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連載コラム
連載コラム『ファミリービジネス成功の法則〜200年企業をめざせ〜』武井一喜/WellSpring
シリーズ:ファミリービジネス成功の法則 ファミリービジネス成功の法則

第1回 『同族企業は3代で潰れるのか?』


「売り家と唐様で書く三代目」ということわざがある。家業というものは、三代で潰れるということわざだ。

創業者は何も無いところから、情熱と努力で事業を成功させ、財産を築く。
二代目は父親の苦労する姿を見ながら育ち、財産を維持する。

三代目は財産を当たり前のものと思い、使い果たしてしまうが、教育教育レベルは高いので、洒落た唐様の文字で売り家と書く。

三代で終わるということわざは、日本だけのものではない。

 

「三代経つと手元にはシャツ一枚」(アメリカ)
 〜創業者はシャツ一枚の財産から財を為すが、三代目にはまた元に戻ってしまう。

「三代目は先祖の田んぼに戻って野良仕事」(中国)
 〜田舎から身を起こして成功しても、三代目にはまた元の田舎に戻らざるを得ない。


どうやら、三代で潰れるというのは世界中で共通のことのようだ。

学者の調査によると、創業した会社のうち、二代目まで続く会社は30%、さらに三代目まで続く会社は15%になる。近年の起業ブームでこの数字はさらに落ち込んでいるようだ。

かく言う私も家業を営む家に生まれた。私は創業者から数えると4代目になる。
3代目の父から社長を引き継いだが、その後1年で家業をたたんだ。

創業107年を迎えた年のことだった。我が家の場合も、ほぼことわざどおりとなった。

このことわざに挑戦している人たちがいる。
FFI(Family Firm Institute)というアメリカに拠点を置く組織だ。私もそのメンバーになっている。

医学の発達で人間の寿命が延びたように、3代しか続かないといわれる同族起業(ファミリービジネス)を、どうしたら繁栄力と永続性を高められるかを研究し、アドバイスする人たちの集まりである。現在、50ヶ国から1500名が参加している。

FFIには様々な分野の専門家がいる。経営学系、組織論系、心理学系の学者、弁護士、会計士、銀行、保険会社、セラピスト、経営コンサルタントなどだ。ファミリービジネスの繁栄と永続をサポートするには、これら多方面の分野の知識を結集する必要がある。

昨年のFFIの会合で、ロックフェラー一族の子弟教育を担当する弁護士ジェイムズ・ヒューズ氏の講義を聴いた。彼も、三代で潰れるということわざは正しいという。

ちょうどサイコロを何回も振っていくと、出る目の平均値は、1から6の平均3.5に限りなく近づいていく。平均値5を割ったときにファミリービジネスは潰れるとすると、創業者はその格段の才覚と努力によって6を出し、二代目は創業者ほどの力は無いが5を出して平均値は5.5になるとする。

3代目が4を出せば平均値は5となり、ぎりぎりセーフだが、人並みの3.5を出せばゲームオーバー、家業は潰れることになる。数を重ねれば平均値3.5に近づいていく、自然の法則にかなっている。

ヒューズ氏は言う。

 

「3代続くことはすばらしいことだが、ただ運が良かった、というに過ぎない。ファミリーの本当の実力はそこから先が続くかどうかだ。」

「そのためには2代目、3代目の果たすべき役割が大きい。ファミリービジネスの成功の秘訣は、どの世代も常に5以上を出すための仕組みを作ることだ。」

あるアメリカンインディアンの部族は、会議の前にこのような祈りをささげたという。

 

「今日のこの会議の結論が、200年先の子供たちから感謝されるものでありますように。」

創業者一族が主要な株を持ち、経営に参加するというファミリービジネスの形態は、日本のみならず、共産国以外の世界各国でその数も多く、50%〜70%を占める。

200年、300年と続く長寿企業はほとんどがファミリービジネスだ。

ファミリービジネスは、規模の大小も問わない。トヨタ、サントリー、キッコーマン、村田製作所などの大企業をはじめ、町の小売業、飲食業などにいたるまで、日本の企業の90%以上はファミリービジネスといわれている。

ファミリービジネスは日本でも欧米諸国でも、同業、同規模の非ファミリービジネスに比べて業績が良く、継続性が高いという調査結果が出ている。

欧米ではファミリービジネスは、尊敬を集める存在になってきている。

世界的な家庭用ワックスのメーカー、SCジョンソン社は、会社のロゴマークに「A Family Company」と表記し、ファミリービジネスであることをプライドを持って宣言している。

ファミリーと共に働くことを誇りにする時代になりつつある。

FFIをはじめ、欧米ですすむファミリービジネスの研究成果から、ファミリービジネスの繁栄と永続のための様々な処方箋が生まれてきている。

 


・ファミリーの課題をビジネスの場に持ち込む前に解決し、ファミリーのコミュニケーションを高めて夢を共有するファミリー会議

・世代交代の時期に発生する問題やストレスを減らし、効果的に承継する事業承継計画

・ファミリーとビジネスの機能を最大化する取締役会の活性化


などがその代表的なもの。

この連載では、ファミリービジネスを営む方たちの悩みを解決するポイントや、繁栄と永続のための仕組みづくりをお伝えしていきたい。


■法則その1■
普通は3代で潰れる。200年続くための仕組みを作れ。



次回は「ファミリービジネスの強さの秘密」についてお話したい。


  ■バックナンバー

第1回 「同族企業は3代で潰れるのか?」
第2回 「ファミリービジネスは強いのだ」
第3回 「“オヤジとの対決と解決法”〜オヤジと息子の意見は合わない〜」
第4回 「ファミリービジネス成功のための仕組み―その1:ファミリー会議」
第5回 「ファミリービジネス成功のための仕組み―その2:家訓を作る」
第6回 「ファミリー共有の夢」
■武井 一喜/WellSpring 代表   http://www.wellspring.co.jp/
武井 一喜/WellSpring 代表
「日本に数少ない、ファミリービジネス専門コンサルタントです」
1956年、名古屋に生まれる。慶應義塾大学経済学部卒業。コロ ンビア大学ビジネススクール経営学修士(MBA)。NLP研究所認定マスタープラクティショナー、トレーナートレーニング修了。 世界青年会議所認定トレーナー。キャラクター商品メーカーを経て、家業の寝具製造卸会社に勤務。新規事業プロジェクト「ワンズオウ ン」の立上げ4代目社長。その後IT関連の起業に参加。2003年、WellSpring設立。二世経営者の事業継承サポートを中心にコ ンサルティング、研修、講演、コーチング、執筆活動を行っている。著書:「NLPでリーダー脳力をグングン高める法!」





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