会社を強くする組織の条件 |
第2回 『組織横断チーム(Cross Functional Team) 自部門だけで解決 |
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するものは何もないのに部門間で責任のなすりあい』 |
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Cross Functional Teamの意義 (以下、C.F.T.) |
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およそ仕事というもの自分ひとりで完結するものはない。
然し会社には、
・階層の壁、
・部門間の壁があり、
組織の生産性を悪くしている。階層の壁は組織の責任者がいるのでそれほど問題にはならないが、部門間の壁は各部門がそれぞれ責任単位になっていて、部門間の協調が中々うまくいかない場合がある。
それが極端になるとセクショナリズムが発生し、部門間で争いが生じたり責任のなすりあいが生じる。
そして問題は一向に解決しない。
業績が悪くなると特にこういう事態になりがちである。この部門間の壁を除去し部門間の協力体制をつくることの意義はきわめて大きい。
それにはC.F.T.をつくるのが有効である。その一例として、日産のカルロス・ゴーン(当事)社長が、日産の改革にあたり採用して大きな成果を挙げたC.F.T.9チーム(改革当初)の一部を紹介する。
・副社長がリーダーになっている
・CFTパイロットがいる
・メンバーが関係する複数部門から構成されている
という点に注目いただきたい。
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チーム |
販売・マーケテイング |
一般管理費 |
CFTリーダー |
・グローバル販売・マーケテイング担当・副社長
・国内販売・マーケテイング担当・副社長 |
・財務担当・副社長
(最高財務責任者)
・財務担当常務
(副最高財務責任者) |
CFTパイロット |
・グローバル販売・マーケテイング部マネージャー
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・財務部主担 |
構成メンバーの所属職務 |
・販売・マーケテイング
・購買 |
・販売・マーケテイング
・製造
・財務
・人事 |
主要な検討項目 |
・広告宣伝
・流通機構
・デイーラー組織
・インセンテイブ |
・固定間接費 |
検討結果に基づいた目標 |
・単一のグローバルな広告代理店への移行
・販売費・一般管理費の20%削減
・国内販売子会社数の20%削減
・国内販売拠点数の10%削減
・県単位の事業センター又は 共通バックオフィスの設置
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・販売一般管理費の
20%削減
・国内外の総労働力を
2万1000人削減
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C.F.T.のつくりかた(参考、会社の実態に応じて) |
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(1)テーマを設定する
・テーマは多部門にまたがるものを設定する
(2)TOP直轄の組織の編成
・リーダー関係各部門に対してリーダーシップを発揮できる人物
・メンバー関係各部門から選任する
(3)目標を設定する
・大きなチャレンジ目標
・数値で表す
・達成期間を決める
(4)アクションプランを作成する
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C.F.T.の効果 |
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(1)会社の利益に直結する大きな成果が期待できる
(2)生産性の向上
・関係部門の意見やノウハウがチーム内の検討の中で注入されるので、早い結論が期待できる
・計画が進んだ段階とか、実行段階での計画のやり直し(逆流)が少なく工期が短縮される
(3)人の育成
・幹部や中間管理職の育成
―リーダーやサブリーダーは、自己の担当領域を超えて、部門間の調整を図りつつ、
より広い視野での活動が期待され、幹部としての能力が涵養される。
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C.F.T.活動例 |
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(1)品質の改善のC.F.T
品質は70%が源流(設計)で決まるといわれている。 品質問題が単なる対症療法的なクレーム処理で終わっていないだろうか。勿論当面のクレーム処理は必要だが、より重要なことは、その根本原因を究明しその対策を講じて、2度と同じ問題が生じないように対処することである。
そう考えると、品質の改善は、製造部とか購買部とか部門毎に検討していても能率が悪い。
不良の原因はいろいろあるが、 “設計で品質の70%が決まる” といわれている。
設計に基づいて、 「購買部」「製造部」さらに「外注加工先」などが関係してくる。また、 「営業部」も受注活動のあり方や情報提供など品質の問題に大いに関与している。
そして全体を統括する部門として「品質保証部」がある。 それら各部門が連携して、“根本原因”に手を打つことが必要である。そのためにはC.F.T.による活動が有効である。
次に品質改善のC.F.T.のモデルを紹介する。
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・品質保証部
・設計部
・購買部
・製造部
・営業部
・外注加工取引先
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:データの作成・整理、現状分析 その他
:設計、材料の変更・改善 その他
:購入部材の品質改善
:製造品質の改善
:受注方法、情報提供などの改善
:品質支援 |
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(2)コストダウンのC.F.T
コストダウンを単価の切り下げと理解している人が意外に多い。コストダウンに取組むためには、先ずコストの構造を理解することが必要である。
コストには
・材料費などの製造単位に比例して生じる「変動費」と
・定額で変動しない「固定費」がある。
そしてそれぞれにコストダウンの方策がある。
特に仕事量が増大している時は、
・生産性向上:人や設備を増やさずに仕事増をこなす工夫
により大きなコストダウンの効果が期待できる。正にコストダウンのビッグチャンスである。
※資料「コストダウン各部門の役割」参照
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■バックナンバー
第1回 「全員参加〜“自分だけやっても意味がない”と思って誰もやらない」
第2回 「組織横断チーム自部門だけで解決するものは何もないのに部門間で責任のなすりあい」 第3回 「P.D.C.A.を回す―“立派な計画は立てるが達成したことがない”のはなぜか」 第4回 「10%の直行不能率が僅か5ヶ月で0.33%に―カギは二つ。目標設定とアクションプラン」 第5回 「“ルールはある、守らないのは確認不足と教育不足”では問題は解決しない」
第6回 「熟練と経験だけと言っていた社員が見違えるように改革・改善を始めた―PSIP4年を目前に」 |