前回は、変化と学習のレベルをもとに、「頑張って変化させるレベルのラーニング機廖◆崛瓦違う選択肢を導入する、ラーニング供廚砲弔い討話しました。
二代目、三代目への社長交代は、この【ラーニング供曚魑こす絶好のチャンスです。
なぜなら、ラーニング兇蓮企業の文化や経営理念、信念、価値観の変化によって引き起こされるものだからです。社長が交代する時ほど、企業の文化を変えるチャンスはありません。
とはいえ、社長就任でいきなり方針を変えることは、あまりお奨めできません。
というのも、「社長の空回り」現象を引き起こすからです。特に、入社から社長就任までの時間が短く、社員との関係作りができていない場合はなおさらです。
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■社長の空回り |
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私自身は、しょっちゅう「空回り」を起こしていました。責任感と情熱のあまり、新しいアイデアをどんどん社員にぶつけていく。社員は「また始まった」と、真剣には受け止めない。こんな状態です。
父の会社で、50名ほどの支店の責任者であった頃の事です。あいかわらず「空回り」に悩んでいた私は、あるセミナーで、「ビジョンを共有する」ことの重要性を学びました。早速、次の営業会議で、私の考える「会社のビジョン」を語りました。
自分としては精一杯、ワクワクするようなビジョンと、そこに至る戦略をじっくりと語りました。その結果は、悲惨なものでした。皆きょとんとして、何の反応も返ってこない、いつもの通りの「空回り」で終わりました。
そんなある日、家内が、電車の中でわが社の社員の会話を偶然に聞いていました。二人の社員は家内がそばにいる事に気がつかずに話をしています。
その内容は、「常務(当時の私)は、何も分かっていない。」
家内からそれを聞いた時には、ショックでした。会社の事はよく知っている、お客様の事も、仕入先のことも…。経営の状態も自分が一番よく知っていると思っていました。それなのに、こんな発言が出るとは…。
「分かっていないのは、お前達の方だ!(怒)」と、 自分に言い聞かせて自分を納得させていました。
10年近く経った今、この言葉を発した社員の気持ちに入ってみました。
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「常務は何も分かっていない」 |
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「常務は自分のことを分かっているようには感じられない」 |
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「常務は自分の事を見てくれていない」 |
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↓ |
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「自分は常務に認められていない」 |
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この発言は、こんな気持ちの表れだったのかもしれません。
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■スポンサーシップ |
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一方で、「空回り」を起こさずに、うまくいった事例をご紹介します。私が立ち上げた、新規事業のプロジェクトです。当時のこのプロジェクトのスタッフ達は、全く形のないところから、店舗や商品構成、運営方法を企画し、参加店を募り、実験店で自らが販売を行いながらプロジェクトを進めてきました。
平日は夜遅くまで、土曜、日曜にも仕事をしましたが、笑顔や笑い声が絶えず、全員が生き生きと仕事をしていました。私は時には現場の仕事を手伝いながら、親会社との関係の調整、銀行との関係作りなど、彼らがやりやすいようになるための環境の整備に努めました。
ある日、夜遅くまで頑張っているスタッフに、なぜここまで頑張れるのか、と聞いてみたところ、「社長が見ていてくれるから、我々を守ってきてくれたからです。」との答えでした。
多少の社交辞令はあるでしょうが、プロジェクトのスタッフ達には、『自分達は社長に認められている。』という思いがあったことは確かでしょう。
「社長の空回り」と比べて、この違いは何だったのでしょう。
それは、今になって思えば、私が彼らをどれだけ認めていたか、“彼らが会社にとってどれほど必要な人たちであるかをちゃんと伝えていたのかどうか”。その違いだったのだと思います。
これは、社員の先頭に立って、社員の模範として行動する、創業者のリーダーシップとは少し違った、二代目独自のリーダーシップです。
私はこれを、「スポンサーシップ(後見)」と呼んでいます。
創業者の「企業家精神」が陰陽の陽とするならば、この「スポンサーシップ」は、陰の部分に当たるものだと思います。陰陽のバランスを保ちながら、会社の「体」と「心」をさらに健康に育てていく人、それが二代目のつとめといえます。
スポンサーシップは、「あなたは会社にとって大切な人です。あなたが精一杯やってもできなかった事は、私が責任を取る。精一杯頑張ろう!」というメッセージでもあります。
「空回り」している時には、新しいアイデアを社員にぶつけて、「考え方を変えよう」、「行動を変えよう」と訴えています。そして、そこにあるメタメッセージ(メッセージに関するメッセージ)は、「私を認めなさい!」
とういものです。
「私を認めなさい。そうしたら私はあなたを認めよう。」
無意識に、こんな風に言ってしまっているようなものなのです。社長の「空回り」の原因はここにあるのです。つまり、社員を認める前に、自分を認めろ!とやってしまうから。
創業者のリーダーシップとは違う、二代目独自のリーダーシップである「スポンサーシップ」のポイントは、この点です。
相手に自分を認めさせる前に、まず自分が相手を認める事。
私がスポンサーシップを体感した例をひとつお話します。
大学を出て最初に就職した、キャラクター商品のメーカーでの体験です。当時、新入社員全員が配送センターで3ヶ月間の研修中でした。Tシャツにジーンズ、スニーカーという姿で、配送センター内を走り回っていました。
ある日、私は、当時配送センター長であった常務のT氏が、数名のお客様にセンター内を案内しているところにすれ違いました。私の知らない人たちです。私が軽く会釈をして通り過ぎようとすると、このT氏に呼び止められ、「これが新人の武井君です。よく頑張っているんですよ。」と、お客様に紹介してくれました。
私はあっけにとられながら、深々とお客様にお辞儀をして、その場を離れました。何が起きたのか、よく分からないままでしたが、胸の中が熱いものでいっぱいになるのを感じました。
「認めてもらっている…」
この気持ちを社員に起こさせること、まさにこれが「スポンサーシップ」です。二代目に必要なのは、こんな形のリーダーシップなのです。
※ここでいう、スポンサーシップとは、一般的使われている、「お金を出す人」の意味ではありません。人の存在そのものをサポートする「後見」を意味しています。
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スポンサーシップ = 人の「存在そのもの」をサポートする「後見」 |
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では、「相手を認める」とは、どういうことなのでしょう?NLP Universityのロバートディルツ氏による、人間の意識の階層構造モデル、ニューロロジカルレベルに照らして、スポンサーシップがどういうものなのかを見ていきましょう。
ニューロロジカルレベルは、この連載の第1回にご紹介しました。このモデルには6つの階層があります。上の階層から順に、
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1.スピリチュアル(自分を超えた意識) |
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2.自己認識 |
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3.信念・価値観 |
