これは最近、話題になった言葉です。
ご存知の通り「弁天小僧菊之助」が歌舞伎の『青砥稿花紅彩画 (あおとぞうしはなのにしきえ)=白浪五人男・浜松屋の場』で言う、有名な決めゼリフです。
歌舞伎に限らず“日本語”という素晴らしい言語を改めて再確認した事でも記憶に新しいと思います。
さて歌舞伎と言えば、11月30日から京都・南座では毎年恒例の「顔見世興行」が行われます。
ニュースでも取り上げられますので、皆さんもご覧になられた事があるかと思いますが「まねき」という役者さんの家紋と勘亭流で名前が書かれた看板が掲げられます。
この頃になると「もう、今年も終わりか…。」としんみりしながらも、もうお正月の支度を始めないといけないという慌しい空気が街に漂い始めます。
12月の花街は「もう、行かはりましたん?」が挨拶になります。
「顔見世興行」は明治39年に京都南座に始まって以来、今では東京・名古屋でも行われていますが、京都の年末恒例行事として深く根付いています。
京都の人達はこの時ばかりは着物を誂え、この日を1年中待ち焦がれます。
しかし、いざ行こうと思ってもいい席はなかなか取れませんので、元々のチケットのお値段も決してお安くはないのに、さらにプレミアが付いたりします。
それに大変なのはお茶屋さんの女将さん。毎年楽しみにしていらっしゃるお客様からチケットを頼まれますので、発売日の寒空に並んだり、役者付きの番頭さんに少しでもいい席を譲ってもらうようにお願いして走り回ったり…。まさに“師走”です。
そして毎年恒例風物詩がもう一つ。それは舞妓さんの総見(そうけん)です。
桟敷席に上七軒・先斗町・宮川町・祇園町・祇園東、日替わりで五花街それぞれの舞妓さんが、
ずらーっと並んで歌舞伎を鑑賞します。
これには、ある重要な意味があります。
実は、毎月変わる舞妓さんの“かんざし”が、12月はミニチュア版の「まねき」になっています。
白地の「まねき」が2つ付いていますので、総見日にご贔屓の役者さんの楽屋を訪れ、そこに、直々に名前を入れてもらうのです。
(ちなみに私は市川猿之助丈の大ファンでした!きゃーかっこいい〜♪)
立方は黒の墨、女形はお紅で書いてくれますので、並べるととても綺麗です。
観に行かれる方もわざわざこの日を指定される事もありますが、何気なしにチケットを取って行ってみたら、たまたま総見日にぶつかってしまって、舞台と客席、あっちを見ても、こっちを見ても「晴れがましい光景」に大慌て…。なぁんて事に皆さんはならないようにしましょうね。
先ほども書きましたが、一般の女性も(男性も然り)着飾って来られますので、着物を新調しないまでも、普段着で観に行かれることは、あまりオススメ出来ません。あしからず。
観劇する側も“そのお芝居”の大事なエッセンスになっている事をお忘れなく・・・。
さて日本には歌舞伎以外にもお能・狂言など面白い演劇の伝統文化がありますが、お話の筋が難しい(と思われてしまう)、セリフ回しが解らりづらい…などの理由から一度も見たことがないヨ!という方も
多くいらっしゃるのも事実です。
そんな方に、とっておきの秘密兵器(?)をご紹介しましょう。
私は、株式会社イヤホンガイドという会社が開発された「イヤホンガイド」を多いに活用しています。
「耳で観る歌舞伎」という文字通り、テレビで活躍されている演劇解説者の方などがお芝居に合わせて同時解説して下さるという画期的で素晴らしいアイテムです。(劇場でレンタルします)
形状はポケットラジオを想像してみて下さい。歌舞伎に関しては、大きな劇場は殆ど借りれますし、お能や狂言、今では外国演劇やオペラの同時通訳などもあるそうです。すごーい!!
好きな演目は何度も繰り返し見て、理解出来ていたと思っていても、改めてこのガイドを聞きながら観劇すると、新たな発見があります。
今の主人公の気持ちはこうですね!とか、何故この髪型なのか?この歌はこんな意味です!など、細かく説明してくれますので、こんなイイ事はありません。是非、一度試してみて下さいね!
この「イヤホンガイド」の解説にあるように一見、目には見えないようでいても、地方さん、衣装さん、床山(かつら)さん、大道具・小道具さん、
照明さんなど多くの裏方の人達が携わって一つの完成された芸術を作りあげるのです。
どれか一つでも欠けてしまったら忽ち困ってしまうし、何よりも成り立ちませんよね。
しかしそれは、何も舞台の限りではありません。
「会社経営」という事も一緒なのではないでしょうか?
譬えれば、『舞台』は【会社】、お客様を呼び込む“顔”である『カンバン役者』は【経営者】、影で支える『地方さん(お三味線やお囃子)』は【従業員】、そして大事な『観客』は、宛ら【顧客】といったところでしょうか。
ハイクオリティーで、しかも沢山の観客を出来るだけ長く惹きつけるだけの魅力ある「舞台」を保ち続ける事は、もちろん体力や財力も必要ですし、並大抵な苦労ではありません。
しかし「舞台」は「主役の役者さん」一人だけでは成り立ちません。
“影”があるからこそ“光”がより引き立つのです。
決して「裸の王様」にならないよう、皆さま『カンバン役者』さんのご成功を願って止みません。
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