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連載コラム
連載コラム『会社を強くする組織の条件〜事例に学ぶ、意識改革、生産性倍増への道〜』平石 奎太/平石経営研究所
シリーズ:会社を強くする組織の条件 会社を強くする組織の条件
 
第6回
『「熟練と経験だけ」 と言っていた社員が見違えるように改革・改善を始めた
  ―PSIP4年を目前にして(顧問会社社内報寄稿文より抜粋)』(事例3)


■“新しい企業文化”の創造を目指して
 
平成16年10月25日に初めて会社を訪ねて以来、あと少しで4年になります。速いものです。
そこで、これまでの4年間を簡単に振り返り今後への糧にして頂ければと思います。

もとよりPSIP(Practical&Strategic Innovation Program 実践的・戦略的経営革新プログラム)は、改善の基礎になる「4S」や「組織の活性化」を定着させ、Q(品質)、C(コスト・生産性)、D(在庫削減・工期短縮)を改善して競争力を高め、ひいては収益性を強化することを目的にしています。

しかし、皆さんに決して忘れないで頂きたいのは、いまひとつの目的、すなわち会社がが存続し続けるために必要な、更に本質的なものを追求していることです。

それは、“全員参加で、継続して改善する、企業文化を創る”ことです。

私はこれこそが“企業の究極の競争力”であり、“企業発展の原動力”であると考えています。

今会社では、日日多忙な中にあって、今日よりは明日、明日よりは明後日と、一つでも改善をして進歩を遂げようと、今日も誰かが活動しておられるはずです。

それは、会社の中に前述の企業文化が芽生えつつあることを物語っているのではないでしょうか。

まだまだ時間を要するとは思いますが、その芽生えが、皆さんと会社の更なる発展のために大きく結実することを心より願っています。

■改革・改善の数々
 
本社が平成17年7月から、第2工場が半年遅れの平成18年1月からPSIPの活動が始まりました。
爾来、皆さんは全社一体となって、きわめて熱心且つ素直に取組まれました。

その成果は皆さんご承知の通りで、数え上げれば限がありませんが、紙面の都合で、その中から特に活動の流れを変える節目になった改善や、或いはリード役を果たした改善など数例をご紹介したいと思います。

先ず第一に、活動開始後まもなく、目標を設定して全員で挑戦すれば、想像もできなかったほどの大きな成果を上げられることを実証した事例がありました。本社製造部門の「生産性向上」の活動でした。

7月1日に「生産性向上10%以上」の目標を設定して活動を開始しましたが、4ヶ月目の10月に、実に「月産60%増」の記録を達成しました。これは、製造部門の人たちを始め多くの人に「やれば出来る」との意識改革をもたらす大きな役割を果たしたのではなかったかと思っています。

次に、本社包装部門の「4S」活動をあげたいと思います。

ここでは未だ「4S」活動の初期の段階で、従来のイメージをがらりと変える、思い切った職場レイアウトの改善が行われました。あれほどの抜本的な改善を一気に行うことは中々出来ないものですが、旧いものを捨て去り改革・改善に徹したからこそ出来たものと、敬服したものでした。

これを機会に包装部門の改善が更に進み、しばらく本社部門の「4S」活動のモデル職場として存在感を示しました。  第3に半年遅れてスタートした第2工場でも、素晴らしい改善が次々と行われました。

 



  
イ、製造グループのパーツ・フィーダーの改善による生産性向上

これは、パーツ・フィーダーの稼働率が50%と低い点に着眼し、しかも数々の障害を克服して、稼働率100%と圧倒的な生産性の向上を達成したものです。このことが全社の生産部門を中心に、機械設備の改造によって生産性を上げることの理解を広め、その後の活動をリードした意義は大きかったと理解しています。

 


  

ロ、第2工場の特長を生かした半製品在庫蔵置のノウハウを開発

これは会社に劇的な変化をもたらす可能性を秘めた改善だと、今後の活動に期待しています。その他、資材インフレによって原材料の値上げが相次ぐ中で進められている、コストダウンの活動にも、目を見張らせるものがあります。


最後にご紹介したいのは、営業部門の改革です。かねがね部長が指示してこられた、販売担当者の「一人一月7件以上訪問」は顧客カルテの作成整備などにより、活動開始と同時に一気に達成されました。

その甲斐もあってその後の受注増につながっていることは皆さんご承知の通りです。今後は更に訪問活動の質を上げるべく努力がなされようとしています。

又、営業と製造部門その他関係部門との連携も、それぞれの部門の努力によって徐々に改善されているのではないでしょうか。

■更なる改革、今後への期待
 

製造部門を中心に進められている工具管理の改善活動は、会社の現状を一新するほどの革新的な貢献をするものと期待しています。

機械工場による生産性向上や生産技術の開発面での貢献は、会社にとって機械が生命であるだけに、計り知れないものがあります。今後会社独自の生産技術の開発につながれば、会社の基盤を強化し競争力を高める大きな力になるに違いありません。

技術部を中心に進められている商品開発も、根気の要る仕事ですが会社の存続を左右するきわめて重要な仕事です。同じ商品を造っているだけではいつか世の中から取り残されてしまいます。

このように会社のあらゆる部門で活動が活発に展開されていて、その一つ一つが必ずや会社の発展に大いに貢献するものと確信しています。


■仕事を通じて自分を高める

 

人は仕事を通じて成長します。仕事は必ずしも当初の思惑通りには行きません。
目標を達成するには幾多の障害を克服しなければなりません。

その障害を乗り越えて目標を達成することによって、人は大きく成長します。そして今、私はその努力を通じて一段と成長された皆さんを目の前にして、そのことを何よりも嬉しく思っています。

今後とも、社長を中心に、3カ年計画達成のために皆さんが一体となって努力を重ねられることを心より願っています。


  ■バックナンバー

第1回 「全員参加〜“自分だけやっても意味がない”と思って誰もやらない」
第2回 「組織横断チーム自部門だけで解決するものは何もないのに部門間で責任のなすりあい」
第3回 「P.D.C.A.を回す―“立派な計画は立てるが達成したことがない”のはなぜか」
第4回 「10%の直行不能率が僅か5ヶ月で0.33%に―カギは二つ。目標設定とアクションプラン」
第5回 「“ルールはある、守らないのは確認不足と教育不足”では問題は解決しない」
第6回 「熟練と経験だけと言っていた社員が見違えるように改革・改善を始めた―PSIP4年を目前に」
■平石 奎太/平石経営研究所 所長
平石 奎太/平石経営研究所 所長
「トヨタ的企業文化を創り、営業利益率5%以上達成を支援」
1934年生まれ。東京大学法学部卒業後、三洋電機に入社。人事・教育訓練に従事。経営者教育、幹部教育などを企画。冷蔵庫企画部長・冷蔵庫国内営業統括部長歴任。その間、商品企画に力を注ぎ、2ドアー、3ドアー、ミニ2ドアーなど日本の冷蔵庫史をリードする数々のヒット商品を生み出す。冷蔵庫事業部・事業部長就任。2年余りで全員参加による経営体質の大改革を実現し、50億円の利益改善を達成する。続けて三洋スカイリゾート社長を歴任し、95年、三洋電機退社。2000年、平石経営研究所を設立。所長就任。





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