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4.能力 |
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5.行動 |
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6.環境 |
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このモデルのポイントは、
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1.上位のレベルの変化は必ず下位のレベルに影響し、何らかの変化を起こす。
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2.逆に下のレベルの変化は上のレベルに影響を及ぼす事もあるが、必ずしもそうなるとは
限らない。 |
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ということです。
言い方を変えると、あるレベルの意識はひとつのシステムであり、それより上のレベルのサブシステムであると同時に、それより下のレベルをサブシステムとして抱合しコントロールしている、という関係になっています。
次に、視点を変えて「それぞれのレベルをサポートする人」という観点から見ると、次のようなります。下の階層から順に、
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●環境をサポートする人:世話役、保証人、道案内、など。 |
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●行動をサポートする人:インストラクター、スポーツコーチなど |
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●能力をサポートする人:教師、トレーナー |
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●信念価値観をサポートする人:メンター |
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●自己認識をサポートする人:「スポンサー(後見者)」 |
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●スピリチュアルをサポートする人:アウェイクナー(呼び覚ます人)、宗教家など |
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企業の組織にこれを当てはめると
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◆環境をサポートする人:同僚、先輩、庶務 |
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◆行動をサポートする人:係長 |
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◆能力をサポートする人:課長 |
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◆信念価値観をサポートする人:部長、取締役 |
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であり、
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◆自己認識をサポートする人:社長 |
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であると考えています。時として、お客様がスピリチュアルをサポートする役割を務めることもあります。
「スポンサーシップ(後見)」とは、社員の一人一人が、自分は会社にとって重要な存在であり、 重要な役割を持っており、会社に受け入れられている、という実感をもてるようにする事です。
二代目社長は、社員に対して「自分を受け入れろ」と言う前に、その人の能力や実績の良し悪しにかかわらず、まず社員を会社の大切な一員として承認し、受け入れる事が大切です。
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■スポンサーシップの具体例 |
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では具体的に、何をしたら良いのでしょうか?以下に例をあげます。これらは、あくまでもヒントなので、あなたの会社にあったやり方を見つけてみてください。
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1)大学を出て就職した会社では、毎年誕生日になると社長からバースデーカード
(社長の一言付き)が送られてきた。社員を大切にする会社だと感じる事ができた。
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2)仲間と徹夜で開店準備をしている時に、上司である部長から差し入れが届いた。我々を気に掛けてくれていることが嬉しかった。
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3)結婚式に来ていただいた恩師に10年ぶりに会った時に、家内の名前を覚えていてくれて感激した。
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4)社長時代、特に用事がないときにも支店の責任者に電話し、何か問題はないか?と聞く事を何回か続けた時に、支店の成績が良くなった。
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5)社長から結婚記念日に紅白のワインを贈られた。
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6)朝の忙しい出社時にも拘わらず、出会った上司が自分の名前を呼んで、ねぎらいの言葉も添えられ、「おはよう!」と挨拶されたこと。
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7)私が主催した勉強会、「市場創造研究会」に、当時ダイエー、ジャスコと並ぶ大手量販店チェーンの創業者(会長)が激励に来てくれた。「君達を見ていると、自分の若いころを
見ているようだ」との言葉に全員が感動。
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8)ベンチャー企業を手伝っている時のクリスマスパーティーでの、出資者の一人の挨拶。「皆さんがスタッフとしていてくれるからこの事業は成功する!」の言葉に全員が感激。
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9)「市場創造研究会」では、参加者全員がニックネームで呼ばれた。いずれもその人らしさ
を表現したニックネームであり、それを呼び合うことで、お互いの尊厳を大切にし、それぞれが自分がグループに貢献できるという意識が生まれた。
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などなど…日常の仕事場で、たくさんの可能性があります。
ポイントは、具体的な言葉や行動で表していくことにあります。
長いスパンで利益を上げ続ける会社、信頼され続ける会社、そして、ラーニング兇魑こし続ける会社には、強力なスポンサーシップ(後見)が必要です。
ロジカルレベルの「信念・価値観」を変えていくためには、「自己認識」のレベルをしっかりと支えている必要があるのです。それは、「あなたの信念、能力、行動がどうであれ、あなたはわが社の大切なメンバーです。」というメッセージを伝えることです。
それは社長だからこそできる仕事であり、社長でなければできない仕事ともいえます。
「あなたはわが社にとって大切な人である」
このメッセージが伝わっているからこそ、信念、価値観の変更、ラーニング兇可能になるのです。 |
■バックナンバー
第1回 「社長は社員の鏡」
第2回 「二代目のジレンマ」
第3回 「親の七光りは利用しろ」
第4回 「なぜわからない人にはわからないのか?」
第5回 「後継者の成功の鍵“スポンサーシップ”」 |