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売上減少傾向時の手形割引 |
前回、手形割引は割引料分利益が下がるので、なるべくなら避けたいですね、
というお話をいたしました。
しかし、キャッシュ不足の状況を補うために活用せざるを得ない場合もあります。
その場合はその後の資金管理を細心の注意を以て行わなければなりません。
特に売上が減少傾向にある場合は要注意です。
売上が上昇傾向にある場合と比較して考えていきましょう。
減少傾向にある会社さんをA社、上昇傾向にある会社さんをB社とします
両社とも売上は手形(120日サイト)で受け取り、
原価も手形(120日サイト)の手形で支払っています。
また、手もと資金が少ない中で事業を始めたため、毎月手形の割引を行って、
現金支払原資の準備をしています。割引料等は5%です。
両社の月次損益は次のとおりとなっており、減価償却費等出金を伴わない費用は
ありません。
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売上上昇時と減少時の比較 |
(A社)
4月 売上3000万円、原価2400万円、販管費300万円
5月 売上2900万円、原価2320万円、販管費300万円
6月 売上2800万円、原価2240万円、販管費300万円
7月予 売上2700万円、原価2160万円、販管費300万円
(A社4〜6月計)
売 上8700万円
原 価6960万円
粗 利1740万円
販管費 900万円
営利益 840万円
営外損 435万円
経常利 405万円
(B社)
4月 売上3000万円、原価2400万円、販管費300万円
5月 売上3100万円、原価2480万円、販管費300万円
6月 売上3200万円、原価2560万円、販管費300万円
7月予 売上3300万円、原価2640万円、販管費300万円
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売上上昇時と減少時では資金繰りに差が |
(B社4〜6月計)
売 上9600万円
原 価7680万円
粗 利1920万円
販管費 900万円
営利益1020万円
営外損 480万円
経常利 540万円
四半期を見ると両社とも黒字です。
B社の経常利益の方がA社のそれに比べ四半期で135万円多くなっていますね。
さて、4月の原価支払で振り出した手形が7月に支払期限を向えています。
そこで両社7月の入出金予定を見てみましょう。
(A社)
7月(入)手形割引2565万円(出)手形決済2400万円、販管費支払300万円
(B社)
7月(入)手形割引3135万円(出)手形決済2400万円、販管費支払300万円
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利益が出てても倒産!? |
あれっ、手形決済の金額と販管費は同じ額なのに、A社は「出」の方が135万円
多くなっていますね。比べてB社は「入」の方が435万円多い。
A社はこのままでいくと7月に資金が枯渇します。
販管費の支払の方が決済日より前にあったら、不渡りを起こします。
これは一大事です。このままでは会社が潰れてしまいます。いわゆる黒字倒産です。
至急なにがしか資金調達をしなければなりません。
翻って、B社はなにも問題なく、逆に手もと資金が435万円増加しています。
この差は何でしょう?
原価を手形で支払っているのに、売上で受けとった手形を割引するということは、
後で発生する売上で今発生した原価を賄うことを意味しますね。
ということは、
後で発生する売上が、原価が発生したときの売上よりも低いとどうなるでしょう?
当然お金が足りなくなりますね。A社さんの状況はまさにこのような状況です。
逆にB社さんは後で発生する売上の方が大きいですから、何の問題もありません。
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売上が減少傾向にあるときの手形割引はコワイ |
上記のとおり、手形割引を恒常的に行っている会社の業績が一旦下降し始めると、
途端に資金難に陥るところが手形割引のコワイところです。
でも、将来業績が下がるかどうかなんて誰もわかりませんよね。
ですので、手形割引を行っている会社さんは、最悪の最悪の売上高を想定し、
その売上で妥当な手形割引高がいくらなのか把握し、その額に合わせるよう、
コスト管理、資金管理をしていく必要があります。
手形割引は成長過程の中で資金不足が生じた場合に用いるのが本来のところ、
業績下落傾向にある企業が資金難により手形を割るのは、とりあえずの延命
処置であり、問題の根本的な解決にはなりません。
むしろ将来、倒産の可能性を高める危険性もあります。
お酒も適量なら百薬の長。
自社の適量をしっかり把握し、計画的な運用を図りましょう。
池田
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