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連載コラム
連載コラム『会社を強くする組織の条件〜事例に学ぶ、意識改革、生産性倍増への道〜』平石 奎太/平石経営研究所
シリーズ:会社を強くする組織の条件 会社を強くする組織の条件



第3回 『P.D.C.A.を回す
  ―「立派な計画は立てるが達成したことがない」のはなぜか』


コンサルテイングの依頼を受ける時によく聞くのが、

・立派な計画は立てるが、計画を達成したことがないので、一度達成感を味あわせたい

ということである。おそらく程度の差こそあれ、同じような会社や組織はかなり多いのではないだろうか。
このことはどこにでもあるような話だが、会社を強くする上で極めて基本的且つ重要な意味を持っている。

機ァ峽弉茲魍亮造房孫圓垢覯饉辧廚強い会社
 
“「強い」会社は、どこが違うか”(ローレンス・ホートン著)と言う本が出ているが、その序文の一説を紹介する。

これはある研究グループが、大企業160社について各企業の10年間の業績を分析し、一部の企業が常に、競合他社よりもよい成績を上げているのはなぜか?について調べた結果である。

勝者、敗者、を分けるのは、組織に適した完璧な戦略を見つけられたか否かではないのだ。
企業の業績を左右するのは、

・あらゆるレベルで、
・全従業員に、
・計画を確実に実行させるという、
・マネジメントにおける最も基本的なことができているかどうか

ということだったのである。
(『「強い」会社はどこが違うか』序文より)

供シ弉茲呂覆蔀成できないか―PDCAがまわらない―

 
“計画を確実に実行させる”ということは、とりもなおさず、「PDCAを継続してまわす」ことに他ならない。

PDCAをまわそうと努力している組織や会社は数多くあると思う。
なのに多くの場合PDCAが廻らないのはなぜだろうか。

 

1.「C(評価)」を計画する

 


PDCAが回らない理由の一つは、計画を立てて実行に移したものの、当初の計画がどの程度実現できたのか

・実績の「評価」がなされていない

ことにある。

評価がなされないまま半端な状態で放置されていることが多いのだろうと思う。
或いは計画の50%でも達成できればよしとする考えが、根底にあるのではないだろうか。

その証拠に、多くの場合計画が達成されないことがそれほど大きな問題にならない。
特に日本文化はアナログ文化なのでこの「評価」が曖昧で苦手であるように思う。

PDCAのサイクルを確実に回すためには、

・計画の段階で活動の結果の「達成度」を評価する評価の仕方が計画されていなければならない。

つまり

・なにを、
・何時までに、
・どの程度達成しようとするのか

が、明確になっていることが必要である。


  2.アクションプランをつくる
 
目標達成のためには、達成のために有効な具体的対策とメンバーの行動計画・アクションプランが必要である。計画が達成できないもう一つの理由が、このアクションプランがないことである。

  (1)目標を明確にする―数値にあらざれば目標にあらず―

達成度を評価測定するためには、目標は数値でなければいけない。数値でなければ、現状を測定することも出来ないし、達成できたのか、どの程度達成できたのかを測定することもできないからである。

例えば

・不良率大幅削減
・納期遅延をなくそう
・一層のコストダウン

などは単なるスローガンであって目標にはならない。
前述の、だれが、何時までに、なにを、どの程度改善しようとするのかが不明確である。

従って、

・工程不良率:初期値:10%(今年3月)目標値:2%以下(次年3月) のように、明確に数値で設定することが必要である。


  (2)目標は大きく挑戦的(チャレンジング)であること

目標は少々努力しなければ達成できない大きな目標がよい。
「5%改善」とか「10%改善」といった程度の目標をよく見かけるが、大きな目標を設定してこそ

・問題がよく見える
・人の力を120%引き出すことが出来る
・達成感を味あうことが出来る

ものである。

例えば、

・不良率は1/5(前述)
・納期遅延は「ゼロ」
・コストダウンは30%以上

など、大きな目標を設定するのがよい。
そして大きな目標を達成した時、

・社員は大きく成長し自信を深めている
・満足感

も極めて大きい。


  (3)対策を策定する―「バイタル・フュー」を探せ―

対策の策定に当たっては、事実を集め、事実を整理して、事実に基づいて現状をよく分析しなければならない。 何が問題か、何が原因か、真因はなにかを徹底して分析する。

そして真因に対して手を打つ。真因に手を打てばそれが再発防止策になる。
そしてその積み重ねが企業の独自のノウハウになり、企業の体質の強化につながる。

ここで最も重要なことが「バイタル・フューを探せ」である。

・20%の原因が80%の現象を引き起こしている

という法則である。
つまりこの20%の原因をうまく探せば、効率よく問題を解決することが出来る。


  (4)全員の役割を決める―1人の落伍者も出すな―

第一回で記したように、会社を強くするには「全員参加」が欠かせない。
目標達成のために、一人の落伍者もないように全員に役割を与えることが必要である。

目標がはっきりして、全員に具体的な役割が与えられ、全員が共通の目標に向かって努力する体制が出来ると会社は必ず強くなる。

そして何よりも

・社員一人ひとりが、
・自ら考え自ら行動する

習慣が醸成される。その中から人が育ち、よい企業文化が育成される。


 

(5)実績の評価をビジュアルに

アクションプランは1枚にまとめて、実績が一目で理解できるように、

・グラフ、図形、色

などを使ってビジュアル化するのがよい。

毎月実績を記入して、未達であれば検討を加えて対策を追加する。
そしてそれを職場の壁に掲示する。

そうして初めて、メンバー全員がアクションプランを認識し、共通の理解の下に目標達成に向かって努力することになる。



  ■バックナンバー

第1回 「全員参加〜“自分だけやっても意味がない”と思って誰もやらない」
第2回 「組織横断チーム自部門だけで解決するものは何もないのに部門間で責任のなすりあい」
第3回 「P.D.C.A.を回す―“立派な計画は立てるが達成したことがない”のはなぜか」
第4回 「10%の直行不能率が僅か5ヶ月で0.33%に―カギは二つ。目標設定とアクションプラン」
第5回 「“ルールはある、守らないのは確認不足と教育不足”では問題は解決しない」
第6回 「熟練と経験だけと言っていた社員が見違えるように改革・改善を始めた―PSIP4年を目前に」
■平石 奎太/平石経営研究所 所長
平石 奎太/平石経営研究所 所長
「トヨタ的企業文化を創り、営業利益率5%以上達成を支援」
1934年生まれ。東京大学法学部卒業後、三洋電機に入社。人事・教育訓練に従事。経営者教育、幹部教育などを企画。冷蔵庫企画部長・冷蔵庫国内営業統括部長歴任。その間、商品企画に力を注ぎ、2ドアー、3ドアー、ミニ2ドアーなど日本の冷蔵庫史をリードする数々のヒット商品を生み出す。冷蔵庫事業部・事業部長就任。2年余りで全員参加による経営体質の大改革を実現し、50億円の利益改善を達成する。続けて三洋スカイリゾート社長を歴任し、95年、三洋電機退社。2000年、平石経営研究所を設立。所長就任。





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