ファミリービジネス成功の法則 |
第4回 『ファミリービジネス成功のための仕組み―その1:ファミリー会議』
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ある第三世代のファミリービジネス経営者の相談だ。
二代目の父親は、健康を害したため早めに引退し、二人の息子に経営をゆだねた。
長男は社長として営業面を担当し、次男は常務として製造面を担当する。
会社の株は長男が引き継ぐ。
これが二代目の父親の意向で、兄弟も納得し、互いに協力しながら業績を上げてきた。
ところが、弟が結婚すると、兄弟の関係が微妙に変わってきた。
会社では肩書きこそ違え、弟も兄と同程度の重い責任を負っている。
「お兄様だけが株を引き継ぐのは不公平じゃないですか?」
そんな疑念が弟の奥さんからもちあがり、夫婦の間で話されるうちに弟の考えも変わってきたのだ。
この問題をそのままにしておくと、相続のときに大きな問題になったり、先の世代にわたって分家間の抗争に発展したりする。
なぜ株を1人に集約するのか、あるいは兄弟で均等に分けるのかを、ファミリーの仕事に直接かかわっていないメンバーや、株を持たないメンバーも含めて、早い段階にファミリー全体で合意しておく必要がある。
強いファミリービジネスになるための、基本的な処方は定期的な「ファミリー会議」の開催である。
FFIでも、ファミリー会議は最も重要な項目として位置づけられている。
欧米で多くのファミリービジネスが積極的に取り入れている方法である。
多くのファミリーが、家族であらたまって話し合いをすることに抵抗感があることは確かだ。自分ひとりで決めていたことを、家族の民主主義にゆだねる抵抗、仕事上の問題を家族に知らせることの抵抗など。
仕事の問題を家庭に持ち込むことは、日本人の従来の価値観にもそぐわないと考える人も多い。
しかし、ファミリービジネスにとって、先に述べたケースのように、ビジネスの問題をファミリーと切り離して考えることは、問題にふたをして大爆発を起こすまで放っておくことになったり、ファミリーの強みを活かすチャンスを損なったりすることになる。
ファミリー会議を行ってファミリーメンバーの意見を聞いたり、彼らの意見を尊重したりすることは、経営者や株主としての権利と責任を放棄することではない。
さらに、ファミリーの将来にどのようなチャンスや課題が待っているのかをメンバー全員が知っておくことは非常に重要なことなのだ。
ファミリー会議のやり方に、こうでなければいけない、というものは無い。ファミリーの規模や構成にもよる。
簡単なものは家庭の食卓を囲んでの会話という場合もあるし、大きいものでは一族全員がリゾートに集合し、2泊〜3泊のプログラムを作って1/3はファミリーの課題、1/3はビジネスの課題、1/3は遊び、といった形態まで様々だ。
夕食での家族の会話は、話す内容によっては立派なファミリー会議になる。
会社の製品やサービスについて、子供達の意見を聞いてみる、社内で問題になっていることを、奥さんや子供の意見を聞いてみる。このような会話を通して、新鮮な発想が生まれることもある。
しかし何よりの利点は、家族の仕事に対する理解と協力が高まり、子供達にとっての良い教育になることである。
ファミリー会議のメリットは、下記のとおりだ。
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(1)絆の強いファミリー
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失敗するファミリーは、「自分とあの人は何が違うか」に目が行きがちである。
「お兄さんのほうが優遇されている」、「いとこの○○はずるくて無責任すぎる」、などと言っているうちに、互いの共通点や相手の善意に目を向ける習慣を失ってしまう。
成功するファミリーは、「我々は何を共有しているか?」に意識を向けている。
共通の価値観、共通の目標、ものの見方やビジネス観を共有しようと努力する。
自然と互いの話に耳を傾け、信頼関係を強くすることになる。
自分はファミリーメンバーとして何ができるか、と考えたときには、将来に向けて、企業の戦略、資本、事業承継について学ぶ必要も出てくる。
ファミリー会議を通して、ファミリーメンバーはリーダーシップや、衝突する意見を合意に導く方法、傾聴、プレゼンテーション、マネジメントや会議の進行について学ぶ機会も増える。
このようにして養われた能力や、ファミリー全員が参加しているという責任感は、企業が困難に直面したときには、強い力として発揮される。
まさにファミリービジネスの価値を高める、強力な資源になるのだ。
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(2)強いビジネス |
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オーナーの一族が結束し、強い決意と高邁な理想を掲げると、そのメッセージは、従業員にとって心強い励みになるものだ。
会社が困難な状況にあるときも、オーナー一族の一貫したメッセージは従業員の心配を安心感に変える力がある。ファミリーの明確なビジョンは、会社の独自性を際立たせる。
ファミリーのネットワークは、人材の採用にも効果を発揮する。
ファミリーメンバーが紹介する人材は、一般の採用よりも信頼度が高い場合が多いのだ。
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(3)次世代のオーナー形態のプランニング
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次の世代に株を誰がどのように持つか、会社の戦略をどうするか、次のリーダーは誰なのか。
これらのプランは、ファミリーの意向とコミットメントの強い影響を受けるもの。
将来の計画に対しても、ファミリー会議はファミリーの一貫したメッセージを発信する場になる。
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(4)ファミリーメンバーの就業ルール
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未熟なファミリーメンバーがいきなり大きな権限があるポジションに着いたり、明らかに親族の身びいきと思われる採用があからさまに行われることは、非ファミリー従業員にとって意欲がそがれることだ。
ファミリーメンバーのうち、ビジネスに参加できるのは誰か?義理の親族はどうなのか?入社までにどのような経験が必要なのか?学歴を問うのか?
これらの条件を明確に定め、合意しておくことで若い人たちの目標になる。
また、社員にも伝えることで身びいきと受け止められることも無くなり、風通しがよくなる。
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(5)財産の管理
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ファミリー会議で相続した財産の管理について話し合うことは、次世代の教育に大きな効果がある。相続した財産を、自分の私物としてではなく、ファミリーが預ったものとして扱う価値観を養うことができる。
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(6)事業承継計画
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リーダーシップの承継については、通常は遅れがちになるものである。
ファミリー会議でこの問題を扱うことで、ファミリー全体の協力体制を作ることができ、引き継ぐ側、受け取る側。双方にとってやりやすい環境ができる。
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このように、ファミリー会議を定期的に行うことは、ファミリービジネスにとって非常に効果の大きいものである。
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■法則その4■
ファミリー会議はファミリービジネス成功への第一歩。
次回はファミリーの約束事、家訓についてお話したい。
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■バックナンバー
第1回 「同族企業は3代で潰れるのか?」
第2回 「ファミリービジネスは強いのだ」 第3回 「“オヤジとの対決と解決法”〜オヤジと息子の意見は合わない〜」 第4回 「ファミリービジネス成功のための仕組み―その1:ファミリー会議」 第5回 「ファミリービジネス成功のための仕組み―その2:家訓を作る」 第6回 「ファミリー共有の夢」 |