二代目経営者の難しさは、ビジネス上の、上司・部下/先輩・後輩の関係と、親子、父対息子の関係が共存することです。
経営者としてのアイデンティティーと、息子(又は父親)としてのアイデンティティーが、時として葛藤を起こすのです。
表面的な意見の食い違いや親子げんかなどは、目に見えてわかりやすいものであり、当人も問題として認識しやすいものですが、なかなか意識に上らない、無意識におきる問題があります。
今回は、その無意識に起きる、『二代目経営者のジレンマ』を扱います。
二代目社長のこの根本的なジレンマは、潜在意識のレベルで葛藤になっています。
そのジレンマとは…
●後継者として、時代の変化に対応し、会社を伸ばし発展させるために、先代社長が築いてきたものを改革したり、時には、否定しなければいけない。
●一方で、自分は父親の「いい息子」でなければならない。父の期待に応える息子でなければいけない。従って、父親の築いてきたものに手をかけてはいけない。
こんな葛藤が、心の底で起きることが多いのです。
このような葛藤は、なかなか顕在意識に上ってきません。
しかし、必ず大きな影響があるものです。
例えば、何か新しいことをしようとした時に、良いアイディアにも関わらず、理由もなく「でも、きっとダメだな…」と思ってしまうといった、止める気持ちが湧き起こったり、習慣になっていることで、利益に結びつかないようなものを敢えて見過ごしていたり、そんな形で無意識に働いています。
そんな時に、父親の声がふと聞こえたり、父親の顔がちらりと思い浮かんだり、父親そのものでなくても、父親を象徴するようなもの、例えば、父親が育てた人間だったり、父親が懇意にしている得意先だったり…そのような象徴がふとよぎり、決断に影響することはないでしょうか?
事が無意識のレベルで起きるだけに、影響を受けていることに気づかない場合が多いのです。また、気づいたとしても、「受け継いだものを変えてはいけない」、と感じてしまう場合が多いのではないでしょうか?
このような葛藤を解消し、自分の無意識の父親像から開放される方法はいろいろあります。私のコンサルティングでは、様々な手法で、これを解決していきます。
この紙面でお伝えできる方法としては、「墓参り」または、「親孝行」です。
かなり宗教っぽい話になってしまっていますが、私は宗教家でも、道徳家でもありません(笑)。
おおまじめに言っています。
私が寝具問屋の商品企画を担当していたとき、父が育ててきたブランドを廃止した事があります。
そのブランドは、かつては大きな売上を上げていたのですが、ブランドイメージが陳腐化しており、そのときには既にお荷物になり、在庫処分が利益を圧迫していました。
私は、この件について、何ヶ月も悩んでいました。
その頃に父と私と弟たちとでゴルフをする機会がありました。父は大のゴルフ好きでしたが、私は下手くそ。しかし、そのゴルフでお互いが心から楽しみました。父の嬉しそうな顔は今でも思い出します。
不思議なことに、その後すぐに、私はブランドの廃止を決断できました。ゴルフをしながら父とこの件を話したわけではありません。私の中で何かがすっと通った感覚がありました。
私にとっては、父の大好きなゴルフに付き合うことが、当時できる最高の親孝行だったと思います。
他にもこのような体験を何度かしているうちに、親孝行は、自分の為にするのだと発見しました。親孝行とは、実は自分が親の呪縛から逃れ、自由になる為の行動であると。
あなた独自の「親孝行」は、無意識の父親の呪縛、『二代目のジレンマ』から逃れることができる有効な方法のひとつです。
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