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連載コラム
連載コラム『会社を強くする組織の条件〜事例に学ぶ、意識改革、生産性倍増への道〜』平石 奎太/平石経営研究所
シリーズ:会社を強くする組織の条件 会社を強くする組織の条件

第1回 『全員参加〜“自分だけやっても意味がない”と思って誰もやらない』


会社はトップで変わる



「管理職に危機意識がない」とか「管理職を教育してほしい」 といって社長から相談がくる。

然し、社員は社長が思っているほど馬鹿じゃない。
いざ会社を訪問してみると意外な事実を発見する。

管理職も、一般社員も、会社の行方に大変な危機感を持っている。
このままではいけないと誰もが思っている。

然し、 「どうやったらよいのか会社の方針が分からない」 「やることは見えているけど“自分だけやっても意味がない”」と思って何もしないでいるのである。
 






・私には家族があるし子供も未だ若い。だけどこの会社に定年まで居られるのか不安である  
・こんなに不良ばかり出していては会社が利益が出ないのも当然
・こんなに暇でよいのだろうか、今の2倍仕事があってもこなせますよ


埋もれた社員のパワーに火をつける

 


このように、社長の思惑に反して、社員は会社の現状を憂慮し十分危機感を持っている。
要はこのように埋もれた社員のパワーにどうやって火をつけるかなのである。

私はコンサルテイングの始めに、幹部クラスに(請われて殆んど全社員になることもある)インタビューをして「この会社を良くするために何が問題か、どうすればよいか」を聴くことにしている。

そして、それによってその会社の現状と問題点をおおよそ理解することができる。

暇だといって真に喜んでいる社員はいないものである。寧ろ叱り飛ばされながら忙しく働いた時を懐かしんでさえいる。人はそういうものである。

必死に働き、そのことを通じて会社に貢献し、更には自己を高めることをこそ望んである。

社員が動かないのは、社長や幹部が動かしていないからに過ぎない。
社員や部下に必死に働く環境と条件を提供していないだけである。

それが、社長には管理職や社員の危機感の不足とか能力不足と映っている。
一体何がかけているのだろうか。

組織はトップで変わる。
組織の現状はトップの行動や価値観の鏡だと思って間違いない。

日本の国家でさえ総理大臣一人で変わることを思うべきである。


1.明確なビジョン・目標を示す
 


社長はまず第一に、社員にたいして

 




・将来のビジョンや目標、そして
・行動基準、を明確に示すことが必要である。

 

それが社員の心を一つにし、社員が自分で考え、自主・自発的に、行動するための価値尺度になるからである。

会社は、

 




・全社員が、
・共通の目標に向かって、
・自ら考え、
・一体となって、
・自主的に行動する時、

 

強い力を発揮する。
会社に活気がなくなるときは、多くの場合、この目標が示されていないか曖昧な場合が多い。

はたして貴方の会社ではどうだろうか。社員の一人ひとりに方針・目標がはっきり示されているだろうか。そして理解されているだろうか。

それがはっきりしないまま日日の仕事に追われ、或いは漫然と日常業務をこなしているに過ぎないようなことはないだろうか。

それでは、太平洋の真ん中でどこの港に向かうのかもはっきりしないまま、船員の努力も空しく唯漂流しているようなものである。

会社は何をやろうとしているのか、どこの港を目指しているのか、そのビジョンと目標を、社員に明確に示す必要がある。

 




・目標が人を動かし
・目標が力を引き出し  
・目標が力を束ねるのである。


2.部門毎の目標と全社員の役割を決める
 


次に重要なことは、他の部門も、隣の人も、全員がそれぞれの役割を持って努力する体制をつくることである。

前述のように、全社員が共通の目標に向かって、一人の落伍者もなく、一体となって努力してこそ、目標を達成することができ、大きな夢も実現する。

そのためには、
 




・会社の目標が部門毎に細分化され、
・部門目標達成のため一人ひとりの役割を具体的に決める必要がある。

 

それが明らかになって初めて社員はそれぞれ自分の役割を果たせば会社全体の目標が達成できることを自覚することが出来る。

そして社員は生き甲斐を持って努力するようになる。
社員は

 






・会社の一員として会社のために貢献したい、
・そのことを通じて自分を高めたい


 

と思っていることを信じたいものである。


3.モラールを高める
 
リーダーは
 




・目標達成への道筋を示し、
・自ら先頭に立って
・その達成のために努力することを情熱的に語り掛けなければならない。

 

そして、

 



・目標達成のためには決して妥協しない厳しい姿勢を貫くことである。

 

目標の達成は決して生易しいものではないはずである。

そしてそれは計画通りには進まず、多くの障害に遭遇する。
その障害を乗り越えて努力を続けてこそ目標は達成される。

だからこそ、リーダーは目標達成のためには決して妥協しない強い姿勢を社員に示さなければならない。その姿勢があればこそ社員はリーダーに付いていくものである。

 
こんな質問をされたことがある。
「社員の自主性を尊重しなければならないが、厳しすぎると押し付けにならないか」

冗談ではない。

目標達成のため陣頭に立つことをおいてどこにリーダーの役割があるのだろうか。
目標達成という一点だけは決して部下に妥協してはならない。

個性と自主性を尊重するという美名の下に、このことを勘違いしているリーダーが多いのではないだろうか。

間違ってはならないのは、

・方法は部下に任せる


ということである。

目標達成のための方法は色々ある。決して一つではないし、人によっても違う。
然もその方法を検討するための情報を一番持っているのは担当者である。

方法にこそ部下は自ら考え、自分なりの創意工夫を生かすことができるのものである。
よくある間違いは、リーダーが自分なりの方法を押し付けることにある。


  ■バックナンバー

第1回 「全員参加〜“自分だけやっても意味がない”と思って誰もやらない」
第2回 「組織横断チーム自部門だけで解決するものは何もないのに部門間で責任のなすりあい」
第3回 「P.D.C.A.を回す―“立派な計画は立てるが達成したことがない”のはなぜか」
第4回 「10%の直行不能率が僅か5ヶ月で0.33%に―カギは二つ。目標設定とアクションプラン」
第5回 「“ルールはある、守らないのは確認不足と教育不足”では問題は解決しない」
第6回 「熟練と経験だけと言っていた社員が見違えるように改革・改善を始めた―PSIP4年を目前に」
■平石 奎太/平石経営研究所 所長
平石 奎太/平石経営研究所 所長
「トヨタ的企業文化を創り、営業利益率5%以上達成を支援」
1934年生まれ。東京大学法学部卒業後、三洋電機に入社。人事・教育訓練に従事。経営者教育、幹部教育などを企画。冷蔵庫企画部長・冷蔵庫国内営業統括部長歴任。その間、商品企画に力を注ぎ、2ドアー、3ドアー、ミニ2ドアーなど日本の冷蔵庫史をリードする数々のヒット商品を生み出す。冷蔵庫事業部・事業部長就任。2年余りで全員参加による経営体質の大改革を実現し、50億円の利益改善を達成する。続けて三洋スカイリゾート社長を歴任し、95年、三洋電機退社。2000年、平石経営研究所を設立。所長就任。





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