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連載コラム
連載コラム『実践!マーケティング戦略の着眼点』新井 一聡/アルファ・マーケティング・コーポレーション
シリーズ:実践!マーケティング戦略の着眼点 実践!マーケティング戦略の着眼点


第6回 『失敗しないマーケティング戦略〜お客様の立場で考える〜』
 

はじめに


本連載コラムもいよいよ最終回となりました。

第1回からお読みいただいた読者の中にはお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、全編を通しての共通テーマは『お客様の立場で考える』ということです。

お客様にとって自社がどう映っているのかを把握するのが「ポジショニング」であり、それが誰なのかを明確化するのが「ターゲティング」です。

「データベース・マーケティング」の活用によりお客様の実態を知り、最適な「プロモーション」を活用して顧客主導の「ブランディング」を展開していきます。

そのためのヒントは街中に溢れており、「マーケティング思考」で観察できるのです。

兎角、マーケティング戦略というと何やら難しく考えてしまいがちですが、最もシンプル且つ有効な方法はお客様の立場で考え、その不満や要望の本質を探り、それに応える方法を検討すること。

その過程においては戦略レベルも戦術レベルも混在して構いません。
ひたすら「どのようにお客様を満足させるのか」のみを追究すること。

そうして組み上げていったものが、実践的なマーケティング戦略となるのです。
では、実際の例を挙げてご紹介していきましょう。


お客様の要望は価格ですか?
 


お客様へのアンケートの結果、「価格を安くして欲しい」という声がありました。
「お客様の要望に応え価格を引き下げましょう」というのでは戦略でも戦術でもありません。

お客様の要望の本質を探り、的確な対応策を講じることが戦略です。

お客様にとって「価格」という客観的な要素と、「価値」という主観的な要素のバランスとして割高感を与えています。「価値」の構成要素は、品質、性能、安全性、使用感、利便性、ブランド力など多種多様です。

一体どこに満足し、何に不満を感じているのか。

アンケートの結果から読み取ることができれば、そこにポイントを置いて解決策を見出すことができるでしょう。そうでなければ、お客様の立場で考え、不満点を探る必要があります。

例えば対象商品がシャンプーだとします。品質は競合製品より優れているが、設定価格がやや高い。
お客様は気に入っているが、毎日使用するものなので価格を下げて欲しいという要望がある。

この場合の解決策として、割安な詰替用ボトルを発売することが考えられます。リターナブル製品であるという事実は、実際の価格差以上の割安感を創出する効果があります。

かくして、品質もブランドイメージも損なうことなく自社製品への固定化を図ることができます。

これこそ、お客様の立場で考えられた商品戦略であり、価格戦略、流通戦略そして顧客戦略にも関わる重要なマーケティング戦略となるのです。


プロモーションにおけるお客様視点

 


プロモーション戦略においてもお客様視点は極めて重要です。
例えば広告。「何を伝えるか」では無く、「お客様が何を知りたがっているのか」という発想。

極論すれば、お客様が望まない情報は発信する意味が無いのです。

お客様が欲しい情報はセレブリティが愛用しているイメージなのか、製品の詳細情報なのか、はたまたお買い得情報なのか。

お客様の立場で考えれば、自ずと適切なメディアとクリエイティブが明確になるでしょう。

セールスプロモーションも同様です。どんなに凝った仕掛けも、お客様がメリットを感じなければ何の意味もありません。

先程のシャンプーを例に考えてみましょう。詰替用ボトルの発売により商品の割高感を払拭しましたが、競合も同様に詰替用ボトルを発売し、新発売記念価格で対抗してきました。

これに対し、自社も詰替用製品を値引き販売しようというのではあまりにも無策です。

ここでの本質的課題は、双方に詰替用ボトルが出揃ったので、如何にオリジナルボトルを普及させてシェアを獲得するかということになります。

このケースでは、販促対策費などを充てて、店頭での本体値引きキャンペーン実施は有効でしょう。

その際重要なポイントは、お客様視点で、どの程度の値引きが有効かを判断すること。中途半端な展開では効果が無いばかりか、ブランドイメージを損なうだけという結果を招きかねません。

