■物流コスト削減!
このテーマは永遠です。
これを言わなくなった時は日本が資本主義でなくなった時でしょう!
今回は『物流コスト削減』のベンチマークをどうすればいいのかについて書かせて頂きます。
『物流コスト削減』という命題を与えられたときに、まず行わなければならないのが物流コストの把握です。これまでよく活用されていた簡便法での物流コスト算出に加え、最近では物流ABCによる物流費算出と
いう方法も頻繁に使われるようになってきました。
<参考>
中小企業庁が 「物流ABC準拠による物流コスト算定・効率化マニュアル」
を公開しています。
物流コスト算出方法についてはまた別の機会にご説明するとして、なぜ物流費の計算が重要となるのでしょうか?
それは、事前に物流費を計算(把握)しておかなければ、目標値の設定も出来ませんし、どれくらい削減できたのかという結果を測ることも出来ないからです。
また、物流費が把握できた時に必ず計算するものがあります。それは物流費率です。
物流費率とは、対売上に対する物流費の割合です。
例えば、A社 では物流費が5千万円で売上が5億円、ですと物流費率は10%となります。
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<A社> |
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売上 |
:5億円 |
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物流費 |
:5千万円 |
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物流費率 |
:10% |
A社で、物流コスト削減プロジェクトをスタートしたときに、その目設定は、大抵は2通りだと思います。
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1.物流費を10%削減する(5千万円→4.5千万円) |
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2.物流比率を10%→9%にする |
両方とも、現状のままだと、物流費を500万円カットできれば、達成 できるはずです。
ここで、上記1・2での評価方法を考えて見ましょう。
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1.物流費が4500万円未満に抑えられたら、達成と見なす |
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2.物流費÷売上が9%未満であれば、達成と見なす |
これらの評価方法では、問題が発生します。発生する問題をケース別にみると、下記のようになります。
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【ケースA】売上が上がると?
1が達成しづらくなる
2が達成しやすくなる(固定費の影響があるため)
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【ケースB】売上が下がると?
1が達成しやすくなる
2が達成しづらくなる(固定費の影響があるため) |
ということが発生します。
また、2はデフレで商品単価が下がるともっと達成しづらくなります。今の時流がデフレであるために、ほとんどの企業では、2(物流費率9%)の達成は厳しいはずです。
かといって、売上金額でのコスト削減のほうが良いかというと、難易度が低い上に、達成したとしても、比率がかなり上がるという事態も発生するかもしれません。
では、「物流費を○○%削減する」「物流比率を△%にする」という目標設定では、営業状況次第で本質(難易度)が変わるとすれば、どのような目標設定が、良いのでしょうか?
単刀直入に、結論からいうと「1梱包あたりのコストをベンチマークにすること」を私は薦めています。
「ということは、物流ABCですね!」と思われる方がいらっしゃるでしょうが、そうではありません。
物流ABCによって各工程のコストを算出するというのも1つの方法ですが、物流ABCの本来の目的は「費用配賦(経費の割り当て)」であって、それは物量の増減によって常に変動します。
今日は忙しいと思って頑張った日と、今日は暇だと思ってゆっくりした日では、作業単価に差が出るのは、誰でもご理解いただけるでしょう。
別の機会に詳しく話しますが、コスト削減や現場改善が目的でないことは認識されたほうがいいでしょう。
結果的に経費削減に繋がったというだけで、コスト削減という目標に対して間接的に役に立つかもしれませんが、直球ではないのです。
直球は
別の方法があります。BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング「業務プロセス改善」)もそうですし人員コントロール手法もそうです。
話を戻しますが、ベンチマークにする指標は、物流ABCのような手間のかかるものにすると、毎回算出に手間と時間が掛かるので、いつでも振り返られる指標とするには無理があります。
指標に適した数値の条件をこのように考えています。
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1.毎日でも計算できるくらい簡単(短時間で誰でも)である |
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2.物流以外の部門の影響が大きすぎない |
この条件をクリアするのは「1梱包あたりのコスト」くらいでしょう。
先ほどご説明させて頂いた通り、物流コスト比率や物流予算では商品単価の変動などが、物流部門の努力以上に達成度合いへの影響を及ぼしてしまいます。商品単価の増減に影響されない物流での指標の1つが「1梱包あたりのコスト」です。
計算がし易く、新任の物流現場リーダーでも出来ます。またライン毎や現場毎、拠点毎、チーム毎に計算することが出来ます。これ以上細かくしてしまうと(工程別単位コストなど)計算も複雑になってしまいます。
いかがでしょうか?
物流部門が「今年の売上目標□□円!」というスローガンを掲げるのは変だと感じるように、「物流費を○○%削減する」というのも、物流以外の影響が大きいので、変なスローガンになってしまいます。
それゆえ、意外と身近な指標「1梱包あたりのコスト」を使うことをお薦めしているという訳なのです。
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