インターネット通販への新規参入は数年前から比べると衰えが見られ、
活発とは言えない状況です。
しかし、最近の新規参入企業及び個人事業者は、昨年・一昨年の膨大な数の失敗例を元に、これまでとは違い、より良い企画・計画を踏まえており、今後は質の高いインターネット通販事業者が増えていくものと考えられます。
それに伴い、インターネットの利点を活かした、多品種小ロット高速高回転での販売手法に合わせた物流体制強化への需要は今後ますます高まっていくものと予測されます。
さて、多品種小ロットの物流とは、一体どのようなものなのでしょう?
それは、現在インターネット上の多くの店舗で採用されている形態で、取り扱う商品アイテム数を多く、反面、各商品についての在庫数量を(商品にもよりますが)少なくすることにより、余剰在庫へのリスク軽減と取り扱い商品幅の拡大を両立させるひとつの方法です。
例えば楽天市場にて買い物をすると気が付きますが、数ある商品を取り扱う店舗でも1商品に対しての在庫数量は少数となっており、人気店舗では多数の商品が販売開始後に即売切れとなってしまう事もあります。
このため、物流現場でも日々追加・増加・減少していく多数アイテムの在庫管理は非常に複雑なものとなります。
この物流形態では通常の入出庫業務・在庫管理が非常に複雑なものとなり、それが故に起こる物流トラブル(誤入庫・誤出庫による販売後商品の欠品、仕入や在庫数の把握困難など)によって、折角の良い企画・計画が足止めされてしまうケースも少なからずあります。
しかし、実際に運営する物流業者を交えた上で、考えられる限りの問題点やトラブルについての解決法やその対策を事前に打ち合わせすることにより、万が一の場合でも早急な対処が出来、問題の拡大を防ぐことも可能となります。
推定以上のアイテム数や誤認しやすい商品・商品番号、頻繁なアイテム稼動のために物流現場は混乱し、通常起こり得ないほど多数の在庫差異を発生させてしまいます。
またこの在庫差異も、復旧に数ヶ月の期間を要し、実際の実数把握が非常に困難な状況となります。
「在庫されている商品の数量を把握するだけ」という極めて単純なことが、何故これほどまでに困難となるのか、それを理解するのに私もかなりの期間を費やしました。
掛け算も割り算もなく、足し引き勘定のみが何故ここまで困難を要するのか・・・事柄の根底まで掘り進める必要がありました。
では、難易度の高い通販物流を円滑かつ正確に運営するためにはどのような点に気を配れば良いのでしょうか?
倉庫現場での入出荷作業とは、
(1)商品入庫検品
(2)棚入れ
(3)ピッキング・梱包
(4)発送
・・・といたって単純ですが、取り扱う商品アイテム数が数百種、数千種となると、わずかなミスや確認の怠りが誤入荷、誤出荷の原因となります。
ましてや商品の入荷・出荷が日々スピーディに行なわれている中では、その発見も事後となってしまいがちです。
期末の棚卸にて在庫差異が発覚し、その原因が入庫時のものか出庫時のものか、追及を行なっても突き止められないこともしばしばです。
こうした誤入荷、誤出荷の原因を挙げてみましょう。
まずは商品や商品番号の誤認です。類似商品や類似商品番号による商品特定の間違い、特に入庫時に商品を誤認してしまうと販売数や商品仕入数量に狂いが生じてしまいます。
このため、このような物流を主として取り扱う倉庫会社では入庫規則は極めて厳重なものとなっています。
誤認を減らすため、現場によってはバーコードやJANコード、最近ではICチップを使用した管理手法も採用されています。
しかし、多品種小ロットの業務下では特定のメーカーから商品を仕入れることは稀で、バーコードやJANコードすら付記されていない商品も多く含まれます。
時には、販売上の商品番号すら無く商品の外見のみで判断しなければならない場合もあり、その際の現場オペレーションは必然的にその現場専属スタッフのみが行える職人芸となってしまいます。
この場合、新たな作業増員が導入されると飛躍して誤認率は高まります。
誤入荷、誤出荷が発生する原因として次に挙げられるのが、入力・記録の漏れやミスです。
BtoCの販売を行なう場合、在庫確保の遅れや顧客クレームなどに対するイレギュラー応対が必要となります。現場にて先入れ先出し、出荷保留が頻繁に行われるようになると、入力・記録の漏れや重複が起こりやすくなります。
この場合、実際の入出庫数には差異は生じませんが、在庫管理システムなどの机上在庫数には過不足が発生し、混乱を招く原因となりかねません。さらに突き詰めて考えてみますと、各仕入先から商品を送った時点で、商品番号の記載間違いも考えられます。
上記にて、商品誤認を起こさないために商品番号のみで管理する手法をとりますと、商品番号そのものに誤りがあり、なおかつその商品が似通っていた場合には避けようのない商品誤認へと繋がります。
また、この商品がお客様の元へ届き、商品タグをはずした上で「商品が違う」との理由で返品となれば、現場でも誤出荷と判断せざるを得なくなります。
この場合、机上も実数量も在庫差異が発生し、その追求もできないため、入庫検品ミスと捕らえるしかなくなります。このようなケースは確かに稀ではありますが、仕入先での商品誤認や誤りが起こり得ることも事実です。
間違いのないタイピングを心がけても、誤字脱字が生じてしまうように人間が行なうことが100%完璧であるということはありません。ましてや現行、価格競争が重要な位置づけにある物流現場では必要作業費用を少しでも削減する為にパート・アルバイトの比率が非常に高くなっております。
故に、その現場管理者が的確な業務フローを構築できなければ、物流の品質は低下せざるを得なくなります。人的要因によるミスは物流を問わず全てにおいて考えられますが、多品種小ロット条件下での通販物流ではこうしたミスが頻繁に起こり得る要素を秘めております。
誤入荷・誤出荷は販売後の商品欠品につながり、その商品を購入したエンドユーザーへの納期遅延やキャンセル原因となります。
また、ここでのトラブルに対する対処が遅れると、その店舗自体の信頼度に深刻な亀裂を生じさせる原因となりかねません。
インターネット通販にて多品種小ロットの販売体系が今後増加していく事と予想されます。しかし、100%がありえない物流業界では、問題が起こることを前提にその対策を練らなければなりません。
販売企画・計画打ち合わせはもちろんの事、物流業務に対する打ち合わせも十分過ぎるほどに行う必要があると考えております。
エンドユーザーへの信用確保をはじめ、店舗自体の円滑化を図るためには物流業務は軽視できない事柄として慎重に受け止め、その解決・対策を行なうべきではないでしょうか。
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第1回 「物流現場での作業効率UPポイント」〜バーコード検品システム導入、5つの注意点〜
第2回 「インターネットビジネスのツボ」〜インターネット通販における物流事情とトラブル対策〜
第3回 「物流コスト低減の小さなヒント」 〜配送業者の絞込みこそコスト削減のカギ〜
第4回 「物流を磨けば企業が輝く!」〜物流費に、騙されるな!
第5回 「物流を磨けば企業が輝く!」〜通販物流クレームの正しい対処法〜 |