例えば、本体の実売価格が、本来割安であるはずの詰替用ボトルの価格を下回っていれば、お客様にとっての驚きとなり、お買い得感は一層高まります。

同様のケースは、実際にスーパーや薬局の店頭でよく見られます。お客様視点とマーケターとしての観察眼を兼ね備えれば、街は情報の宝庫です。


お客様は誰ですか
 


お客様視点というと、「当社はBtoBビジネスだから当てはまらない」と仰る方がいます。
果たしてそうでしょうか。

相手が一般消費者であろうと企業であろうと、自社の製品やサービスを提供する相手がお客様であることに全く相違ありません。但し、求める価値観は異なります。

一般消費者のそれが自身の満足であるのに対し、企業の場合は自社の利益です。

また、相手は当該ビジネス分野におけるプロフェッショナルですから、一般消費者が求める感覚的な要素は排除され、品質と価格が第一であり、メインテナンスを含めた継続性、安定性、信頼性といったものが重視されます。競合先との比較も、一層シビアなものとなります。

したがって、お客様視点に立って考える場合、自社製品がお客様企業にとってどのような利益をもたらすのかという観点で発想し、企画すべきなのです。

更に、企業における製品導入においては、担当者から上位権限者への提案・承認手続きを要することが一般的です。ですから、担当者の立場で考え、社内提案しやすいような工夫も必要でしょう。

当たり前のことのようですが、自社製品の優位性に終始している提案書の如何に多いことか。

このようなお客様企業の担当者レベルの視点から、どのような商品、価格、流通、プロモーション及び収益性戦略が求められているのかを考えていけばよいのです。

更に、中間流通業者との取引、所謂BtoBtoCについても触れておきましょう。

この場合、自社にとってのお客様は、直接の取引先である中間流通業者と、エンドユーザーである消費者の2つがあり、その何れもが重要なお客様となります。

順序としては、先ず、消費者の視点で考えて、満足いただける製品やサービス或いはプロモーション戦略を検討します。何故ならば、そもそも消費者の満足しない(=売れない)製品を仕入れる取引先など考えられないからです。

逆に、消費者の満足する戦略や戦術は、彼らにとっても歓迎すべきことなのです。
むしろ、消費者を無視した戦略はありえないということになります。

その上で、取引先の視点で戦略を検討します。これは、先のBtoBの考え方と同じです。


おわりに

 


さて、6回にわたる連載、いかがでしたでしょうか。

マーケティング戦略はビジネスのあらゆる分野に関わり、その成否に大きな影響を及ぼします。
そして、ビジネスの現場で実践してこそ価値のあるものです。

ご紹介して参りましたマーケティング思考法の些かなりとも、皆様のビジネス現場でお役立て戴ければ幸甚でございます。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。



 
■バックナンバー


第1回 「毎日がケーススタディ、実践、実践、また実践〜マーケティング思考を身につけよう」
第2回 「マーケティングは弓矢の如く〜ポジショニングとターゲティング」
第3回 「お客様は語る〜データベース・マーケティングの実践〜」
第4回 「広告宣伝費を4倍有効に使う方法〜基本を押さえてコスト半減、効果は倍増〜」
第5回 「ブランディングにまつわるエピソード〜顧客主導のブランディングもありです〜」
第6回 「失敗しないマーケティング戦略〜お客様の立場で考える〜」
■新井 一聡/アルファ・マーケティング・コーポレーション 代表
新井 一聡/アルファ・マーケティング・コーポレーション 代表
「必勝の新規事業計画と実効あるマーケティング戦略を提供」
1963年生まれ。東京都出身(下町生まれ、嫡々の江戸っ子)。 商社における新規事業開発を皮切りに、輸入自動車、アパレル、スポーツ用品、医療機器等、消費財及び消費者向けサービスを中心に、 20年余に亘り、主として新規事業における戦略構築をサポート。本質を見極める的確な現状分析と、実効あるマーケティング戦略構 築を得意とする。常に新しい提案により、顧客と市場に対するプラスアルファの価値創造を目指す。手掛けた新規事業案件は、通算100件を突破!





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