おはようございます。というかご無沙汰しております。
ほぼ2年ぶりでしょうか。もうお忘れかもしれませんね。
出版メルマガの本多泰輔です。みなさまお元気ですか。
最後のメルマガを出したときは、「アベノミクス」で日本はどうなるというのがトピックでした。
いまは、その安倍政権の「安保法制」と「ギリシャ問題」ですね。
しかし、これらのテーマはいずれも本にはしにくいテーマです。
その理由は3つあります。
1.短期である
いずれもいかなる影響があるかどうかは別として、短期に決着がつく問題です。
「安保法案」は秋までには、成立か先送り(事実上の廃案)かが決まりますし、ギリシャはすでに決着しかかっています。本にするには時間がなさすぎるのです。
2.流動的
1と矛盾するようですが、短期の割りにどういう結論になるかは流動的で読みきれません。すこし時間尺を長く取って、変化を先取りしようとすれば、さらに流動要素が増えてしまいます。
ギリシャは、ギリシャがユーロ主要国の要求を呑みユーロに残れば(残るみたいですね)、当面の危機は回避できるでしょうが、実際にはギリシャがユーロから抜けても残っても、それでこの問題が解決するわけではありません。
ギリシャが借金を帳消しにできるくらいの財宝を国内で掘り当てない限り、ギリシャ問題はいつまでも残ることになります。
日本でいえば、都市と地方の格差みたいなものですね。はじめから立ち位置に経済格差があり、時間が経っても彼我の差は縮まらず、むしろ拡大するばかりなのです。
一方、安保法制は仮に成立したとしても、憲法違反という見解が学会から出ていますので、各地で訴訟が起こり最高裁の判断が求められるかもしれません。
また、法律ができても、実際に派兵するかどうかは時の内閣の判断次第、戦死者が出るかもしれないリスクの高い判断をあえてする内閣が日本に誕生するか、というのも不透明な要素です。
こういうことは新聞や雑誌のようにトピックを伝えるメディアには向いていても、一冊の本で論ずることは難しいと言わざるを得ません。
3.踏み込むほどに論点が増える
新聞や雑誌と書籍の違いは、ページ数にあります。ページ数の多い書籍は、その物理的な条件からテーマを広げるか、深堀しなけれ
ばなりません。
■論点を増やすほど読者は減っていく
ギリシャ問題はギリシャ一国で見ると、ギリシャのGDPは埼玉県並み(埼玉県のほうがすこし大きい)ですし、日本との貿易はオールユーロを含めても1割程度なので、ギリシャ危機の影響は日本では小さいと主張するエコノミストがいます。
しかし、この見解にはいささか賛同しかねます。ギリシャがユーロから抜ければ、スペインや他の借金国にも影響するでしょう。ユーロにとってはダメージです。
日本にとっては1割程度の相手でも、中国やアメリカにとってユーロは小さい存在ではありません。ユーロが傷つけば、その影響は米中に波及します。
米中にダメージが及べばドル安、円高は必至、現在の日本経済は円安相場に支えられているのですから、円高に動けばアベノミクスは一気に吹き飛んでしまいます。
ユーロは第1次大戦前のヨーロッパ諸国のようなもので、小国同士の小さな紛争(オーストリアとセルビア)がそれぞれ同盟国を巻き込んで、またたく間にヨーロッパ全土に拡大したように、一小国(ギリシャ)の破綻は全ユーロに波及します。
さらに、グローバル経済下では南米とアフリカの一部を除き、一夜にして災禍は全世界に広がることになります。
とまあ、ここまで書いただけでも、たぶん読者の8割は離れてしまうでしょう。
■食傷するよりは物足りないほうがマシ
安保法制もすこし踏み込んだだけで、憲法問題、国際情勢、外務省の思惑、防衛省の思惑、米国の思惑、首相の思惑(は案外シンプルなような気がします)、それに軍事の常識とヘビー級のテーマが横並びに迫ってきて、見るだけで食傷気味になってしまいます。
そもそも憲法も国際情勢も軍事も、伝統的に書籍としては売れないテーマです(小学館の『日本国憲法』は別。あれは奇跡の本です)。
多すぎる情報は少なすぎる情報に劣る。
奇妙に思われるかもしれませんが、これは真実だと思っています。
奇妙な真実に変な譬えでお応えしますとこうなります。
流行らない旅館の飯ほど量が多い。
旅館はサービスのつもりなのですが、泊り客のほうは食べきれないほどの量の飯に食傷し、半分以上を残したままうんざりして帰る。
その結果、印象はうんざりだけ。
おそらく2度とやって来ることはないでしょう。
対するに高級旅館はすこし物足りないが、最後の一品まで味わうことができる。味の良し悪しの評価には、若干の個人差があるにせよ、最後まで味わった以上、すくなくともうんざりしたという印象はない。
多すぎる情報は、途中で食傷になってしまうので、最後まで読みきることはない。結果としてなんの情報にもならないまま、ただうんざりという印象が残るだけ。
一方、少なすぎる情報はうわずみ部分の情報しか得られないとはいえ、一応ひととおりの情報を得ることができる。
池上彰さんが成功しているのは、このことをよく理解しているからだと思います。
著者は高級旅館を目指すべきで、流行らない旅館の轍を踏んではなりません。特に初めて本を書く人は、そこのところを重々心がけるべきと思います。
■次の企画で著者を探しています
いつもことながら前置きが長くなってしまいました。
ここからが本題です。
本題は短いです。
いま仕掛りの企画で、なかなか適切な著者が見つからないものがいくつかあります。
自分の人脈で見つからないのなら、いっぺん公募したらどうかということで、企画をさらして著者を公募するという、おそらく出版業界でもめったにない試みをやることにいたしました。
「われこそは最適な著者」と思われる企画がございましたら、ぜひご一報くださいませ。
ただし、いずれの企画も出版までにはまだいくつか越えねばならぬハードルがありますので、よき著者を得てもすべてが首尾よく日の目を見るかどうかについては已然不透明な部分が残ります。
企画1 仮タイトル
『65歳からの所得倍増計画』
年金の2倍の収入を得るための本。
・65歳からの支出・年金で株をやって所得倍増・趣味を生かして所得倍増・住み替え、貸し家で所得倍増などなど
企画2 仮タイトル
『入社初日の新入社員がその日でわかる会計の本』
会計ど素人、ビジネスど素人、企業活動ど素人でも1日でわかる会計の本。1日でわかる量と質は限られますので、はじめから「これだけわかればOK」という限定免許方式でいきたいと思います。
企画3 仮タイトル
『決算書以外で企業の価値を測る本』
決算書だけが企業の価値か?決算数字以外の企業の強み弱みを数値化して、企業価値を測る本。
企画4 仮タイトル
『プログラミングを30歳からマスターする本』
ねらいと内容はもう仮タイトルどおり、そのまんまです。
企画5 仮タイトル
『知らないほうが幸せな組織メカニズムの真実』
単純な正道・正論だけではうまくいかないのが人の集団。裏も表も知った上で組織を泳ごうという本。
・給料が上がらない本当のワケ・評価される実績と評価されない実績の違い・許される失敗と許されない失敗・使命感に燃える人ほど報われないなどなど
企画6 仮タイトル
『100歳まで現役! 大人の夜の筋トレ』
「週刊現代」風に、精力を維持するため各部位の筋肉を効果的に鍛える方法があれば、ぜひ本にしたい。
企画7 仮タイトル
『人望力』
古くて新しいリーダーの本、どうすれば人望が身に付くのか、その訓練方法。
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