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100億円企業を創る
第3回 「100億円企業になるための“インフラ”とは?」

株式会社サイエス 大野 和徳

基盤無きところに成長は無い

前回は企業を成長に導くにはお客様の支持の得られる価値の創造と提供のシステム、すなわちビジネスモデルを創るという事業戦略が重要であることを説明いたしました。
   
しかし、どんなに優れた事業戦略があってもそれを生み出し支える経営基盤(インフラ)がしっかりしていないと、事業が確立できず成長を実現することは出来ません。

ちょうど道路や橋、交通システムという社会のインフラが出来ていないところでは物流がうまく出来ないし、学校や教育システムが無いと人材育成が進まないのと同じようなことです。

企業の場合でも、市場創造、すなわち価値の創造と提供を効果的に進めていくためには、企画、開発、生産(制作、製造、購買、仕入れ等)、営業(販売促進、受注、アフターサービス等)、商品管理、回収、財務、人事、メンテナンス、など等の機能を役割分担して有機的に実行される必要があります。

そのようなことがうまく連携して推進されるための体制とシステム(インフラ)が確立して運用される必要があるのです。

組織とシステムの確立がビジョン実現の基盤だ

そのような「役割分担の体系」と「効果的に推進されるためのしくみ」を組織体制と経営(業務)システムといいます。

この組織とシステムをしっかり構築して運用するのが中小企業から中堅企業に転換するための大事な課題となります。
 
ところが多くの中小企業の場合は「組織」が「役割分担の体系」(見方を変えると責任と権限の体系)になっていなくて「人の体系」、すなわち、偉いか偉くないかという権威の体系である場合が少なくありません。それでは求められる役割・機能が効果的に果たされないということが生じてしまいます。
 
また、しくみ(システム)が出来ていないために「個人プレー」で仕事がなされているといったケースも少なくありません。

そのような会社の場合は、ある人が欠勤したことによって他の人では代わりが出来ず、仕事が止まってしまう、といったことがよく発生しますし、担当者によってサービスの質が大きく異なることになります。
 
システムには業務を効果的にうごかす業務システム(営業システム、在庫管理システム、等も含まれます)や経営システム(分権システム、業績目標管理システム、人事システム等が含まれます)等がありいずれも重要です。
 
組織とシステムが確立され、適切に運用されることが、年商30億円(企業によっては60億円)の壁を破り事業展開を順調にし、ビジョンの実現に近づけることに繋がるのです。

部門経営者を育成する分権システム


企業が成長する過程でぶつかる壁が「それまでは社長一人だけで出来たことが組織としてやらなければ間に合わなくなる」ということです。すなわち、全てのことを社長が判断し決済し実行することの限界点に達するのです。

商品が増え、客先が増え、人員が増えてくればいよいよ「一人の社長と多くの指示待ち人間」では対処できなくなってきます。そのような状態を我慢して無理に継続していると「納期遅れ」「クレーム増加」「現場とズレた判断」などが横行することになります。

そのような、社長に権限が集中した「集権体制」からそれぞれの責任者に適切な「責任と権限」を付与して独立採算制で実行する「分権体制とシステム」に切り替えることにより、人材も育ち、業績もあがり、何よりも社員が競争意識をもち「個性と能力を発揮する」ことにつながります。
 
私のこれまでの企業支援の経験では、管理会計システムを構築・活用して年度計画を通じて業績管理システムを確立することにより、社員の意識と成長が図れると同時に驚く程の業績向上につながります。

業績向上を目指し、成長企業への脱皮を目指す企業には是非取り組んで欲しいテーマであり、成長のための必須科目です。

その他のシステム

企業の経営を効果的に進めるためには「マーケットシステム」や「人事システム」、「情報システム」、「コミュニケーションシステム」「仮説の検証システム」等も重要なインフラとなります。
それらに関しては機会がありましたらお話しましょう。 



■バックナンバー
 

第1回 「何故100億円企業なのか?」
第2回 「企業を100億円企業に導く“事業戦略”とは?」
第3回 「100億円企業になるための“インフラ”とは?」
第4回 「中堅企業に変身するための“組織”を考える」
第5回 「経営システムは人を育てる環境だ」
第6回 「人材を育てる企業文化のルーツとは?」

■大野 和徳/株式会社サイエス 代表取締役   http://www.100oku.com
大野 和徳/株式会社サイエス 代表取締役
群馬大学工学部卒業の後、メーカー、商社、マーケティングリサーチ会社の役員等を経て経営コンサルティングの世界に入り、株式会社サイエスを設立する。脆弱な中小企業を成長基盤の強い中堅企業に革新するコンサルティングを中心に展開しており、多大の実績を上げている。「100億円企業を創る」(ダイヤモンド社)に詳しく紹介されている。30年近くに亘って100億円企業の実現をテーマに製造業、建設業、卸売業、小売業、サービス業等、幅広い分野の中小企業の「経営戦略とマネジメントの強化」を支援し幾多の優良中堅企業を育てあげる。主な著書に「100億円企業を創る」(ダイヤモンド社)等多数。
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