で話す内容と本に書こうとする内容は同じ、だが話はスラスラ出来るのに本の原稿は思うように進まない、なぜ講演で話すように書くことができないのか。こういうケースもよく聞きます。話は上手なのに原稿は不得手というケースです。
本来、話が上手ければ原稿も上手いはずなんですが、それがそうもいかないことがあります。両者の違いに目を向けてみましょう。
講演でも会話でも、基本的に相手が目の前にいます。聴き手は話に応じて、表情や態度が移り変わりますから、話し手はそれを見ながら、話の順序や話し方、重点の置きどころを微妙に調整しながら話を進めることができます。それができるからこそ、話し上手でもあるのです。
わかりやすい原稿を書くには、読者を明確に定めて、その人物にわかるように書くのが一つの方法です。
原稿を書くときに目の前に読み手はいません。しかし、見えないからといって、漠然とした読者を想定し、多分こういうことを求めているだろうと想像しながら書くと、プロのライターでもろくな原稿が書けません。
手紙を書くとき漠然とした誰かに向かって書くことは、普通ありませんよね。固有名詞があって、その人の置かれている環境や性格もある程度わかっている人に向かって、何事かを伝えるべく書くのが手紙です。
本は読者への手紙ととらえれば、読者は自ずと明確になります。どんな人で、どんな環境にいて、何を求めているか人なのか、この設定を具体的にしてその人に向かって、その人にわかってもらえるように手紙を書くように本を書く、これがわかりやすい原稿を書くための二つ目の処方箋です。
■捨てる勇気
手紙を書くようにと言われても、書くことがあまりにあり過ぎて、何から書いていいのかがわからない。書いてる本人も混乱するほど、伝えるべきこと、書くべきことがたくさんあるというのもよく聞く話です。
そういう人には「オッカムの剃刀」を持つことをお奨めします。
そもそも伝えること、書くことが多ければ多いほど読者にはわかりにくくなります。伝えることはできるだけ少ないほうがよい。特にビジネス本はその傾向がつよい書籍です。実用性を重視していますから。
極端な言い方をすれば、やり方さえわかれば、その原因・理由の説明に拘る必要はない本とさえ言えます。
もちろんそのやり方で結果が出るというエビデンスは必要ですし、なぜそうなるかの理屈がまったくないと読者にとって不審ですが、原因理由をくどくど説明すれば読者はついて来てくれないのがビジネス本です。
あれも伝えたい、これも書いておくほうが読者にとって得だと考えるのが著者の心情ですが、あえて「これだけは伝えたい」ことだけを残し、あとは思い切って捨てる(あるいは次回作のために温存する)という勇気ある決断が、著者の乗り越えるべきハードルと言えます。
以上が三つ目の処方箋です。
セミナーでは、ここで書いたようなことをもっと具体的にお示ししながら進める予定です。
さて、これだけではまだ物足りない。
もっと読者をひきつける方法はないのか、という人のための読者を引きつける文章の工夫あれこれについても書いておきたいところですが、ここは勇気ある決断で、また次回ということにいたします。
では、次回もよろしくお願いします。
以下、セミナーのご案内
↓
<どんなに抜群のノウハウを持っていても
いくら凄いアイデアがあっても、書かないことには本にならない!>
■「ビジネス本を書く力をつけるセミナー」
10/4(金)14時開場 14:15〜17:50(東京・千代田区にて)
(セミナーの趣旨)
実際に本を書くとなると、これはけっこう手間ひまのかかる大変な作業です。そうして苦心して原稿を作っても、読者に受け入れられるか、その前に果たして編集者のOKが出るか、第二のハードルが待っています。苦労が報われるかどうかは原稿の中身次第です。
ビジネス本を出版する人に必要な原稿づくりの段取りと原稿のクオリティを上げる方法について、本セミナーではいくつもある方法の中から、最もシンプルな「原稿意執筆の原則」に絞り込んで紹介します。
講師は、ビジネス書の有力出版社である『中経出版』の元・編集長、奥平恵氏をお招きしました。
奥平氏は、中経出版をはじめ出版業界で30年以上のキャリアをもつベテラン編集者。現在も中経出版のアドバイザーとして外部から企画を提供したり、他の出版社へも企画提供や執筆・編集業務を行っている第一線のプロフェッショナルです。
そんな奥平氏の経験から、これからビジネス出版を目指す方、2冊目・3冊目を目指す方へ、ビジネス書の書き方の実践的なポイントをお話します。
さらに後半のパートでは『コンサル出版フォーラム』メルマガの編集長の本多泰輔が、まとめのお話とフォローアップ(個別相談)のご案内をさせて戴きます。
●詳細の内容はこちら
セミナー内容(予定)
1.書くことはあるのに、いざ書くとなるとなかなか書けないワケ
2.まずはターゲット読者を具体的に想定しよう
3.肩の力を抜き、ターゲット読者に語りかけるように書き始めてみよう
4.構成案(仮目次)を作成することはイロハのイ
5.「まえがき」を先に書いてみる
6.最初の数行に“著者の心”を込める
7.書き出しがなかなか決まらなかった、自信のある章から始める
8.「シンプル・イズ・ベスト」の気持ちで書き進めていく
9.上手な文章を書こうと考えない
10.小見出しを入れながら書き進める
11.テーマとのずれがないかの確認を時々しながら書き進める
12.推敲は、まず章ごとに行っておく
13.他の著書からの引用は最小限に
14.困った時には素直に自分のことを書けばよい
15.専門家、コンサルタントの原稿がプロのライターより勝っていること
16.専門家、コンサルタントの原稿が陥りがちな読者とのミスマッチ
17.誇りをもって目線を下げる勇気を持とう
18.プロが使う「読ませる原稿」 五つの工夫
19.原稿は本になるまで完成品ではありません!
20.基本、編集者の声は読者の声
21.編集者が困る原稿
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